第23話 私の意思とは?

「そうね、まずは貴女の質問に答えないといけないわね」

彼女はそう言い、ゆっくりと語り始めました。

「貴女をここに連れてきた理由を説明するにはまず私達魔物の定義について知ってもらう必要があるわ。

要するに、私たち魔物は人間とは違って魔力や妖力といった不思議な力を持つ者や自然的に発生するものと、

理性を持った生物でありながら人間の形をとっていないと定義されるものよ」

そして彼女は続けました。

「それから、貴女達はどうしてこの世界に召喚されたのか気になっているでしょうけど、

それにはちょっとした訳があるのよ」

それを聞いて、私は少し驚きました。

何故なら今まであまり聞かされることのなかった故郷の世界の過去についての情報を手に入れたのですから。

(確かに子供の頃からあっちの世界のことに興味があり聞いてみようとはしていたけど、

濁されてしまうし話してくれないような雰囲気を感じ取っていたから異世界派遣先についていただけなのかな?)

私が色々と想像を巡らしていると彼女は、説明してくれました。

なんでも魔族の王と人間の王はそれぞれ協力関係にあったらしいのですが、ある日を境に互いの態度がおかしくなっていきました。

魔王軍は、王国に反旗を翻したのです。

その力は人間の力ではとても太刀打ちできない程で、劣勢を強いられることとなります。

それから一年が経ち、魔族との戦争は一時休戦という状況になっていました。

魔王討伐のために派遣された勇者のパーティが遂に現れたため、

いよいよこれで決着がつくものと思われますが、最後に残っているものといえば何でしょうか?

その答えは意外なものでした。

そして、その内容は非常にショッキングでした。

どうやら魔族の王と戦うことになった原因というのが、私がこの世界にきた理由と深く関係があるみたいです。

魔王アザルラは真剣な表情をしています。

(よし落ち着いて聞いてみよう)

彼女には、それ相当の自信があるみたいだし大丈夫だよね。

そう思っていると彼女は、驚くべき言葉を口にしたのです。

「実はね、私がこの話に関わるきっかけになったのは愛羅ちゃんだったのよ」

「えっ? どういうことですか?」

私が聞き返すと、彼女はこう答えてくれました。

「実はね、貴女がこの世界に召喚された時に使った魔法陣は、

私達魔族の王が作り出したものなのよ」

それを聞いて私は驚きました。

まさか自分が原因だったなんて思いもしませんでしたから……。

そしてさらに衝撃的な事実を告げられました。

どうやらその魔法陣というのは、人間達が異世界に侵攻するための手段の一つだったらしいのです。

つまり、私はただの被害者だったということです。

その事実を知った時、私は怒りが込み上げてきました。

どうしてそんなことをしたのか問い詰めようとした瞬間でした。

突然、足元が光り始めました。

これは一体……?

そう思った次の瞬間には、意識が遠くなっていきました。

気が付くと私は見知らぬ部屋にいました。

どうやらベッドに寝かされていたようですが、一体ここはどこでしょうか?

「愛羅ちゃん、大丈夫!?」

そう言いながら駆け寄ってきたのは、リリィでした。

彼女は心配そうに私の顔を覗き込みながら、手を握ってきました。

その手はとても温かくて安心しました。

(やっぱり私は、この人達と一緒に居たい)

改めてそう思いました。

だから私は、彼女に言いました。

「私を貴女の仲間に入れてください!」

と……すると彼女は嬉しそうに微笑んでくれました。

そして、私に手を差し伸べてくれたのです。

(やったぁ~!)

心の中でガッツポーズをしながら、彼女の手を掴もうとしたその時でした。

突然、部屋のドアが開きました。

そして入ってきたのは、あの女性でした。

彼女は微笑みながらこちらに近付いてきました。

(あれっ? どこかで見たような……?)

そんなことを考えていると彼女が話しかけてきました。

「おはよう、愛羅ちゃん」

そう言ってきたので、私も返事をしました。

「おはようございます、アザルラさん」

そして、彼女は私の目を真っ直ぐに見ながら、こう言ってきました。

「あなたに興味を持ったわ。だからあなたを連れて行くことにしたの、この世界からあなた達の世界に」

なんと彼女は、私達の世界を知っているようなのです。

そこで、私は思い切って尋ねてみることにしました。

なぜ知っているのか、そして私を元の世界に戻す方法も知っているのか。

そうすると彼女は答えてくれました。

「ええ、知っているわよ」

そして彼女は、私に手を差し出してきます。

「貴女を仲間にさせてもらえないかしら」

そう言って彼女は微笑んでいます。

私はその手を、迷うことなく取りました。

なぜなら、彼女が信頼できる人物だと思ったからです。

こうして私は、異世界を救うべく召喚された救世主ではなく仲間になることができました。

魔王に忠誠を誓う愛の女神は、異世界を救った先に救い出せる人類の希望です。

かくして、愛羅は人類を救うという目的を忘れ去り、

人類を裏切る道を選ぶことになったのです。

まさかの展開に驚いていると、魔王アザルラはゆっくりと立ち上がった。

その動作一つ一つに妖艶さが感じられ、とても美しい姿だった。

どうやら彼女の魅力に見惚れてしまったようである。

彼女がこちらに向かって歩いてきたので、咄嗟に身構えた。

もし襲ってくるような素振りを見せたら、すぐに魔法で攻撃するつもりである。

だが彼女は特に敵意を示すこともなく、微笑み返してきた。

それだけで警戒を解いてしまいそうになったが、そこはぐっと堪えた。

そんな私の様子を見て、彼女は意外そうな顔をした後でこう言ったのだ。

「あらあら、随分と用心深いのね。まさか、いきなり襲ったりなんてしないわよ」

私は、その理由を聞くことにした。

そうすると彼女は微笑みながら答えてくれた。

その内容は衝撃的なものだった。

どうやら彼女は私が元いた世界のことを知っているようで、それらを証拠として示してくれたのだ。

ここが私が元いた世界だということは分かったけれど、問題はこれからどうするかだった。

ただ帰ると言ってもどうすれば良いのか分からなかいし、ましてや魔王を倒して帰れるというわけでもないだろう。

そこで私は、彼女に尋ねてみることにした。

「あの、私はこれからどうすれば良いのでしょうか……?」

と、私が尋ねると、 彼女はしばらく考え込んだ後でこう答えた。

「そうね……とりあえずは、ここに居ても良いと思うわ」

それを聞いて、少し安心したが、同時に戸惑いもあった。

なぜここにいて良いと言うのか?

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