第32話 野宿

「でも、いいの? そんな方法で成功したこと無かったよね?」

私がリリィに聞き直すと彼女は頷きながら答えてくれたのです。

それを聞いた私達は顔を見合せることになりますが、誰一人として反対する者はいませんでした。

むしろ全員やる気に満ち溢れていましたし、いざとなれば戦えばいいと思ったからでした。

そして、意を決した私達は手を繋ぐと同時に空に舞い上がることにしました。

すると、その瞬間、私達の身体に変化が起こったように感じたのです。

全身が白く光り輝き、翼が生えたような気がしました。

そのままゆっくりと浮上し始めるのですが、途中でバランスを崩してしまい、地面に叩きつけられそうになりました。

その時です。

いつの間にか私達の側まで近づいていたリーセちゃんが、私の手を取りこう言ってくれたのです。

その言葉に支えられるように再び飛び立つことが出来た私は嬉しさで胸が一杯になりました。

「皆さん、凄いですね! こんなに綺麗に飛べるなんて尊敬しちゃいます」

と言ってくれた彼女に、私は笑顔で応えたのです。

その後は順調に移動を続けていたのですが、途中で問題が発生しました。

なんとリリィが空腹を訴えてきたのです。

確かに言われてみればお昼ご飯を食べてから随分と経つので、お腹が減っていることに気が付きました。

しかしここで何か食べれるようなものを調達するのは非常に難しいでしょうし、だからといって引き返す訳にもいきませんでした。

なので仕方なく先に進むことにしました。

しかし、それから数時間後、ついに力尽きたのか、私たちは地べたに座り込んでしまいました。

もう一歩も動けないといった様子の彼女を見ている限りでは、

とてもではないがこれ以上歩くことは無理だと感じた私たちは野営することにしたのです。

「今日はここで野宿しましょう!」

という私の提案に反対する人は誰もおらず、すぐさま準備に取りかかると、

その日はそのまま眠りにつきました。

そして翌朝、目を覚ました私は立ち上がり、大きな伸びをしてから周囲の様子を確認すると、

隣で寝ていたはずのリーセちゃんの姿が無かったことに気が付きました。

一体どこに行ったのだろうと思って探してみたのですが、一向に見つからないまま時間だけが過ぎていくばかりでした。

心配になった私は大声で名前を呼んでみたものの返事は返ってこないままでした。

どうしたものかと思っていた時、後ろから物音が聞こえてきたので振り向いてみると、そこにはリーセちゃんが立っているではありませんか。

ホッと胸をなで下ろしたのも束の間、ふと彼女に違和感を感じました。

「リーセ、髪型変えた?」

そう言ったのです。

なんか、ちょっと見慣れない感じになっていたというか、

何と言うか、どこか様子がおかしい気がします。

そんなことを考えていると、彼女の口から驚くべき言葉が飛び出してきたのです。

「おはようございます、白崎愛羅さん」

と微笑みながら挨拶してくるのは構いませんが、

思わず固まってしまった私に対して、更に畳み掛ける様に話し掛けてきました。

そこでようやく我に返りましたが、一体どういうことなのか理解ができないまま呆然としていたところ、

突然何かの映像が流れ込んで来たかのような感覚に襲われました。

(え?)

あまりのことに混乱しつつも懸命に状況を整理する為に考えを巡らせます。

(あれ……この記憶ってもしかして、以前にどこかで見たような気がするんだけどな)

そう思いながらぼんやりとしていましたが、ハッと我に帰ると目の前にいる女性は誰なのか考えを巡らせてみることにしました。

「もしかして、リーセちゃん?」

と聞いてみたところ、案の定頷く姿がありました。

つまり、今目の前にいる女性が紛れもなく私自身であろとうということに繋がってしまったのです。

「えっと……リーセちゃんって私たちの娘なんですか?」

とおずおずと尋ねた所、あっさりと答えが返ってきました。

どうやら間違いないそうです。

しかも、既に何百年という時が経過していると聞かされてかなり驚いています。

何せ私が小さくなりつつあるのですから当たり前の事ながら周りの環境が大きく変わってしまっています。

(どうしてこんなことに)

とは思っていましたが、もしかするとあの時の選択が原因になってしまったのかもしれないのです。

あの時の決断を後悔した所でどうにもならないという事も承知していたつもりだったのですが、それでも後悔の念に押し潰されそうになる日々が続きました。

しかしいつまでもクヨクヨと悩んでいる暇はありませんでしたから、私は直ぐに行動を起こすことにしたのです。

具体的には、まずは仲間集めから始めることに決めました。

とは言え、この危険な時代に見知らぬ誰かを仲間に誘い入れるなんてことをするのは、何が起こるかわからないので恐ろしく危険だったのですが、

それでもどうにかしなければ元の世界に戻る事もできないということでしたので、腹を括るほかありませんでした。

(でも一体誰を仲間に誘えば良いのか、全然見当もつかないのだけど……)

そう思った時、ふと一人の人物の顔が目に浮かんだのです。

それはこの世界にやってきてからの親友であり、かけがえのない存在でもあるアレシアでした。

そうと決めたら私は彼女の下を訪れ、事情を説明した上で協力を求めたところ快く引き受けてくれたのです。

嬉しくてつい抱きしめてしまいましたが、幸い彼女も嫌そうな顔をしていませんでしたし許してもらえそうです。

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