第30話 見知らぬ少女

翌朝、目が覚めると隣には全裸の美少女が寝ていた。

驚きつつも恐る恐る彼女に声を掛けてみるが、まだ眠っている様子であった。

そこで少し様子を見ることにしたのだが、何故か昨夜の記憶が無いことに気がついた彼女は、

必死になって思い出そうとしたのだが思い出せないでいたのだった。

途方に暮れている彼女だったが、ふとあることを思いついて布団を捲ったところ、何と、何も着けていないのである。

そのことを認識した直後、彼女の顔が真っ赤に染まって行ったのだ。

(これってもしかしなくてもヤバイ状況なんじゃ)

そう思った次の瞬間には大急ぎで部屋を飛び出した。

幸いにもというか何と言うか彼女の胸はあまり大きくはなかったのだが、それでも目のやり場に困ってしまうほど恥ずかしかったのだ。

誰かに相談するしかないと思ったが生憎時間がなかったこともあり、そのまま急いで支度を終えて部屋を出たのだが、扉を開けるとその先には何も無かったのである。

「な、なにこれ?」

呆然と立ち尽くす白崎愛羅だったが、背後から何者かに肩を摑まれた瞬間、彼女は気絶してしまったのだった。

そして、再び目を開けた時には自分の部屋にいたが、なぜか服装は昨夜のままの姿だったのである。

一体何が起きたのか訳も分からずにいると机の上に手紙が置かれていることに気づいたのだ。

その内容を確認した白崎愛羅は再び驚くことになるのだが、それは次の機会があれば紹介するとしよう。

「え、ええ!?」

意味不明な理由に困惑するしかなかったのである。

しかも手紙の中には昨晩の出来事が書かれているので余計に理解不能であった。

だが、おかげで知りたいことを色々と知ることができたことだけは確かであった。

中でも一番気になったのは彼女に対する思いが綴られていたことであったが、最後まで目を通すことにした彼女がとった行動はただ1つだけであった。

その答えは次の機会があれば説明するとしよう。

アルジェイン領の一角にある廃墟と化した古びた屋敷の地下では、

行方不明だった妹リーセレッドの遺体が発見されたらしいです。

彼女の身を案じていた両親たちは酷く悲しむとともに怒りをあらわにしていましたが、何故そのようなことになってしまったのかは未だにわかっていません。

そんな中、彼女は驚くべき証言をしてくれました。

それによると彼女は自分の死を悟りつつも最後に残った魔力を振り絞って大地魔法を発動させたらしく、

「姉さん、私が守ります!」

と言っていたのが最後だったという。

そして妹の遺体を抱きしめて号泣していた両親が再び顔をあげるとそこには信じられない光景が広がっており、

妹の亡骸を抱いていたはずの彼女がいつの間にか姿を消していたというのである。

それから1か月程経ったある日、事件は起こった。

なんと彼女の遺体が消えた代わりに遺体の一部が散乱している現場が近隣の住民によって発見されたのだ。

彼女は自分の死を悟りながらも最後の力で自らを封印したのである。

その後、犯人は見つかっていない様子だったので、

今も捜索が続いているというのだが真相は明らかにされていないままだったのです。

こうしてしばらくの間探索を続けた私たちはとある場所に辿り着きました。

そこはとても不気味な雰囲気を醸し出していました。

周囲には誰もおらず、静か過ぎました。

そんな空間に包まれながら歩いて行く私たちの前に現れたのは大きな扉が一つだけでした。

恐らく中に何かがあると思いゆっくりと開け放つと、そこには信じられない光景が広がっていたのです。

なんと巨大な水晶の中に少女が閉じ込められているではありませんか、

しかも少女の顔に見覚えがあったのだ。

そう、行方不明になっているはずのリーセレッドという女の子と同じ顔をしていたのである。

彼女は一体何者なのか?

そもそも何故水晶に封印されているのか?

次々と浮かぶ疑問に苛まれながらも私達は彼女に釘付けになっていたのでした。

そして不意に視線が合うと少女は静かに口を開き、まるで呪いの言葉の如くある言葉を喋った直後、謎を残して姿を消したのです。

しかし、その言葉こそが後にこの事件を解決するヒントになっていたことは当時の私たちには知る由もありませんでした。

おそらく白崎愛羅にとっては生涯忘れられない記憶として残るに違いないと思ったのです。

「愛羅、どうしたの?」

私はその声で我に帰ると不思議そうに覗き込まれていました。

いけないと思いつつも頭の中は先程見た映像のことでいっぱいだったのでした。

そんな私の様子を見ていた沙羅さんが心配して声を掛けてくれたことに嬉しさを感じながら慌てて誤魔化すことにする私でした。

その後、どうにか気持ちを落ち着けた私たちは手分けして調査することを提案しましたが、

結局何もわからないまま解散することになったのでした。

その時の私は何か手掛かりが残されているかもしれないと思い部屋中を調べつくした結果、地下室であることが判明しました。

そして、偶然見つけた古い日記を見つけたのですが、その内容は驚くべきものでありました。

どうやらあの少女の名はリーセレッドという少女であり、彼女の両親は元々医者をしていたそうなのだがある時を境に姿を消して行たそうで、

やがて自らが医師になることを決意したのだといいますが、残念ながらその夢は叶うことはありませんでした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る