第2話:後任
待ち人が来たのは、夕方になってからのことだった。
ドアをノックする音が聞こえたので行ってみると、私の予想通り扉の前に立っていたのは一人の少女だった。
歳は十五歳程度といったところか。慣習に則っているのであれば、私より一歳年下だから推測は間違っていないはずだ。
「アリス・リュミノワール准尉、ただいま着任いたしました!」
短く切り揃えられた金髪に、青い目。何というか……人形みたいだ。
「初めまして、准尉。私はソニア・マクレール特務官。貴方の着任を歓迎するわ」
握手を交わすと、私は准尉を『家』の中へ招き入れた。
リビングとキッチン、トイレや風呂場といった所の紹介をしつつ、私達は目的の場所に辿り着く。
「ここが、貴方の部屋よ」
東に面した窓と、一つのベッド。中央には机と椅子があり、机の上には私が置いておいたものがある。換気のために開けておいた窓から風が入り、白いレースのカーテンがふわりとたなびいた。
「こんな所を使っていいのですか?」
「不満なの?」
「いえ、軍の訓練生用部屋とは違ってとてもきれいで……」
「まぁ、あの環境は控えめに言って最悪よね」
言いながら、私は机の上に置いていた新品の軍服を取ると准尉に手渡した。
「ひとまず、貴方が着る軍服です。サイズが合っているかどうかの確認も兼ねて、今着なさい」
「わかりました」
私はそそくさと外に出る。女同士と言えど、流石に相手の着替えを見る趣味はない。
着替え終わりました、と聞こえたので部屋の中に戻る。
「……とても似合っていますね。これほどこの軍服を着こなしていた特務官は今までにいないでしょう」
「お褒めに預かり、光栄です」
「その軍服は、貴方の立場を示すものです。今後、務めにより一層励むように」
「はい」
そう威勢よく返事をしたアリスだったが、不思議そうな顔をしてこちらに質問をしてきた。
「あの……」
「なんです?」
「どうして私達の軍服ってオレンジ色なんでしょうか」
なるほど、いい質問だ。
「私達『特務官』及び『補助特務官』は壁の上で任務をするでしょう?壁と言えば、美しい朝焼けが見れる場所。壁=朝焼け、と考える人が多いの。だから、見たらすぐわかるようにと初代特務官のギーゼ・カルナタスが朝焼けの色を採用した」
「……ちょっと口調変わってません?」
「気のせいよ」
さて。夕食の準備でも始めるとしよう。
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