第90話


 次の日。

 緊張の面持ちでパーティーハウスへと向かう俺を待っていたのは……。


「あらタイラー、おはよう」


 思っていたより様子の変わっていないエルザだった。

 ちょっとだけ面食らいながら中に入ると、そこにはアイリス達がそろい踏み。

 昨日いなかったウィドウもいて、ライザも含めて全員が顔の横に泡のエフェクトとかついてそうなくらい眠そうにしている。


「タイラー……」


「タイラーさん……」


 ウィドウとルルがじっとこっちを見ている。

 いつにも増して真剣な瞳だ。


 二人を制するように、後ろに座っているアイリスがこちらへ言葉を投げかけてくる。


「結論だけ言うと、タイラーは皆のタイラーってことになったから。だからこれからは私とウィドウとルル……三人とも大切にしなさいよ。誰か一人でも不幸にしたら、全員で愛想を尽かすから」


「お、おう……」


 どんな話し合いが行われたのかはわからないが……どうやらアイリスはきれいに話をまとめてくれたらしい。

 ウィドウ達を見てみるが、反対する様子もなく緊張した面持ちでこっちに視線を向けている。

 俺の都合の良い展開過ぎる気もするくらいなので、当然文句は何一つない。

 だがこれから彼女達と同じ時間を共有することになる俺としては、聞かずにはいられなかった。


「ウィドウ達は、それでいいのか?」


「正直に言えば……ちょっと複雑ではあるけど、でもアイリス達もタイラーも好きだから、だから大丈夫」


「皆と一緒にいたいですし……それに過ごしていくうちに、気にならなくなるはずです。おばあちゃんからもそう聞いてます」


 ルルから知ることになった衝撃の事実。

 師匠は重婚して、多夫一妻で幸せに暮らしたらしい。


 あの人は本当に常識に縛られないというか、なんというか……。

 もしかするとルル以外にも、師匠の孫や親族っているのかもしれない。


「愛されてるわね」


「あんまり茶化すなよ」


 エルザの軽口に、ウィドウ達が頬を赤らめる。

 後ろにいるアイリスの方も少し気恥ずかしそうにしていて、その向かいにいるライザだけがによによといやらしい笑みを浮かべていた。


「エルザさんがタイラーをうちに連れてきた時は、まさかこんなことになるとは思ってもみなかったよ」


「それは俺も同じだ」


 ガルの森の調査のために『収納袋』を持っている俺に声がかかって、そこから彼女達と親しくなって……まさか俺がアイリス達と付き合うことになるなんて。


 こうして俺はアイリス・ウィドウ・ルルの三人と付き合うことになった。

 付き合うことになった以上、彼女達とはこれまで以上に密接に関わることになるはずだ。

 深い関係になる以上、避けては通れないこともある。


 それは俺の――前世と今世についての話。

 その全てを明らかにして、それでも彼女達の気持ちが変わらなければ……その時は俺が責任を持って、彼女達を幸せにしてみせる。







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やりこんだゲーム世界にダンジョンマスターとして転生したら、攻略に来る勇者が弱すぎるんだが ~こっちの世界でも自重せずにやりこみまくったら、難攻不落のダンジョンと最強の魔物軍団が出来上がりました~


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