第27話 騒ぎ

それは、魔王に殺された際に、意識を失う直前に聞いた言葉だった。

(うーん……ここは、何処だろう……? それにしても何だか不思議な感じだなぁ)

そう言っていると不意に目が覚めたら目の前には知らない天井が広がっていた。

隣を見ると見たことのない青年が座っていたのだ。

彼がこちらを見た瞬間、いきなり顔を赤くしたかと思うとすぐに顔を背けて俯いてしまった。

そんな仕草を見てキュンとした私だったが、このままではいけないと思い話しかけることにした。

そして、自己紹介をしてお互いの名前を知り合ってから少しだけ話をした後に出発することになったのである。

彼は、別の国から来ている冒険者で名前はジョンと言うそうだ。

私は彼に今の自分の状況を説明することにした。

そうすると彼は何も言わずに聞いてくれたのだが、途中途中に変な顔をしていたのだが一体どうしたのだろうか?

まぁ、そんなことは置いておくとしてとりあえず街へ向かおうということになり歩き出したのである。

街の近くまで行くと、門の前には人だかりが出来ており皆大騒ぎしていた。

なぜこんなに騒いでいるのか気になった私は、近くにいた門番に聞いてみたところ、

何でもこの街に入るには審査が必要らしく時間がかかるということだった。

なので、急いで中に入る必要はないそうだことが分かったので安心していると、

何処からか女性の悲鳴が聞こえた気がしたので慌てて走り出したのだった。

そこで目にした光景を見て絶句してしまった私だが、

目の前に倒れていた男性を助けようと咄嗟に駆け寄り介抱しようとしたその時だった。

背後から何かが迫ってくる気配を感じ振り向くと、そこには巨大な虎がいたのだった。

今にも襲いかかってきそうな勢いだったため思わず後退りするも逃げ切ることが、できず追い詰められたその時である。

彼が助けに来てくれたのだ。

ジョンさんは、私を庇うようにして前に立つと虎に向かって突っ込んで行ったのである。

そして、目にも止まらぬ速さで攻撃を繰り出していくと一瞬で虎を倒してしまったのだった。

凄いとしか言いようがなかった……。

その様子を呆然と見ているしかなかった私だったが、我に帰ると彼にお礼を言おうと近づき話しかけようとした時、

彼は振り向きもせずに立ち去ろうとしたので、私は咄嗟に彼を呼び止めたのであった。

そして彼の背中に呼びかけたのである。

すると彼は立ち止まってくれたので安心した私が話を切り出そうとすると、ジョンさんの方から話しかけてきたのだ。

その言葉に衝撃を受けるも何とか気持ちを落ち着けて言葉を返したのだが、自分でも何を言ったのかよく覚えていなかったりする。

その後無事に街へ入ることが出来た私たちは宿へと向かったのであった。

部屋に到着して一息ついた後改めて自己紹介をした後はお互いに気になっていたことを話し合うことになったのだ。

そこで分かったことといえばお互いに同じ目的を持っているということだったこともあり意気投合したのだが、

この時はまだ知る由もなかったのである。

その時、背後から物音が聞こえたような気がして振り返った次の瞬間、私に向かって何かが迫ってきた。

咄嗟に回避したものの、少し遅かったらしく左腕を掠めてしまったようだった。

ダメージ自体は大したことはなかったのだが、問題はそこではなかったのだ。

なんと相手の武器が溶けていたのである。

その事実に驚いている間にも次々と攻撃されて追いつめられた私は、

このままでは危ないと思った瞬間、頭の中に声が聞こえてきたのだ。

(マスターの精神状態が不安定です! 落ち着いてください!)

(!? え? 何? 誰の声なの? 一体どうなっているの?)

混乱する頭を必死に抑えながら声のする方に目を向けるとそこには光の塊のようなものがあったのだった。

(一体何が起きたの!? 助けて!)

恐る恐る光に向かって手を伸ばしてみると、その瞬間眩い光が私を包み込み、そのまま意識を失ってしまった。

目を覚ますとそこは見慣れた光景であった。

(夢だったの? いや違う!)

確かにあの時感じた温もりを私は忘れずにいたからわかるのだ。

あれが現実であることを……ふと右手を見ると何やら違和感を感じたのである。

不思議に思いながらも鏡の前で手を広げている時に驚愕の事実に気づいたのだった。

なんと右腕が無くなっていたのである!

しかも、更に問題があったのだ。

それは、本来ならあるはずのない翼が生えていたのである。

どういうことだと混乱する頭で考えた時、頭の中に直接声が聞こえてきたのだった。

どうやらその声は私にしか聞こえないらしく他の人には、

聞こえていないようだったので恐らく私だけに聞こえる声なのだろうと思われたが、

それでも一体何が起きているのか理解できなかった私は、 ただ呆然と立ち尽くすことしか出来なかったのである。

しかし、次の瞬間再びあの声が聞こえて来たため耳を傾けてみると、

どうやら私の身体の中に宿っているらしい事がわかったのだ。

そして同時に頭の中でイメージが浮かんできたかと思えば、

それが自分の思い描いているものと同じだということに気がついたのだ。

つまり、これは私なのだ。

この翼は私の意思によって動くことができる優れものであり、

しかも空を自由に飛ぶことまで出来るようになっていたのだった。

これで空を飛ぶことができるようになったと思った私は早速試すことにしたのだが、

今はまだ魔力が回復していないようで長時間使うことは出来なかった。

だが、いずれ慣れるようになるだろうと思い、ひとまず休憩を取ることにしたのであった。

その後なんとか落ち着きを取り戻した後、改めて今の状況について考え始めた。

今思い返してみると色々とおかしな点があることに気づくことができたからだ。

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