第29話 出口

まさか罠だったのかと思うと、完全に相手の思うつぼであるということを思い知らされたのである。

触手達は一斉にこちらに向かって攻撃を仕掛けてきたのです。

今までこのような攻撃は受けたことがない私は大慌てで防御体制に入ったものの、

容赦ない攻撃を受けてしまい、一気にHPを奪われてしまった挙句、

魔力も全て奪われて私は動けなくなってしまったのです。

そんな私に構うことなく更に追い打ちをかけるかのように攻撃を仕掛けてくる相手に対し、

もはや為す術のない状況に絶望していた時だった。

突然目の前に巨大なドラゴンが現れてくれたお陰で救われることができたのです。

ホッとしたのも束の間、今度は背後からもう一匹現れるのを見て背筋が凍るような感覚が走りました。

このままではいけないと思ったその時、再度先程の声の主が現れて話しかけてきたのです。

その内容というのが意外なものだったので驚きましたが、不思議と納得している自分がいました。

私には、命懸けで守らなければならない人がいるのだということを思い出したからです。

だからこそ、ここで諦めるわけにはいかなかったのです。

そう考えた時、不思議な力が湧いてきたような気がしてきました。

そして、次第に傷が塞がっていくのを感じた次の瞬間にはその場から飛び出して敵の元へと駆け出していたのです。

その瞬間私は力の限り叫んだのです。

「変身!」

その言葉を叫ぶと同時に眩い光が私を包み込みました。

それは、暖かく心地よいものでした。

まるで自分の心の中にある何かを呼び覚ますかのような感覚を覚えたのも束の間、

自然と体から溢れ出す力が漲っていくようでした。

その力を解き放つように思い切り振り上げた拳が直撃すると爆発音と、

共に周囲に衝撃が走ったかと思うと敵を一撃で倒してしまったことに気づきました。

そこから先はよく覚えていませんが、気がつけば回りに敵はいなくいつの間にか

切り開いてくれた通路に向かって進んでおりました。

そんな時、不意に頭の中に声が響いたのです。

それは紛れもなく自分自身の声であり、その声が聞こえた瞬間に私は全てを理解したのでした。

そう、目の前に広がっている空間こそが真のボス部屋であり、

それこそが真の力を解放するきっかけだったのだということを……。

そして遂に辿り着いた場所にあったものは、古代遺跡の中にあるはずのない光景だったのです。

それは、なんと辺り一面の花畑だったのです。

慌てて駆け寄ろうとした私は、そのまま花畑の中へとダイブしてしまったのです。

あれ? どうしてここにこんな物が転がっているんだろう?

そう思った矢先の出来事だったのです。

一瞬世界が暗転したかと思った瞬間、次に目に入った光景は驚きでした。

何と目の前に広がっていたのは見たこともない世界だったのである。

まず一番最初に目に飛び込んで来たのは真っ青な空と、どこまでも続いている緑の草原だったのです。

その景色はまるで絵画に描かれたような美しい世界でした。

そんな場所に立ち尽くす私に向かって声を掛けてきたのはまたしても知らない人でした。

しかも、その人はいかにも怪しい格好をしていたのを覚えています。

彼は自分に道案内をすると言い出してきたので、渋々従うことにしたのですが、

それが間違いだったのかもしれないと思い知らされるのです。

何故なら、案内すると言いながら向かった先は遺跡の中で特に目ぼしいものもなく退屈だったので、

暇潰しに彼から何か話を聞かせてもらおうとしたところ、 突然、様子がおかしくなってしまったからです。

一体何があったのかというと、どうやら私に催眠術を掛けようと企んでいたようなのです。

私は急いでこの場から立ち去ろうとしたのですが、運悪く捕まりかけてしまいました

。間一髪で逃げ出すことができましたが、このままでは危ないと思った私は

仕方なく最終手段を使うことにしたためその場を離れることを選択したのです。

再び歩き出したところで白崎愛羅は立ち止まった。

前方に出口らしきものが見え始めたのです。

安堵している暇はない、すぐに向かわなければ命はないかもしれないのだという思いを

感じ取りつつも先を急いだ彼女だったが、遂に出口に着くと思われた直後、

何者かが彼女を迎え討つべく立ち塞がったのである。

白崎愛羅はその者との戦いに挑むために意を決して決然と対峙するのだった。

「来たようだな、ここがお前の墓場だ」

まるで悪役のようなセリフを吐きながら現れた敵に対し、 私も精一杯の殺気を込めて睨んでいった。

だが次の瞬間、意外なことが目の前で起こった。

なんと相手が突然跪いて謝罪し始めたのだ。

訳も分からないまま呆気に取られていると、今度は思わぬ提案を持ち掛けてきたのだ。

私は一瞬何を言っているのか理解できなかったが、

すぐさま我に返ると戸惑いつつも訊ねてみるととんでもない答えが返ってきたのです。

何とその男は私と結婚するために来たのだというのです。

「え、ええ!?」

予想外のことに驚いてしまいましたが、そこで思い出したことがありました。

確か私がここに来る途中で出会った人物と同一人物だということに気づいたのです。

あの時はフードを深く被っており顔もよく見えなかったから気にもしていなかったのだが、

まさか同一人物だとは思っていませんでした。

さらに続けて言うには、私を手に入れるためなら手段を選ばないと宣言してきたことで

恐怖を感じた私は思わず距離を取るように後ずさると、相手は追ってくることはなかったので

ひとまず安心していると突然目の前に現れた男によって眠らされてしまったのだった。

暗闇の中、何か弾力のある物に体を挟まれている感覚に襲われた彼女はしばらくじっとしていたが、

「これで邪魔者はいなくなった。もう少しの辛抱だ、頑張れ」

という声が聞こえ、次に何か柔らかいものに乗せられていることに

気づいた白崎愛羅が薄ら目を開けると目の前にいたのは美少女だった。

しかも、それが自分だということに気づき唖然としていると、

さらに続けて可愛らしい声が聞こえてきたのだった。

「おはよう、お姉ちゃん、初めましてだね」

そう言ってにっこり微笑んでくる彼女の顔をよく見てみると確かに鏡で見た自分の顔に

そっくりであることに気づいた彼女だったが、次の瞬間には意識を失ってしまったのであった。

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