第24話 真実

もしかしたら、このまま監禁されてしまうのではないかと思うと怖くなったからだ。

そんなことを考えているうちに、彼女が話しかけてきた。

「大丈夫よ、別に取って食おうってわけじゃないんだし」

と言って微笑んだ後、こう続けた。

「それよりも貴女には聞きたいことがあるのよ」

そう言って彼女は真剣な眼差しを向けてきた。

どうやら冗談で言っているわけではないようだと思ったので、私も真剣に向き合うことにした。

そして、彼女はゆっくりと口を開き、こう尋ねてきたのだった。

「ねぇ、愛羅ちゃんはどうしてこの世界にやってきたのかしら?」

それを聞いて私は戸惑った。

そもそも、どうして自分がここに連れてこられたのかさえ分からないのだから当然である。

そのことを説明すると、彼女は納得したように頷いた後でこう言ったのだ。

「なるほどね、そういうことなら納得だわ」

それを聞いて私はほっとしたのだが、まだ肝心なことを聞いていないことに気付いたので、

もう一度尋ねてみたところ、ようやく本題に入ることができた。

「実はね、私がこの話に関わるきっかけになったのは愛羅ちゃんだったのよ」

彼女は、私をこの世界に召喚した張本人だったのだ。

衝撃の事実を知って動揺する私に、彼女はさらに追い討ちをかけるようにこう言った。

「実はね、貴女がこの世界に召喚された時に使った魔法陣は、私達魔族の王と人間の王がそれぞれ共同開発したものなのよ」

それを聞いた瞬間、私は絶句してしまった。

まさか、私が異世界に飛ばされた理由がそこにあっただなんて思いもしなかったからである。

そんな私を見て、彼女は微笑みながら言った。

「でもね、そのおかげで私達は争うことになってしまったのよ」

そう語る彼女の顔はとても悲しげだった。

それを見て、私も悲しくなったが、それと同時に疑問が浮かんだので聞いてみることにした。

それは、なぜ争いになったのかということである。

すると彼女はこう答えてくれた。

「……元々私達魔族と人間は協力関係にあったのだけど、それがある時を境に崩れてしまったのよ」

そう言って彼女は、語り始めた。

「最初は些細な意見の食い違いから始まったのだけれど、次第にお互いの思想の違いが大きくなっていったのよ」

そう言って彼女は、悲しそうに目を伏せた。

そんな彼女の様子を見ていると、こちらまで辛くなってくるようだった。

そんな様子に気付いたのか、彼女は慌てて取り繕うように笑顔を見せた。

そして、再び話し始めたのである。

要約すると、魔族と人間の間に対立が生じたのは、共通の敵が現れたことが切っ掛けだったということが分かった。

その敵というのが、人間達の間で神として崇められている存在であり、その名を魔王と名乗ったらしい。

その結果、魔族と人間の対立が深まり、ついには大規模な戦争にまで発展してしまったということだった。

「なるほど、そういうことだったんですね……」

そう言って頷く私だったが、一つ気になったことがあったので質問してみることにした。

それは、どうして私をこの世界に連れてきたのかということである。

それについて尋ねると、彼女はゆっくりと語り始めた。

その話の内容は、にわかに信じられないものだったが、実際に体験しているので信じるしかなかった。

というのも、私が元いた世界は、今いる世界と瓜二つだということが判明したからである。

つまり、ここは並行世界ということになるのだろう。

そして、彼女は続けてこう言ったのだ。

「貴女が元の世界に帰る方法はただ一つ、私達魔族の王を倒すことです」

それを聞いて私は驚愕した。

まさか自分が倒すべき相手だとは思いもしなかったからだ。

「どうして私が……?」

思わずそう呟いてしまったが、それに対して彼女は淡々と答えるだけだった。

どうやら、私を召喚したのは彼女自身ではないらしいのだ。

しかし、それを命じた人物が誰なのかまでは分からないということだったので、それ以上追及するのはやめておいた。

それに、今はそんなことに構っている暇はないと思ったからである。

何しろ、元の世界に戻るためには、魔王を倒さなければならないのだから……。

そう思うと不安が込み上げてきたが、今更引き返すことはできないと思い直した。

(そうだ、私は覚悟を決めたんだ!)

そう思いながら拳を強く握り締める。

そして顔を上げると、そこには微笑む彼女の姿があった。

その表情はとても美しく、まるで女神のようだと思った程だ。

「さて、そろそろ時間が来たみたいね」

そう言って立ち上がる彼女を目で追うようにして見上げると、

いつの間にか辺り一面が光に包まれていた。

どうやら転移魔法が発動したらしい。

私は、眩しさに目を細めながら、彼女に尋ねることにした。

「あの、また会えますか?」

すると彼女は笑顔で頷いてくれた。

どうやら無事に元の世界に帰ることができそうだと思った瞬間、私の意識は途切れてしまった……。

そして目が覚めると、見慣れた天井が目に入ったのだった。

どうやらベッドで眠っていたらしいが、どうやって帰ってきたのか思い出せないでいた。

とりあえず身体を起こそうとした時、全身に痛みが走ったことで思い出した。

(そうだ、私異世界に飛ばされてたんだった)

「うぅ……痛いなぁ……」

思わずそう呟くと、不意に声をかけられた。

振り返るとそこには、一人の女性が立っているのが見えた。

どうやら看病してくれていたらしいが、誰だろう?

と思っていると、相手が自己紹介を始めた。

「初めまして、私はリリィよ。貴女が異世界から召喚されたっていう子よね?」

それを聞いて驚いたが、同時に納得もできた。

つまり、この人は私の面倒を見てくれるということだろうか?

それならありがたいことだと思ったが、同時に不安もあった。

何故なら、彼女が何者なのか分からなかったからだ。

そこで、私は思い切って尋ねてみることにした。

「あの、貴女は何者なんですか?」

と聞くと、彼女は微笑みながら答えてくれた。

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