第41話 レクイエム
「まさか、この程度で勝った気でいるのですか?」
えっ? どういうことでしょうか? 私はまだ戦えるはずです。
それなのになぜそんなことを言うのでしょうか? そんなことを考えていると、突然身体に異変が起きました。
全身が痺れて動かなくなり、声も出せなくなってしまいました。
一体どうしてしまったのでしょうか?私が戸惑っている間にもどんどん症状は悪化していき、ついには完全に動けなくなってしまいました。
そんな私を見た彼女は笑いながら言いました。
「どうやら効いてきたみたいですね」
どうやら彼女が何かをしたようですが、私には何が何だか分かりませんでした。
ですが、一つだけ分かることがありました。
それは……もう助からないということです。
なぜなら私の身体が徐々に石化していくからです。
このままでは間違いなく死んでしまうでしょう……そう思った時でした。
急に目の前が真っ暗になりました。
意識が遠のいていく中で最後に見たものは、
「愛羅、おやすみなさい」
という彼女の声と、 私を慈しむような優しい笑顔だけでした。
私は意識を失いました。
気がつくと、そこは見知らぬ部屋の中でした。
どうやらベッドに寝かされていたようです。
身体を起こして周りを見ると、そこには見覚えのある女性がいました。
そう、彼女こそ私が探していた人物であり、魔王軍の四天王の一人であるリティアさんだったのです。
彼女は私に気づくと嬉しそうに近づいてきました。
「お目覚めですか? お加減はいかがですか?」
そんな問いかけに対して答える余裕もなく黙っていると、彼女が心配そうに顔を覗き込んできたので慌てて返事をしました。
大丈夫です……と答えると安心したような表情を見せましたが、すぐに真剣な表情になって言いました。
「ところで貴女にお願いがあるのですが聞いてもらえますか?」
突然そんなことを言ってきた彼女に戸惑いながらも頷くと、彼女は続けて言います。
「ありがとうございます! 実は貴女にお願いがあるのですが、私の仲間になってくれませんか?」
それを聞いて私は驚きました。
まさか彼女からそんなことを言われるとは思ってもみなかったからです。
ですが、私には既に心に決めた人がいるのでお断りすることにしました。
彼女は悲しそうな表情を浮かべながら言いました。
「そうですか……残念ですが仕方ありませんね」
そう言って立ち去ろうとする彼女を引き止めるように声をかけます。
待ってください。
まだ話は終わっていませんよ?
私がそう言うと、彼女は驚いたような表情を見せましたがすぐに笑顔に戻りました。
そして私に問いかけてきました。
「では、どういった用件でしょうか?」
と聞かれたので正直に答えます。
私は貴方と戦うつもりはありませんし、ましてや仲間になどなる気もありません。
ただ一つだけ聞きたいことがあります。
なぜ私を助けたのですか?
その質問に対して彼女は微笑みながら答えてくれました。
「そんなの決まっているじゃないですか、貴女のことが好きだからですよ」
それを聞いて私は思わず固まってしまいました。まさかそんなことを言われるとは思ってもみなかったからです。
ですが、すぐに我に返ると慌てて否定しました。
私には既に心に決めた人がいるので無理ですと伝えると、彼女は一瞬悲しそうな顔を見せましたが、すぐに笑顔に戻りました。
そして私に問いかけてきました。
「そうですか……残念ですが仕方ありませんね」
そんなやり取りの後、私達は別れました。その後、私は魔王城を出て自分の家に戻ることにしました。
それから数日後のこと、突然私の前に現れた人物によって状況は一変します。
それはなんとリティアさんでした。
彼女は私を見つけるなり駆け寄ってきて抱きついてきました。
突然のことで驚きましたが、なんとか受け止めることができました。
一体どうしたんですか?
と聞くと彼女は笑顔で答えます。
「実は私、魔王様から命を受けて貴女を迎えに来たんですよ」
それを聞いて私は驚きました。
まさか彼女が直々に迎えに来てくれるとは思ってもみなかったからです。
でもどうして私なんかを? と聞くと彼女は笑顔で答えてくれました。
「そんなの決まっているじゃないですか、好きだからですよ」
そう言って再び抱きついてきました。突然のことに戸惑いましたが、不思議と嫌な感じはしませんでした。
むしろ嬉しかったくらいです。
だから私も彼女を抱きしめ返しながら言いました。
ありがとう……これからよろしくね、 こうして私達は仲間になりましたが、一つだけ困ったことがありました。
それは、彼女のスキンシップが激しすぎることです。
毎日隙あらば私に抱きつこうとしてくるので大変でした。
まあ、そんな彼女のことを嫌いになれない自分がいるんですけど、
日々が続いたある日のこと、突然彼女がこんなことを言い出しました。
「そういえば、愛羅って好きな人とかいないの?」
いきなりそんなことを聞かれて私は戸惑いました。
どうして急にそんなこと聞くんだろうと思いましたが、隠す必要もないので正直に答えることにしました。
すると彼女は嬉しそうに微笑んで言いました。
「そうなんだ! じゃあさ、私が立候補してもいいかな? 私なら絶対に貴女を幸せにできる自信があるから!」
その言葉に一瞬ドキッとしましたが、すぐに冷静さを取り戻して断ります。
私には心に決めた人がいるからです。
と言うと彼女は残念そうにしていましたが、諦めきれないのか食い下がってきました。
そんなやり取りを繰り返しているうちに夜になってしまいましたが、結局その日は決着がつかないまま終わってしまいました。
翌日以降も同じような日々が続きましたが、ある日を境に状況が一変します。
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