第9話 旅は続く
こんなにも体が動かないなんて、やはり何かが起こったと考えるのが普通でしょう。
気が付くと、既に眠りについていたらしく、昨晩のことはあまり記憶に残っていませんでした。
ただ、なんとなく変な夢を見た気がします。
その夢で、私は誰かと会話をしていたような気がします。
内容は覚えていないけれど、妙にリアルな印象がありました。
まあ、夢というのは往々にしてそういう物ですから、あまり気にする必要はなさそうです。
それよりも今はやるべきことがあるのですから!
私は気合を入れ直して、朝の身支度をすることにしました。
鏡を見ると、そこにいるのはいつも通りの自分自身でした。
白色の髪に紫色の瞳、小柄な体型で、肌はかなり白いですが顔色はあまり良くないように思われます。
この容姿が、私のコンプレックスでした。
しかし、今はそんなこと気にしていられません。
早く皆と狩りに行かないといけません。
そのためにも、手早く朝食を済ませました。
食堂に行く途中でアリスに会い、一緒に向かうことになったのです。
食堂に到着すると、既に他の五人が待っていました。
ということで、まずは食事を取ることにしました。
今朝のメニューは、トースト二枚とスクランブルエッグ、トマトジュースといった洋風の食べ物だったようです。
早速口に運び始めるのですが、そこで違和感に気づいたのです。
なぜでしょう?
食べている感覚が全くしません。
ただ、口が動いていることだけが確認できます。
いったい何が起こっているのでしょうか?分からないことだらけですが、
とりあえず完食しなければいけません。
そう思い、無理やり食事を続けていると、なんとか食べることができました。
すると、今度は猛烈な頭痛に襲われたのです。
あまりの痛みに倒れそうになるも、必死に堪えてその場に留まりました。
そして、その時はついにやってきたのです。
何と、胃の中からパンが出てきたのです。
あまりにも異常な光景に戸惑いながらも、吐き気を抑えながらなんとか全部吐こうとしました。
でも、どれだけやってもお腹の中に入った物は出てこなくて、今度は胸やけがしてきました。
そして、私は再び意識を失ってしまったのです。
次に気がついた時には診療所のベッドの上で寝かされており、そばにはアリスが付き添ってくれてました。
どうやら、心配をかけてしまったようで申し訳なくなりました。
でも、今はそんなことより大事なことがあるはずです。
まずは状況確認をしないと……と思い体を起こそうとしましたが、やはり動くことは叶いませんでした。
それどころか声を出すことさえままならず、呼吸すらも苦しく感じるほどでした。
どうやらかなり症状が進行しているみたいで、もう駄目なのかもしれないと思うほどでした。
そんな私を救ってくれたのは、他でもない、アリスでした。
彼女はそっと手を握ると、優しく語りかけてきました。
それだけで、心が落ち着く気がして、自然と涙が溢れてきました。
それからも、彼女はずっと傍にいて励まし続けてくれました。
そして、その甲斐あって徐々に回復していき、今では日常生活を送れる程度にまで回復することができました。
しかし、この症状は何なんでしょうか?
疑問に感じた私は、ある決意を固めたのでした。
それは、自分のステータスを調べることでした。
もしかしたら、この症状の原因がわかるかもしれないと思いました。
なので、まずステータスを表示するためにメニュー画面を呼び出して、
そこからステータスを開きました。
そして、早速確認してみました。
そこに書かれていたのは驚くべき内容でした。
なんと、私の種族であるはずの白狼族が、どこにも存在しないのです。
さらに言うと称号の部分すら変わってしまっており、そこに書かれていたのは【人間族】だったのです。
私は理解することができませんでした。
一体なぜこんなことになってしまったのか?
しかし、そんなことを考えている余裕も時間もありませんでした。
今度は体から何やら怪しげな力が溢れ出し始めたからです。
その力の影響で私の体は次第に変化し始めていき、気がつけば少女の姿になっておりした。
これが何を意味しているのか、それを理解することが私にはできませんでしたが、
とりあえず私たちは元の食事場まで戻ることにしました。
街が静かになります。
ようやく一人になることができ、心労も大分軽くなってきました。
今だけは、食事を楽しもうと、テーブルの上に載っていた豪華な料理を食べようとしますが、
意のままに動かない体によってテーブルの上は倒れてしまいます。
私は何を考えていたのでしょうか、困った状態で三女の従姉妹が屋敷に帰ってきて助けてくれて助かりました。
その後、新しく姿に生まれた少女の身体の持ち主、私、白崎愛羅がこの世界から姿を消し、元の世界に戻ってしまう。
(あぁ、生きていけない)
心の中で呟くと涙がこぼれました。
でも、今は我慢するしかないんです。
なぜなら、元の世界では既に、私の体はもう死んでしまっているのだから……。
こうして、私達の旅は続くことになるのです。
皆と行動を共にすることになり、そして、私たちは暗闇の魔女を倒すために旅立つことになりました。
「よし、出発ね」
といって歩き出そうとした時、突然何者かが現れます。
そこにいたのは漆黒の衣装を纏った謎の女性でした。
彼女は私たちを見るなりこう言いました。
「見つけたわ、あなたが愛羅ちゃんね、さぁ、こっちにいらっしゃい!」
そう言うと、いきなり私を抱きかかえるとそのまま空高く舞い上がってしまいます。
「えっ!? ちょ、ちょっと! 何するんですか!?」
突然の事態に驚いていると彼女は微笑みました。
彼女の名前はエルマと言い、このダンジョンを管理している精霊さんだそうです。
そして彼女いわくここは私が攻略すべき場所なのだといいます。
そう言われても全く意味がわからないのですが……そもそもなんでそんなことをしないといけないんでしょうか?
すると彼女が教えてくれました。
なんでもこの世界で起こっている問題を解決するためだとか……意味がわかりませんよね?
とりあえず詳しく話を聞くことにしました。
そんなわけで彼女に案内されるがままに進んでいきました。
道中、モンスターに襲われることもありましたが、
その度にルティアさんが助けてくれたおかげで無事に進むことができました。
そうしてしばらく歩いているうちに目的地へと到着しました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます