第18話 救世主
「あの、何でそんなに優しく接してくださるんですか?」
恐る恐る尋ねてみると、彼女は微笑みながら答えてくれた。
「だって、あなたは特別な存在だもの」
「特別……?」
不思議に思い聞き返すと、彼女は大きく頷いた後で理由を説明してくれた。
なんでも、私にはまだ自覚していない力があるのだという。
例えば、私の持つ魔力の量には計り知れないものがあるらしく、
それを引き出すことができれば最強の力を発揮できるそうだ。
それを聞いた私は半信半疑だったものの、なぜか信じる気になったのだ。
もしかしたら、心の奥底で期待しているのかもしれないと思った。
いや、それだけではない気がするが、それ以上は考えても答えが出なかったので考えるのをやめた。
そんなことを考えているうちに今度は頭を撫でてくれる彼女の手つきに
心地よく感じている自分がいることに気づいた私は、段々と眠たくなってきたため、そのまま目を閉じてしまったのであった。
「ん?」
目を開けると、見慣れた天井が見えた。
「あっ、そっか……」
私はゆっくりと身を起こすと、周囲を見回した。
そうすると、そこは私が使っている部屋の中だったことに気づいた。
どうやら、あのまま眠ってしまったようである。
私はベッドから降りると部屋の外へ出ると、居間へと向かった。
そこには既に起きて活動していたリリィ達の姿があった。
彼女たちはこちらに気づくと微笑みながら話しかけてきた。
「あら、おはよう愛羅」
そう言われて、私は笑顔で返事をすると朝食の準備を始めたのだが、
その様子を見ていた彼女達は手伝いを申し出てきた。
私は断る理由もなかったのでお願いすることにした。
そこで一つの問題が発生したのだ。
彼女達が素肌のまま近づいてきたせいで、私は目のやり場に困り困ってしまうことになった。
しかし、それでも何とか平静を装っていると、彼女達は私の腕を掴むなり、そのまま抱きついてきたのだ。
しかも、それだけでは飽き足らず、首筋や頰などに口づけしてきたため、恥ずかしさから逃げるようにその場を離れようとした。
だが、それは叶わなかったのだ。
何故なら、背後からリリィが私を捕まえており、逃してくれなかったからだ。
そして、そのまま私達は朝まで愛し合っていた。
その後、私達は朝食を食べてからギルドへ向かって依頼をこなしたのだが、そこで予想外の出来事が起きた。
何と、魔族に襲撃されてしまったのだ。
私は必死になって戦っていたが、仲間が傷ついていく姿を目の当たりにし、心が折れそうになったその時、
私は全能感に包まれているかのような不思議な感覚に陥り、気がつけば無傷で敵を一掃していたのである。
これは一体どういう事なのだろうかと思いながらも屋敷に帰ると、リリィ達に心配をかけたことに対する謝罪をして反省するのであった。
目を覚ますと、そこは自分の部屋であった。
周囲を見回すと、それは私の部屋だとすぐに分かった。
どうやら、いつも通りの生活に戻ったようである。
そう思いながら支度をし、部屋を出て食堂へと向かった。
彼女達は既に座って待っていたため、挨拶をすると席に着いた。
そして食事を終えると、狩りへ行く支度を始めるのであった。
その日の狩りも順調に進んだことで、今日の仕事は早めに片付いたため、
一度屋敷に帰ることになったのだが、そこで思いがけない出来事が起こった。
なんと、留守番をしていたはずのリリィ達の様子がおかしかったのである。
どうやら様子がおかしいので心配になって訪ねてみると、彼女たちは私の姿を見るやすぐに抱きついてきた。
一体どうしたのだろうかと思い尋ねてみたところ、彼女達は目に涙を浮かべていたのだが、
次の瞬間、驚くべき言葉を口にしたのである。
なんと、私のお腹の中に新しい命を宿しているのだというのだ。
私は驚いてしまったのだが、その一方で嬉しい気持ちになっていたのも事実だ。
そこで、彼女達に確認してみると、笑顔でこう言ってくれたのである。
「よかったわね、愛羅! あなたの可愛い子供よ!」
その言葉を聞いた瞬間、私は涙が出そうになった。
何故なら今までの人生の中でこれほどまでに幸福を感じたことはなかったからだ。
リリィ達も同じ思いを抱いていたのだろうと思い嬉しく思っていると、今度は彼女の方から話しかけてきたのだ。
「ねえ、愛羅」
そう言って私を抱きしめながらキスをしてくる彼女に答えるように舌を絡めていく。
すると段々と気分が高まり、やがて我慢できなくなってしまったのである。
その後は、お互い下着姿で愛し合い、疲れ果てるまで愛し合い続けたのであった。
こうして、私達の家族には新たな仲間が加わった。
その日から幸せな時間が続いていくのだが、それも長くは続かなかった。
ある日のこと、私達がいつも通り暮らしていると、突然、屋敷に魔族が現れたのである。
どうやら狙いは私とリリィ達だったらしく、私達は必死に応戦したものの次第に追い詰められていった。
しかし、そこで現れた救世主によって救われた。
「皆さん、助けに来ました!」
そう言って颯爽と現れたその少女は、紛れもなく、私たちの大切な仲間であり友人でもあるリリアーナだったのだ。
しかも、その手には大きな鎌を持って敵を一掃していたのである。
それを見た私とリリィ達は、安堵しつつも驚いていると、リリアーナは笑顔で答えてくれたのである。
どうやら彼女もエルフ族の仲間を連れてきてくれたみたいで、無事に救われた私達は彼女と共に街まで戻ったのであった。
そんな私達であったが、その後もいつも通りの生活を送り続けていた。
だが、ある日を境におかしな現象が起こり始めたのだ。
最初は小さなものだったのだが、日を追うごとに徐々に大きくなり、今では無視できないものになっていたのである。
それはまるで何かに取り憑かれているようだったのだが、私には心当たりが全くないのだ。
そこで私はリリアーナに相談してみることにしたのだが、彼女にも全く原因が分からないと言われて困ってしまったのだ。
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