第35話 何で私だけ
彼女の言葉はとても真摯で、私達に対して真剣な想いが伝わってきたからです。
そして、私は勇気を出して彼女に協力を申し出ることにしました。
彼女も快く受け入れてくれたのですが、その代わりに私の身体を差し出すことになってしまいました。
まずは彼女達と私のみでの話し合いです。
私達は共に脱出することを目的にしている訳ですが、その方法が思い浮かばないため、
ここでアイデアを出し合おうということになりました。
そこで彼女達から色々と質問を受けることになりますが、中でも印象に残っているのは彼女からの質問でした。
それは私がここに来る前の生活について詳しく聞きたがっているようでした。
私は戸惑いつつも正直に話すことにしたのです。
そうすると彼女は驚いた表情をしていましたが、それと同時に何かを察したような表情も浮かべていました。
恐らく私が嘘をついていることを見抜いているのでしょうが、それでも深く追及することなく流してくれました。
彼女の優しさに触れた私は、さらに質問してみることにしました。
その内容は、異世界から来た人間であることを明かすかどうかについてです。
彼女はそれについて答えてくれましたが、場合によっては記憶を消さなければならないと忠告してくれました。
その方法についても詳しく教えてくれましたが、残念ながら私には理解できなかったため諦めざるを得ませんでした。
ですが、彼女の協力があればきっと脱出できるはずだという確信を持ちました。
必ず全員助け出してみせます!
その後、私達は計画を練り始めました。
まず最初に話し合ったのは、どのように脱出するかについてでした。
その際に彼女が提案してきたのが転移魔術による方法だったのです。
それは複数の人物を同時に転移させることが可能なものでしたが、その代わりに大量の魔力を消費するということでした。
さらに空間や次元の壁を越えることになるため、リスクも高く時間もかかることが予想されました。
そのため、彼女は他にも案があるかもしれないと言っていました。
しかし、今は手詰まりの状態であるため、とりあえずは彼女の提案に従うことにしました。
まず最初にやるべきこととして、仲間の救出を行うことになりましたが、
どのようにして行えば良いかについて話し合った結果、まずは彼女が知っている転移魔術の使い手に連絡を取ることにしたのです。
そこで私達は彼女達を見送ることにしました。
無事帰ってきてくれることを願いながら待つしかなかったのです。
果たして上手くいくのだろうかと不安になっていましたが、数分後に戻ってくることができました。
その様子を見る限りだと怪我をしている様子もなく安心したのですが、同時に別の意味で問題が発生していました。
というのも彼女以外の二人の姿が見えないからです。
そのことを尋ねてみると、予想外の答えが返ってきました。
なんと二人は先に帰ったというではありませんか!
思わず動揺してしまいましたが、考えてみれば当然のことかもしれません。
あの女性の様子を見る限り、彼女は悪人ではないと思うのですが、
やはり気になってしまうのは彼女の瞳に宿る狂気的な光のせいでしょうか。
そんなことを考えていると、彼女が声をかけてきました。
どうやら出発の時間が来たようです。
私達は彼女と一緒に転移魔法陣のある部屋に向かいました。
そしてそこで彼女と向き合った瞬間、強烈な睡魔に襲われて意識が遠退いてしまいました。
最後に見た光景は、笑みを浮かべて見送る彼女の顔でした。
次に目を覚ました時には、私はベッドの上で寝かされていました。
慌てて起き上がろうとすると全身に激痛が走り、再び倒れ込んでしまいます。
それでも何とか起き上がることに成功しましたが、周囲は真っ暗で何も見えませんでした。
どうやらここは洞窟のような場所であるらしく、冷たい風が吹き抜けてきます。
そんな中でただ一人取り残された私は、途方に暮れていました。
私が意識を失っている間に、いったい何が起こったのでしょうか?
やがて少しずつ目が慣れてくると、薄っすらと周囲が見えるようになってきました。
ここはどうやら洞窟の中らしく、地面には土や石ころが散乱しており、
天井から水滴が落ちてきている音が聞こえてきました。
その音を聞いた瞬間、恐怖心が芽生えてきました。
もしここが外だとしたら、雨に打たれることになりますし、外敵に襲われる可能性もあります。
そう考えると不安になってきました。
早くここから抜け出さなくてはと思いましたが、足に力が入らず歩くこともままなりませんでした。
そんな時でした。
洞窟の奥から足音が聞こえてきたのです。
私は怖くなって動けなくなってしまいました。
ただ足音の主を待つしかなかったのです。
(誰か来る……!)
そう思って身構えていると、姿を現したのはあの女性だったのです。
彼女は私を見つけるなり、嬉しそうな表情を浮かべて駆け寄ってきました。
そして、優しく私を抱き上げると、そのまま洞窟の外へと連れ出してくれたのでした。
あの女性と出会ってから数日が経過しました。
彼女の仲間である二人が先に帰り、その次の日に帰ってきたのです。
私は彼らに連れられて移動を続け、今は深い森の中にある小さな村にいます。
村の人口は少なく、とても静かで穏やかな場所です。
ただ一つだけ問題があるとすれば、それは私が男性恐怖症になってしまったということです。
あの時以来、男性が怖くて仕方がなくなりました。
以前は普通に話せていた方なのに、今では近くに寄られるだけで嫌悪感を抱いてしまうようになってしまいました。
そんな私を心配したのか、女性の方が定期的に診察をしてくれることになりましたが、それでも根本的な解決には至っていません。
そんな私を気遣ったのか、ある日のこと、彼女は私に一つの提案をしてくれました。
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