第24話 魔王城で一泊1


 とりあえず魔王城での一泊、私、それはもう期待でわくわくしていた。

 体感時間でだけど、1時間ほど登ったら、魔王城の正門にたどり着いた。なんていうか、デカい。当然なんだけど、それはもう、あまりに当然なんだけど、出入りする魔族の大きさがね、スライムなら小さいけど、上将ワイバーン『謀略のアウレール』なんかだとそりゃあもう、デカいから。

 と言いながら、『謀略のアウレール』は空を飛べるから、門なんか通らないのかもしれないけれど。


 私、明日、出発のときに元魔王の辺見くんの封印を解く約束をした。

 これは、魔族たちもみんな同意した。たった一晩でも魔王城に2人の魔王がいるということは避けたいって、誰もが思ったんだ。当然だよね。不慮の事態で諍いが起きるとか、絶対避けなきゃだもん。

 これってほら、魔王同士の問題じゃないらしいんだ。魔王同士が諍うと得をする存在がある以上、付け込まれないようにする必要がある、と。


 だから、正門を通る辺見くんは、表向き単なる男子に過ぎない。ま、体内に魔素を溜め込んでいるから、攻撃も受け付けないだろうけど。

 で、正門を通ると、岩に囲まれた大きな広場。

 武闘家の宇尾くんが「こっわ」とかつぶやいていたけど、意味を聞いたら私も怖いと思ったよ。

 敵が攻めてきたら、門を開けてこの広場に誘い込み、そのあとこの広場を囲った岩の影の3方から集中攻撃するんだって。でもって、攻めに行くときは、この広場に整列して一気に出ていくらしい。


 そっか。

 前世で正面から魔王城を攻めていたら、ここで死んでいたのか。まぁ、忍び込んで正解だったということだね。いくら私が聖剣タップファーカイトを振り回したとしても、3方からの魔法と物理攻撃の雨を受けたら無事で済むとは思えないもんね。


 で、その広場を通り過ぎるとまた門。

 石造りの壁が最初の門より高くそびえ立っている。怖いよなぁ。こんなの、どうやったって越えられないよ。

 で、その門も通り過ぎて、かくかくと曲がった道を歩き続けるとついに魔王城が姿を表した。


 うん、灰色だ。

 曇り空の灰色の下、すべてが灰色の石に覆い尽くされている。そして、四角を基調にした城に尖塔がたくさんあって……。まぁ、あんまりいい趣味じゃない。魔王の自宅だよね、ここ。なのに、ひたすらにごつごつしていて安らぎ感なんか皆無。なにより冬場はとても寒そうだ。


「こちらへ」

 案内役の魔族にしたがって大広間を抜け、私たちは螺旋階段の一番下に案内された。

「この上が、この城でもっとも高い部屋になります」

「……階段で登るの?」

「階段以外……、と申しますと……。

 魔法で登るならご随意になさってくださいませ」

 ……そりゃあ、自分で言いだしたんだから登りますよ。

 今さらだけど、魔王城にエレベータはないんだね。くっそ、誤算だったわ。


「魔王はどこで寝ているの?

 大きいいびき、かいたりする?」

「魔王様は、王宮にてお休みになられます」

「えっ、王宮ってなに?」

「魔王様の絢爛豪華な生活の場でございます」

 はっ?

 どういうこと?


「魔王城は戦いのための施設にございますれば、そこで生活するは至難。衛兵詰所のようなところで、魔王様を寝させるわけには行きませぬ。ましてや、政庁機能は膨大なものにて、城内ですべてを行うはままならず。非常時用の最小限のバックアップ施設があるだけでございます。

 では、ご要望のとおりにいたしましたので、私めはこれにて……」

「待て待て待て待てぇ!」

「なにか?」

 くっ、くそぉっ!!



あとがき

JKのくせに、くそくそ言うんじゃありません!!

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