第6話 ダンジョン
彼女達によって取り押さえられた店主さんは、抵抗することを諦めて大人しくしていました。
そこで、私は尋ねました。
どうしても気になることがあり、どうして武具屋に剣が無かったのか聞いてみると、意外な答えが返ってきました。
なんと、この街には鍛冶師がいないというのです。
だから、武器は全て街の外から輸入しているのだと説明してくれました。
それを聞いて驚きましたが、同時に納得しました。
だって、これだけの品揃えなら専門店としてやっていけるはずだと思ったからです。
しかし、できない理由があるみたいです。
それは単純に値段が高くて買うことができないということらしいです。
特にミスリルランクの冒険者などは、専属契約を結んでいる店があるみたいで滅多に街の武具店に来ることがないと言います。
それからもしばらく会話をしたのですが、その間も彼はずっと虚ろな目をしていました。
どうも様子がおかしいので少し心配になりました。
それでも、買うなら早いほうが良いと思い、値段を確認しました。
そうすると、想像していたよりもかなり高くて驚きました。
でも、せっかくここまで来たのだからと思い切って購入することにしました。
これでようやく目的を果たすことができました。
それから、私達は宿に戻って休むことにしました。
翌日、早速手に入れた剣を使ってみることにしました。
試しに振ってみると、とても軽くて扱いやすいです。
それに、切れ味も抜群でした。
これならどんな魔物でも倒せそうです。
ただ、一つだけ気になることがありました。
それは、この剣が普通のものではないということです。
何故か分かりませんが、手に馴染むというか、まるで昔から使っているような感覚になるのです。
不思議に思った私は、鑑定スキルを使って調べてみることにしました。
そうすると、驚くべき事実が判明しました。
なんとこの剣は魔剣だったのです!
しかもただの魔剣ではなく、伝説の聖剣に匹敵するほどの力があると言われており、持つ者に絶大な力を与えると言われています。
そんな凄い武器を手に入れてしまったことに驚きましたが、同時に嬉しさもありました。
これでもっと強くなれるからです。
でも、それと同時に不安もありました。
なぜなら、この剣を手にしてしまったことで何か大きな運命に巻き込まれそうな予感を覚えたからです。
それでも私は前に進むことを決意しました。
そして、今日も私達また新たな冒険へと旅立つのでした。
リリィ達と一緒に、魔王を倒すために。
さて、今日はどんなクエストを受けようかな?
そんなことを考えていると、ふとあることを思いつきました。
(そうだ! せっかくだから、ギルドの掲示板に貼ってあった依頼を見てみよう)
そう思って見てみると、そこにはとんでもない内容が書かれていました。
なんと、この街の近くにダンジョンが発見されたというのです。
しかも、そのダンジョンには財宝が眠っているという噂もあるみたいです。
これは是非とも挑戦しなければなりませんね。
早速準備をして向かうことにしました。
しかし、その前に一つだけ気になることがありました。
それは、この依頼内容です。
何故か報酬金額が書いていなかったのです。
不思議に思った私は受付嬢さんに尋ねてみることにしました。
そうすると彼女は、笑顔でこう答えてくれたのです。
「申し訳ありません、その件については極秘事項となっておりますのでお答えすることができません」
どうやら何か事情があるようです。
でも、ここまで来て引き下がる訳にはいきません。
そこで私は、ダメ元で聞いてみることにしました。
「どうしても教えてもらえませんか?」
そうすると受付嬢さんは少し困った表情をした後、こう答えてくれました。
「そうですね、特別に一つだけヒントを差し上げましょう。
この街の近くにダンジョンがあるのはご存知ですか?
実はそのダンジョンの奥には魔王がいるという噂があります」
(えっ!?)
と思わず声が出そうになりましたが、なんとか抑えました。
そして、改めて考え直します。
(なるほど……そういうことなのね)
つまりこの依頼内容は、私達に魔王討伐を依頼しているということなのでしょう。
そう考えると辻褄が合います。
恐らくですが、魔王を倒すことができれば報酬として莫大な財宝が与えられるのではないでしょうか?
そう考えると、俄然やる気が出てきました。
そうと決まれば、早速出発しましょう!
「よし、行きましょう!」
私達は意気揚々と出発しました。
目指すは街外れにあるダンジョンです。
道中は何も問題なく進んでいきました。
そうすると、目の前に洞窟が見えてきました。
あれが目的の場所です。
私は気を引き締めると、慎重に中に入っていきます。
入口付近はそれほど広くなかったのですが、奥に進んでいくにつれてどんどん狭くなっていきました。
そのため、必然的に隊列が長くなっていくことになります。
最初はリリィを先頭にして進んでいたのですが、途中からルティアが先頭に立ちました。
さらに、その後は順番に入れ替わっていく形になります。
そうして少しずつ進んでいき、ついに最深部に到達しました。
そこで、私達は信じられない光景を目にします。
なんとそこには巨大な扉があったのです!
しかも、不思議な紋様が刻まれていて、見るからに怪しい雰囲気を放っていました。
しかし、ここで引き返すわけにはいきません。
覚悟を決めて中に入ることにしました。
そうすると、扉がゆっくりと開いていきます。
その先に待ち受けていたのは……なんと祭壇のような場所でした。
その中央には台座があり、その上に何かが載っていました。
近づいて確認してみると、そこにあったものは宝石のように輝く玉のようなものでした。
大きさはソフトボールくらいでしょうか?
表面はつるつるしていて光沢があります。
色は綺麗な青色をしていて、見ているだけで心が安らぎます。
まるで吸い込まれそうなほど美しい輝きを放っています。
思わず見惚れていると、突然声が聞こえてきました。
その声は頭の中に直接響いてくるような感じで、どこか不思議な感じがしました。
声のトーンからして女性の声のように思えますが、詳しいことはわかりません。
ただ、なんとなく安心感を覚えるような優しい声音ではありますが、どことなく不気味さも感じ取れます。
それが余計に不安を掻き立ててくるというか……そんな感じです。
そんなことを考えているうちに、声は続けて語りかけてきました。
その内容を聞いて、私は驚愕しました。
なんと、声の主はこの宝玉そのものだというではありませんか!
信じられませんでしたが、確かにそう言われると納得できる点がいくつかありました。
例えば、声質や口調などがそっくりなのです。
まるで本当に喋っているかのようなリアルさを感じました。
しかし、それだけでは説明がつかない部分もあります。
そもそも、どうやって喋ることができるのでしょうか?
疑問が次々と湧いてきますが、考えても答えは出ないので諦めることにしました。
とりあえず今は目の前のことに集中したいと思います。
それにしても、この宝玉を手に入れたということは、これで目的達成です。
やったー! と喜びたいところですが、まだこれで終わりではありません。
むしろここからが始まりといっても過言ではないでしょう。
何故なら、この宝玉にはまだ隠された力があるかもしれないからです。
それを確かめるまでは油断できません。
そう思いながらも、ひとまず帰還することにしました。
帰り道の間、ずっとドキドキしていましたが無事に街に辿り着くことができました。
そうすると、街の人達から歓声が上がると同時に、たくさんの人々が駆け寄ってきました。
どうやら心配してくれていたみたいです。
中には泣いている人もいて、申し訳ない気持ちになりましたが嬉しかったのも確かです。
そんな中、一人だけ様子の違う人がいました。
その人は全身鎧を着ており、背中には大きな盾を背負っています。
その姿はまるで騎士のようでした。
年齢は20代前半くらいのように見えるものの、顔を覆う兜のせいで素顔を見ることはできませんでした。
そんな彼が話しかけてきました。
「よくぞ戻ってきたな、強者よ。私の名はアレックスだ、よろしく頼む」
そう言って握手を求めてきたので、私もそれに応えます。
すると彼は微笑み返してくれました。
とても優しそうな人で安心しました。
その後、王様から直々に感謝の言葉を頂き、報酬もたくさん頂いたので大満足の結果に終わったわけですが、
ひとつだけ気になることがありました。
それは、あのダンジョンで手に入れた謎のアイテムのことです。
結局、あれが何だったのか分からずじまいだったんです。
でも、いつか分かる日が来ると信じています。
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