第22話 スポーツ大会当日(その1)

スポーツ大会当日がやって来た。

俺たちの学年はAからJまでの10クラスがある。

一クラスが二チーム(アルファとベータ)だから、全部で20チーム。

ただし種目がバレーボール、バスケットボール、サッカー、ソフトボールの四つがある。

三学年で60チームあっても、一つの種目に関しては15チームほどだ。


ちなみにバレーボールを選んでいるのは16チーム。

4回勝てば優勝になるわけだ。


一回戦は俺たちC組は2チームとも勝つ事が出来た。

二回戦で俺たちのベータチームは勝ったが、もう一つのアルファチームは優勝候補のE組と当たってしまった。

E組アルファチームはバレー部のレギュラーが三人もいるチームだ。

俺たちのクラスも頑張ったとは思うが、力の差は歴然としていた。

山原が悔しそうに言う。


「予想はしていたが、E組はやっぱり強いな」


俺も観察していた様子を口にした。


「吉野が言った通り、バレー部レギュラーの三人が抜群の連携だな。他の三人の動きもいい。やっぱり優勝候補はE組のこのチームだな」


水野がボヤく。


「戦力を平均的にするために、バレー部の三人がアルファとベータに分散する事を期待したんだけどな」


「それは無いだろうって吉野が言っていただろ」


俺の答えに水野が苦笑いで答えた。


「それでE組アルファが俺たちと当たるのはいつだ?」


俺はトーナメント表を広げる。


「俺たちはベータブロック、E組のこのチームはアルファブロックだ。だから決勝戦だな」


山原が他チームを指さした。


「その前に次の試合でA組に勝たないと決勝戦に出られない。A組ベータもバレー部が二人もいて、相当に強いからな」


その通りだ。

次に俺たちと当たるA組も、バレー部のメンバーが二人いるチームだ。

今までの試合を見ているだけでも、よく連携が取れていて、かなり手ごわいチームだと分かる。


「あまり気にしてもしょうがないだろ。勝負は時の運。まだ次の試合までは時間があるから、気分転換にジュースでも買いに行こうぜ」


水野が呑気な口調でそう言った。


(女子への応援、今なら切り出しやすいかも……)


そう思った俺は、同じチームの五人に声を掛けた。


「それならせっかくだから、女子のバスケの試合を見に行かないか? 確かもうすぐ女子も二試合目が始まる時間だよな?」


だがそれを聞いた山原と水野は渋い顔をする。


「女子の試合か? う~ん、俺たちが行ってもなぁ」と山原。


「アッチはむしろ、俺たちに来て欲しくないんじゃないか?」と水野。


他の三人も同様に微妙な顔をしている。


「そんな事ないだろ。女子だって応援に来て貰って、嬉しくないはずはない。同じクラスなんだし」


だが俺のその言葉にも、水野がやんわりと反論する。


「でもさぁ、女子を喜ばすだけだったら、別に行かなくてもいいんじゃね? 向こうだって来てないんだし」


(水野、この前の遠足のカレー事件で、凛の事をまだ怒ってるのか?)


「喜ばすとかそういう話じゃないよ。同じクラスだろ。そもそもこのスポーツ大会はクラス全体で順位が決まるんだから」


他の連中も「どうする?」「行ってみる?」「でも俺たちが行くと、逆に女子が嫌がりそうだしな」と話し出す。


こうなったら仕方がない。

一か八か、俺が先陣を切るしかないだろう。


「俺は行くよ。やっぱり同じクラスだし、女子たちがどこまでやっているのか、それは気になるからな」


そう言って立ち上がると、他の連中も少し慌てた様子で言った。


「待てよ、音也。別に行かないって言っている訳じゃないよ」


「俺も。女子チームがどうなったか気になるしさ」


「別にチラッと見るくらいなら、アイツラも気にならないだろ」


「次の試合までまだ時間があるしな」


五人も立ち上がるのを見て、俺は内心ホッとしていた。

とりあえず、これで樹里への義理は果たせただろう。



バレーボールが第二体育館でやっているのに対し、バスケットの試合は少し離れた第一体育館で行われている。

本来のバスケの試合は10分×4試合だが、スポーツ大会ではそこまで時間を掛けられないという理由で10分×2試合となっている。


俺たちが第一体育館に着いた時は、既にウチのクラスの女子の試合は始まっていた。

相手はEクラスだ。

山原が時計を見ながら呟いた。


「試合が始まって5分ちょっと経ったんだな」


「そうだな。ウチが6点でA組が7点か。けっこう接戦だな」


俺はそう言いながら樹里の姿を目で追った。

樹里は機敏にコートの中を走り回りながら、味方からパスを受けやすい場所を探している。

さすが、帰宅部とは思えない動きの良さだ。

だが敵も既に樹里をマークしているため、簡単にはパスが通らない。


「相手も動きがイイ奴がいるな。バスケ部っぽいな」


俺はE組の背が高いショートカットの女子を見ながら言った。

彼女の手にボールが渡ると、ほぼドリブルシュートを決められてしまう。

ただ気になるのは、彼女の動きが荒っぽく感じられた点だ。

反則を取られるような事はしていないが、ラフプレーに慣れている気がする。


10分が経過して2分間のインターバルとなる。


「点数は12対11でウチが1点リードか。でも安心できる状況じゃないよな」


水野が身体を乗り出しながらそう言った。



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この続きは明日正午過ぎに公開予定です。

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