三連休とお出掛けとまったり②


 二日目。


「んんっ~」

 目が覚めて伸びをする。隣を見ると彼女はスーピーとまだ寝ていた。顔にかかった髪の毛を払いながら彼女の寝顔を眺めつつ、今日はどうしよっかなと考える。

 昨晩、彼女とどうしようか、なにしようかと話し合ったが結局決まらず。

 明日のことは明日考えようという結論になり今に至る。

「かわいい」

 起きて朝食でも用意しようとしたが、彼女のかわいい寝顔と起きるには後ろ髪を引かれるぬくもりに、もう少しこの場に留まることにした。

 再度、彼女の寝顔を眺めつつ、今日の日程をどうしようかと思考をめぐらせていく。

 私らも三連休だが、世の中も三連休。

 どこに行っても人、人、人がいる。どうしようか。

 気になっていたカフェに行くか、それとも彼女が行きたがっていた水族館にするか。もしくは美術館か博物館にするか。

「カフェは早めに行けばいい気もするな……」

 目覚まし時計を見ると時刻は八時半。あそこのカフェの開店時間はと携帯に手を伸ばして急いで調べると八時からだった。

 いけるな。

 気持ちよさそうに寝ている、ましてや朝が苦手な彼女を起こすのは忍びないが……。頬をつんつんとしつつ、彼女に優しく声をかける。

「おーい。いい感じの可愛いカフェにデートしにいきませんかー」

 おーい、とつんつんとしていると彼女から「うぅん……」という抗議の後、行くと返事があった。

「八時から開店でモーニングがやってます。今は八時半なのでマッハで支度すれば間に合いますけどどうします?」

「いくっ」

 ガバリと布団を剥がして起きてからの彼女の行動が早かった。

 次々に支度をして準備していく。時折、私にも早くと急かすくらいだ。

「よしっ、完了。そっちは?」

「こっちも準備万端。じゃあ行こっか」

「おー」

 カフェでモーニングをした後のことは決めていない。食べながら決めればいいだろう。

 地図アプリで確認しながらカフェに向かう。その道中にはかわいい雑貨屋さんや、パン屋さんがあり、カフェの帰り道に寄ろうということになった。食べながら決めるつもりが、行く道中で既に予定が決まっていく。

「あったあった。ここだ」

 ドアを開くと「お好きな席へどうぞ」と促され、彼女と窓際の席に座る。店内はアンティーク調の家具で統一されているようだった。座った椅子も固すぎず、けれど柔らかすぎず。ずっとここに座っていたくなるような感触。店内は緩く穏やかな時間が流れていた。

「ここ、いいね」

「うん」

 コソコソと話していれば、店員さんがやってきてお冷とメニューを持ってきてくれて、モーニングの説明を受ける。

「どれにしようか」

 私の広げたメニューに彼女と見合う。

「クロワッサンかフレンチトーストで迷う」

「じゃあ、私がクロワッサンにするから、フレンチトーストにして交換すればいいんじゃん」

「いいの?」

「いいよ。私も気になるし」

 彼女が嬉しそうに笑ってくれるだけで、心が温かくなる。

 店員さんを呼び、注文をして待つ。その間もお客さんは来ていて、いつの間にか店内は来た時より賑やかになっていた。

 店員さんやマスターと気軽に話している人たちを見ると常連さんが多いイメージだった。

「また来たいね」

 食べる前だが、居心地の良さに彼女に提案すると首を縦に振っていた。

 初めにコーヒーが運ばれて、その次にクロワッサン、そしてフレンチトーストのモーニングメニューが運ばれてきた。

 お好きなパン一種類とマカロニサラダ、ベーコンとスクランブルエッグ、ヨーグルトがついている。

「いただきます」

「いただきます」

 二つついているクロワッサンを一つ彼女に渡すと、彼女がフレンチトーストを一つくれた。

 まずはクロワッサンから。

「美味しい」

 さくさく、パリパリとしていて口の中にバターの風味が広がっていく。その次はフレンチトーストを一口。これまたいい塩梅の焼き加減とパンの食感を少し残した感じで、自分の好みだった。

「美味しいね」

 彼女も食べる手が止まらないようだ。

 お喋りをよそに、お互いに黙々と食べていく。マカロニサラダもどこか懐かしさを感じる作りで、ベーコンとスクランブルエッグはパンと合わせると、これまたいい感じで。

「ごちそうさまでした」

「ごちそうさまでした」

 そのあとは数十分程、コーヒーを飲みながらまったりとして、食後のクールダウンをはかり、カフェをあとにしたのだ。

「毎日は無理だけど月に一回は行きたいから、私の家に泊まった時に行こうよ」

 彼女の提案に即肯定した。他にも厚切りパンや普通サイズの食パンがあった。店員さんによると、時々、変わり種のパンもあるそうなのだ。

 レジで会計している時に教えてくれた。マスターもまた来てくださいと総合して全ての雰囲気が良くて、ほっこりとした。

 帰りのパン屋さんではおやつ用にパンを買い、雑貨屋さんを見て彼女の家に帰る。

 その頃には、お昼をたいぶ過ぎていた。

 朝も遅かったしで、少し早めのおやつということで、彼女が紅茶を入れてくれる。

 ツイストドーナツと枝豆とベーコンのパンが私で、彼女は洋梨のパイとトマトとチーズのフォカッチャを選んでいたが、どれも気になるということで、全部半分こにして食べることに。

「枝豆のやつ美味しい」

「フォカッチャも」

 結果、全部美味しかった。食べ終えて片付けをしてまったりすれば、外も暗くなり夕飯の時間が近づいてきていた。今日は彼女一人で夕飯を作ると言うので、その間にお風呂の支度をしてテレビを見て待つ。

 帰り道で入った雑貨屋さんもかわいいものがたくさんあって良かったと、今日一日を振り返りながら待っていると彼女に呼ばれる。

「できたよー」

 いそいそとキッチンまで取りに行く。

「うわっ、すごい」

 いい匂いがするなとは思っていた。けれど、覗きに行こうとする度に「来ないで」と止められていたのだ。

「今日は昨日のシチューの残りでドリアにしました」

 チーズがいい感じに焼けていて食欲をそそる。

 机に運び、彼女がサラダとスープを持ってきてくれた。

「すごいしおいしそう」

 いい匂いにお腹も触発されてしまう。

「でしょー。食べよたべよ」

 彼女が座ったところで「いただきます」と夕飯が始まる。

 チーズがとろとろで、口の中が火傷してしまったが、それよりも彼女が固唾を飲んで見守っている。

「どう?」

「おいしい」

「よかったぁ」

 荷が降りたのか彼女も食べ始めた。

 ご飯はガーリックライスにされていて、かぼちゃシチューとチーズといい感じだ。コンソメスープもさっぱりしていておいしい。

 語彙力がないけど、おいしいという事実だけはある。

「自分で作っておいてなんだけど、いい感じでおいしいわ」

 彼女も自画自賛していた。本当に、自画自賛していいくらいにおいしい。

 夕飯も食べ終え、片付けは私が。彼女が見ているドラマが終われば、そのあとは一緒にお風呂に入って同じ布団に。

「明日はどうしようかね」

「どうしようかねぇ。なにかしたい?」

「うーん」

 今日も彼女と明日の予定を考える。けれど今したい、ということがお互い思い浮かばなくて、話が今日のカフェやパン屋さん、雑貨屋さんの話に逸れてしまう。

「また、明日決めようよ」

「そうだね」

 彼女は眠たいようで、目がとろんと下がっていく。彼女を抱き寄せると「ふふっ」と笑いながら抱きしめてくれる力に、私も声にならない笑みをこぼす。

「おやすみなさい」

「おやすみ」


 今日の予定はなにも決めてなかった。けれど、素敵な一日になった。明日は三連休最終日。なにをしようか。

 楽しみに胸を踊らせながら、彼女の隣で目を瞑り明日を迎える。



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