第23話 作戦了承
魔王と『謀略のアウレール』に私は答えた。
「そちらの作戦、『西にあるザフロスの渓谷攻略のため、魔王軍は南回りで、勇者パーティーと前魔王は北回りで進撃する』っての、いいよ。
だけどさ、どっちが西でどっちが東か教えて。太陽が出ていないからわからないんだ。それから、地図もちょうだい。『ここから西、飛んで3日』なんて、行き先がぜんぜんわからない」
私がそう言い放つと、『謀略のアウレール』はまたまた脱力しちゃった顔になった。
いいのよ、アウレール。アンタはワイバーンだけど、そうやって表情筋を鍛えなさいよ。そのうちリアクション芸人としての地位を確立できるから。
「あのな、勇者。お前はすごく気の利いたことを言ったとドヤ顔しているが、前の魔王様が同行するのだぞ。地の利はすべて掴んでおられるし、下手な地図など必要ないだろう」
「あ、そっか」
思わずそう答えると、『謀略のアウレール』は長い首をやれやれと振った。
私、思わずムキになって、アウレールを問い詰めた。
「アウレール、アンタは空飛ぶからわからないんでしょうけど、歩くしかない私たちは川も越えられないし、山も迂回しないといけないのよ。魔王になにかあったら、それだけで迷子になっちゃうじゃん!
少しはそういう事も考えなさいよっ!」
なのに、『謀略のアウレール』はまた長い首をやれやれと振った。うーん、あかべこみたいだね、アンタ。首ゆらゆらさせてさ。あのおもちゃ、ワイバーンで作ってもいいかもしれない。
「そんなこと、前の魔王様の魔法を戻せば、問題はすべて解決だ。その魔力は絶大ゆえに、川などその水流を止めてくれようぞ」
「川を魔法でせき止めるなら、パーティーの人間の方を移動させる方が魔力が少なくて済みそうだね」
私の指摘に、アウレールは口元から炎をぽっぽと噴いた。
「ものの例えだろうが、バカもん!」
「あ、アウレール、私のことをバカと言った!」
私が竹の物差し振り回しながらそう言い返したら、アウレール、首をがっくりと落とした。
「……もう勘弁してください。どうか、前の魔王様の魔法を戻し、ご出発をしていただけないでしょうか?」
「言われなくたって出かけるけど、その前に一晩、城で休ませなさいよ」
私、記憶が戻っていないからわからないけれど、魔王城よ、魔王城。
きっと、豪華なシャンデリアが下がっていて、ごちそうがあって、金銀パールの財宝がざっくざっくあって、有能でかっこいい執事がいるはずなのよ。なんか、おみやげだってもらいたいな。
なんか、賢者と武闘家が物言いたげだったけど、私、そんなの気にしないわ。
「しかしな、勇者……」
とアウレールが言いかけたところで現魔王が口を開いた。
「よいではないか。一泊のことだ。泊めてやろうではないか」
「最上階の部屋がいいなー」
「よかろう」
私のリクエストに、魔王は大きく頷いた。
さすが、私と同じ顔しているだけのことはある。器が大きいよね。上将ワイバーン『謀略のアウレール』なんて言ったって、器が小さきゃ台無しよ。
タワーマンションだって、最上階ってだけで偉いって聞いたわ。きっと、とても大切に扱いわれるはず。
私、なんでドレスを持ってこなかったんだろう?
そりゃあさ、ドレスなんか持ってないけど、ケイディに用意させることぐらいはできたんじゃないかな?
ああ、もったいないことしたなぁ。
あとがき
厚かましいにもほどがあるww
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