第6話 水中ダンジョン攻略


 賢者が言いたいこと、つまり、パソコンを作る技術と絵画を描く技は全然違う物ってことなんだろう。

 パソコンを作る技術があれば、そりゃあいくらでも作れる。工業生産品だからだ。でも、満足の行く名絵画を量産するのは無理。それは工芸とか芸術の範疇だからだ。


 賢者は、聖剣タップファーカイトの斬る機能を裏打ちしているものは、工業的技術と見ている。芸術じゃない、と。

 まあ、私もどっちかと聞かれれば、芸術品に限りなく近いものだとしても工業で生産される範疇の品だと思う。そこは同意だ。


 となると、私が記憶を取り戻せていない中で、聖剣タップファーカイトの類似品というか、同じ技術で作られたなにかを手に入れるってのは、ものすごくいいことだと思える。


「ねぇ、武闘家。

 アンタ、さっきの戦いで脱いでいたよね。そんなに脱ぎたいなら、泉の底を泳ぐのも大丈夫よね?」

「……ちょっと待て。

 泳ぐこと自体は大丈夫だし、泳ぐときに脱ぐのも必然だからいい。だけど、その水が問題なん……」

「やったー!

 さすがは武闘家。明日の朝、明るくなったらすぐに潜ってね。早く見つかればまた昼間は歩けばいいし、時間が掛るようだったらここの魔法陣からまた跳べばいいもんね」

 ふん、武闘家の不満は聞こえないフリに限る!


「だから、待てって。散骨されていて、骨がごろごろ転がっているところで泳ぐのは嫌だって!

 まして、潜るとなったら……」

「骨が怖いの?

 人間の骨じゃないんだよ?

 ケンタ◯キー・フライドチキンで、出た骨が転がっていたって怖くはないでしょ」

「そういう問題じゃねぇっ!

 そういう考えだから勇者、オマエはアルミラージが食えるんだ」

「古い話を蒸し返さないでよっ!

 前世のことなんか、まだ思い出せていないんだからねっ」

 私、ムキになって武闘家に言い返した。


 したら、ケイディが「まあまあ」って、間に割り込んできた。

「勇者の考えはわからないでもないが、ここで散骨した皆様がたは、得体のしれない異世界人がそこで泳いだら怒り狂うぞ。それに、怒り狂っている群衆の中でなにかを引き上げられたとしても、持って帰れるとは思えないぞ」

 ……ええい、メンドクセ!!

 ケイディの言っていることは正しい。正しいからこそ、メンドクセェ。


 ケイディは続ける。

「ここは、元魔王に一肌脱いでもらうしかない。泉の周囲の魔族たちに、我々が泉を穢すものではないということをわかってもらわねばならないからな」

 そか、なるほど。元魔王に丸投げすればいいのね。


「ちょっと待て」

「なにを慌てているのよ、元魔王。そのセリフはもう聞き飽きた」

「さっきソレを言ったのは、武闘家だろう?」

「どっちが言おうが、聞いているのは私なのよ」

 ……ふん、どうだ!

 言い放ってやったわ。


「水中ダンジョン攻略には、たくさんの準備が必要だ。簡単に考えていると、すぐに死ぬぞ。そもそも泉の深さ、わかっているのか?」

「私が知っているわけないでしょ」

「2mだって大変だが、20mあったら武闘家といえど簡単に死ぬぞ」

「じゃあ、どうしろっていうのよ」

「短絡的に潜ろうなんて考えるな。泳げる人員がいるというのと、水中ダンジョン攻略は別に考えろ。アクアラングの装備は無いんだぞ。あったって、訓練なしのぶっつけ本番は死ぬ」

 ……そうなんだ。


「昔話から考えれば、それは泉の最深部にあるはずだ。まずは、ロープと重りで泉の深さを調べよう。そうしながら、地元民からの聞き取りもして理解も求めるんだ」

 ……なるほど。



あとがき

「どっちが言おうが、聞いているのは私なのよ」ww

ヒドスwww

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