第34話 滞在
道中で魔物や魔獣に襲われることもあったのだが、私達の敵ではなかった。
私達が操る魔術と攻撃で、全て薙ぎ払ってしまったのだ。
そして遂に目的地へと辿り着くことができたのである。
そこはかなり広い洞窟になっており、まるで別の世界に来たような錯覚を覚えた。
しかし、それ以上に驚いたことがあるのだ。
何故ならそこには夥しい数の冒険者の姿があったからだ。
どうやらすでに戦闘が開始されているようだったので、急いで援護することにしたのだが、
その必要はなかったようだ。
何故なら彼らはあっさりと魔物達を討伐してしまったからだ。
さすがは凄腕の冒険者達だと感心していると、村長から声をかけられたので話を
聞くことにするととんでもないことを言い出したのだった。
「ああ、君たちが例の旅人だね?
助かったよ。君がいてくれなかったら今頃どうなっていたかわからない」
感謝の気持ちを伝えた上で、村長は私達に向かってある提案を持ちかけてきたのだった。
その内容というのは、しばらくの間ここに残って冒険者達の手伝いをして欲しいというものだった。
つまりはこの村に滞在してほしいということだ。
しかし、私たちは承諾するかどうか迷っていた。
というのも私達は早く元の時代に戻りたいという気持ちがあったからだ。
だけど、もしここで断ると二度と帰れない恐れもあったため悩み所だった。
そんな時、村長から意外な言葉が飛び出してきたのである。
それは……なんと私達への依頼らしい。
内容はこの村で起こっている事件の謎を解き明かし、囚われている者達を助けるというものらしいのだ。
それを聞いて安心した私は承諾することにしたのであったのだった。
そして白崎愛羅とアレシアの二人は、その村に留まることにしたのである。
こうして二人は、しばらくこの村で過ごすことになったのだった。
とりあえず、せっかく来たので軽く観光することにした私達は、村の人達と交流しながら過ごしていくことにするが、
いつの間にかこの村に住む人々の悩みを解決するために奔走することになってしまったのだ。
そして、そこで出会う仲間たちと共に、徐々に事件解決に向けて邁進していくのだが、
ある時から周りの様子がおかしくなり始めたのだ。
まるで誰かに操られているかのような動きをするので、警戒していたのだが、
それが間もなく私自身の身に起こるとは思ってもいなかったのである。
気がついた時には、私は妖しい部屋で、両腕を鎖で繋がれて立たされていた。
しかも服は下着まで脱がされていて、身体中に得体の知れない液体を塗りたくられていたのだった。
逃げようにも身動きが取れず、ただ立ち尽くすしかなかったその時だった。
奥のドアが開く音がして振り向くと、そこには美しい女性が立っているのが見えたのだ。
彼女はニコリと微笑みながら、ゆっくりとこちらに近づいてくると、耳元で囁いてきたのだ。
それは甘くとろけてしまいそうな声色であり、聞いているだけで頭の中まで侵食されそうだった。
しかし、彼女の言葉を聞いた瞬間、急に意識が遠のいていく感覚に陥り、そのまま意識を失ってしまった。
気がつくと私はベッドの上で寝かされていたようだ。
側にあった時計を見ると、あれから数時間が経過していたことがわかった。
あの妖しい部屋での出来事が嘘のようだったが、現実だということは疑いようがないようだ。
身体には何かが書かれているようで、胸元に手を置いた時に感触が伝わってきたのだ
。恐る恐る自分の手を見てみると、そこに書かれていた紋章を見た瞬間、
心臓が止まりそうになるほど驚いてしまったのである。
どうやら、その女性の仲間になってしまったらしいのだ。
そう確信した瞬間、再び記憶が混濁し始めて意識が落ちたのでした。
次に目を覚ました時も同じ部屋で起きた後なので、改めて自分が囚われの身だという事を自覚することになったのです。
だけど、悲観している暇はありません。
一刻も早く仲間たちのいる場所に戻らなければと思うのですが、
どうやって脱出するべきか思案しているうちに時間だけが経っていくような気がしてならなかったのです。
不安だけが募り、精神が壊れてしまいそうになる中で、私を励ましてくれる者がいたのです。
それは、共に囚われた仲間達で、みんな同じような境遇に陥っていながらも前向きに未来を模索しようとしていたのです。
やがて私と彼女達は脱出計画を立てることとなりました。
しかし、そのためには協力者が必要になりますので、まずは相手側の戦力を把握することにしました。
そうすると、私達は、相手組織の主力部隊と一戦交える直前に黒幕によって助けられたことを知り、
彼女を紹介してもらうことになりました。
そうして出会ったのが、まさに目の前に立つ女性だったのです。
一目見ただけで只者ではないことが分かるほどの存在感がありました。
しかも、彼女の瞳を見つめているだけで吸い込まれるような錯覚に陥りました。
まるで魔力にでもあてられたような心地になりました。
それくらい彼女の佇まいや振る舞いには気品が溢れ、それでいてどこか妖艶な雰囲気を纏っていたからです。
私は何とか理性を保つことを心掛けつつ彼女に問いかけたのですが、返ってきた答えはあまり良いものとは言えないものでした。
今回の誘拐事件は彼女の仕業だと白状したことでした。
しかも彼女は単なるサポート役としか思っていないらしく、
黒幕本人ですらすべてを理解しているかどうかわからないと言われていました。
私達を絶望させるような内容だったため、再び意識を失いそうになりました。
しかし、ここで諦める訳にはいきません!
彼女は本当に良い人相でしたが、目が少し魚みたいです。
何だか気味が悪いというか、言い方が悪いかもしれませんが何か邪悪な雰囲気を持っているように見えました。
それが私の気のせいなら良かったのですが、そんな希望とは裏腹に、
私に向けられた第一声は、とても辛辣な言葉でありましたが、何故か私は安堵してしまったのです。
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