三連休とお出掛けとまったり①


 一日目。


 土日祝日休みの企業であれば嬉しい三連休。

 それは彼女の会社も同じで、いつも通りどちらかの家で過ごす。いつもより長い間一緒にいれる分、私の中ではプチ同棲とよんでいる。内心はウキウキだ。

 同棲すればいいのかもしれないが、そこはまだ。お互いの生活リズムもある。他人と一緒に暮らすのが苦ではない人はいいが、誰かがいるとストレスになる人には、例え好きな人でも辛いものになる。

 彼女との会話で何度か出た同棲の話題も、こうして週末に泊まり合うことにより訓練というか練習みたいにやっていこうと結論づいての今なのだ。

 私は、家族でも一緒にいるのが苦痛だった。というより誰かが自分のテリトリーに入ってくるのが苦手なのだ。彼女にもそれは言ってある。けれど、今はそうとは思えないほど彼女と過ごす時間が心地いいものになっていた。

 けれど、同棲となると話は別。一緒に過ごせば過ごすほど見えてくるものがある。

 それでも、毎回ではないが、一緒に過ごせる時間が愛おしいと思えているのは事実だ。

 いつかは……。


「ねぇねぇ、今日の夕飯はどうする?」

 連休初日。今回は彼女の家にお泊まり。大きめのショッピングモールで買い物をしつつ、お昼ご飯を食べている。その最中に夕飯を聞かれたのだ。

 お昼ご飯は和食。好きな釜飯と小鉢、茶碗蒸し、味噌汁がついたランチを頼んで、私が山菜釜飯、彼女が鮭いくら親子釜飯にしたのだ。

 お互いに交換して食べたが、どっちも美味しかった。というより現在進行形で美味しく食べている。

「お昼が和食だから、夜は洋食とかかなぁ」

「じゃあ、かぼちゃシチューにする?」

 家にかぼちゃがあったしと彼女は続けて話す。

 かぼちゃシチュー……。

 食べたい。普通のシチューよりもかぼちゃが入ったシチューの方が好きだ。けど、料理が得意じゃない彼女の負担にはならないだろうか。

「煮物とかの方が良かった?」

「ううん。かぼちゃシチューがいい。一緒につくろ」

「うん。そのつもりだった」

 えへへ、と笑う彼女につられて私も笑う。

 彼女の家に泊まりに行く回数が増えていく回数が上がるごとに手料理が振る舞われる機会が増える。そのことに特別感を感じてしまう。

 私が美味しいと言ったものは覚えているし、なんなら食べたいと思った時に作ってくれてたりする時は、嬉しすぎて感動すら覚えるほどだ。我ながら大袈裟だなと思う。

 それほどまでに彼女が好きなのと、多少の依存のようなものがあると分かっている。だからこそ、彼女のみに依存しないよう他にも趣味や好きなものを見つけて多方面への依存先を作った。

「ここ出たら、買い出しに行こっか」

「おっけー」

 大型施設のいい所はスーパーも併用されているところもある。しかも広い。スーパーによっては置いてあるものも違うし、見るだけでも面白い。

「シチューの素はある?」

「んー、なかったかな。今、色んな種類出てるもんね。一緒に選ぼ」

「うん」

 買うものを二人でリストアップしていく。

 楽しいなぁ。

 釜飯を食べ終え会計を済ませたら、次の目的地に。スーパーのカゴをカートに乗せる。

「私がもつ」

 ふんすふんすと勢いよくカートを握りしめる姿に笑ってしまう。

「じゃあ、お願い」

「かしこまりー」

 かぼちゃ以外に玉ねぎ、にんじんもあると言っていた。お肉は鶏か豚か牛かで鶏肉に。

「あとはどうする?」

「デザートはさっき見たケーキ屋さんでケーキ買ってくのは?」

「採用」

「あとはどうしようか」

「チーズはある?」

「あるある」

「じゃあ、明日の朝ごはんはどうしようか」

「パンがいい。ケーキ屋さんの向かい側のパン屋さんで買いませんかね?」

「即採用」

「シチューの素はどうする?」

「たくさんあるよねぇ」

 二人でシチューの素が売っている前で立ち止まる。

「かぼちゃシチューだからこそ、かぼちゃシチューの素とかどう?」

「かぼちゃかぼちゃした感じが味わえるね。じゃあ採用」

 彼女に採用してもらい、かぼちゃシチューの素をカゴの中に。

「こんなものかな」

「かな。レジに行っちゃお」

 レジに行き、会計を済ます。そのあとはパン屋さんで菓子パンや惣菜パンではなく食パンとフランスパンを買う。

 その向かい側のケーキ屋さんで芋栗タルトとモンブランタルトを買い彼女の家に。


「ただいまー」

「おかえり。ただいまー」

「おかえり」

 お決まりのやり取りをして、手洗いうがいを済ませたあと買ったものを彼女が冷蔵庫に入れていく。


「おやつにクッキー食べよ」

「お茶入れる」

「じゃあ、クッキーをお皿にお洒落に並べとく」

「任せた」

「りょーかい」

 彼女がお皿にクッキーを並べてリビングの机まで持っていく。

 紅茶もそのあとすぐに入れ終え、持っていく。

 ケーキ屋さんで一緒に買ったクッキー。サクサクしているが、口の中でホロホロと溶けていく。二人で美味しいね、美味しいねと食べていたらあっという間に無くなってしまった。


「この勢いでシチューも作っちゃう?」

「そうしようか」

 このまままったりするのもいいが、いざと言う時にすぐに動ける自信が無い。彼女もそうだったのだろう。彼女の提案にのり、二人でシチューを作ろうと立ち上がる。

 さっきしまった材料を冷蔵庫から出す。かぼちゃに下処理をしてレンジに入れ、その間玉ねぎ、人参を切っていく。

 チンっ。

 レンジに呼ばれ彼女がかぼちゃを取り出す。いい感じに柔らかくて切りやすくなっていた。一口より大きめなサイズに切っておく。

 玉ねぎ、人参、鶏肉を炒めて煮ていく。かぼちゃも入れてからかぼちゃシチューの素を入れてくつくつと煮込めば完成だ。

 フランスパンも少し厚めに切っておく。食べる前にトースターで焼けばいいだろう。

「サラダも出来ましたっと」

 レタスとトマトときゅうりのシンプルなサラダ。最後にクルトンを散らせば一気にお洒落になる、と思う。

「あとは食べるだけだね」

「うん。じゃあなにか観る? それとも食べちゃう?」

「うーん。一本、映画見たらいい感じだから見てから食べる」

 再度、彼女の提案にのり、二人で映画を見る。一本見終わる頃には外も暗くなっていて、時計を見れば夕飯にいい時間帯となっていた。

 彼女と共に夕飯の支度をし机に並べていく。サラダにクルトンをふりかけ、シーザードレッシングでシーザーサラダに。

 フランスパンをトースターで焼いて、出来る頃にシチューをお皿に盛れば完成だ。

「待ちに待ったシチュー」

「食べよっか」

「ねっ」

「「いただきます」」

 かぼちゃシチューを一口。野菜の甘みとかぼちゃの甘みが出ていて、かぼちゃシチューの素にしたおかげか、かぼちゃ感が増していて美味しい。

「おいしい」

「うん。おいしい」

 かぼちゃのホクホク感と鶏肉のジューシーさもあり、食がすすむ。フランスパンにシチューを染み込ませ口に含むと、パンの焼けた香ばしさとシチューの甘さが相まって口の中に幸せが広がる。

 口直しにサラダを食べつつ、シチューを食べ終える。

「「ごちそうさまでした」」

 二人でわちゃわちゃしつつ片付けてお風呂に入って、あとは寝るまでの準備を終えたと同時に最後のイベントだ。

「ケーキ、食べよ」

「はーい」

 私が芋栗タルトで彼女はモンブランタルト。お互いに一口ずつ交換をする。

「どっちも美味しい」

「今日は全部美味しくて当たりだったね」

「うん。口の中が幸せだった」

「ほんと、ほんと。それそれ」

 芋栗タルトもモンブランタルトもどちらも甘すぎず、素材の甘さとタルトのさくさくと少ししんなりした感じがいい塩梅で美味しかった。

「今日はたくさん食べたね」

「ねっ。明日はどうしようか」

「どうしようかねぇ」

 彼女と明日について、どうしようかと話しながら楽しかった一日目の夜は更けていく。




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