第10話 因果応報?
でもさ、私が許さないと魔法が使えないなら、元魔王はなんでそう言わないのよ。
「……魔法が必要なら、そう言えばいいのにねぇ」
私がつぶやいたら、賢者の結城先生、すごく含んだ目で私を見た。
「言ったら絶対に魔法を使わせてもらえないと、そう思ったんでしょ」
「なんで?」
「勇者、アンタね、自分が魔王に対してした仕打ち、覚えてないの?」
「あ、……モヒカンにするつもりだった」
「だからでしょ。さっきだって、ここが魔界じゃなかったら意識しないと斬れないから、なんのかんのとイジメてたでしょ」
……これはヤバい。
どうしよう。
魔界で魔王とその配下に恨まれているって、これは絶対にヤバい。
なのに、賢者ってば私の焦りに気がつかない体で説明を続ける。
「ほら、あのワイバーン、『魔王→魔王の今の世界の軍→勇者→勇者パーティー』との順位があると思っていたのよ。だから、真意を証せとか言っていたの。だけど実際は、『勇者→勇者パーティー→魔王の今の世界の軍→魔法を使えない魔王』か、『魔王の今の世界の軍→勇者→勇者パーティー→魔法を使えない魔王』だった。
首筋の古傷すら治癒できず、順位が最下位だなんてこと、王様本人からは言えないじゃん。それでも、元いた世界を救おうと頑張っているのよ」
……改めてそう言われると、元魔王、可哀想だなぁ。それに、やたらと健気だ。
なんか、私が極悪非道な感じだよね。これは、なんかフォローしないとマズイ。
……なのにワイバーンめ、いきなり滝のように涙を流しやがって。
「なんともおいたわしい。
他の者たちがさまざまに装備と武器を持つ中、我が王だけがひたすらに薄着なのはそこまで虐げられていたということなのですね。なんとも血も涙もない所業。
我が王よ、お寒くはございませぬか?」
……あ、いや、それは本人の選択だから。
「仕方ないのだ。余がいた世界の軍は、ボタン一つを押すだけで星一つをまるまる火の海にする勢力ぞ。そして、互いにその力を持っていれば争いが起きぬという恐るべき世界。
我が星を降らす魔法の秘術をもってすら、この大地全土に星を降らすことはかなわぬし、すべての生命を死滅させる愚行は冒せぬゆえに最初からそこまで術を深めようとも思わなかった。これは、余の甘さであろうか……。
その報いが、ここで魔素を貯めていくらかの防御はできようとも、聖剣タップファーカイトによって魔法そのものは未だに封じられている、この今の姿よ」
……ええい、ワイバーンめ、涙目で恨みがましく私を見るんじゃねーよっ!
「それでも……、勇者をここまで引っ張り出せれば、進出してきた魔界の魔物と戦ってくれることも期待できよう。
余はもはや魔法も使えぬ身、あとは皆のための盾として死ねれば本望なのだ」
これはヤバい、マジでヤバイ。
私が好戦的で鬼畜の極みの人みたいになってる。本当は、こんなにも優しくて、みんなに愛されているのにぃー。
私、おもわず元魔王と上将ワイバーン『謀略のアウレール』の会話に割り込んでいた。
「あのー、元魔王さん?
そんな悪意に取らないで欲しいなー。
魔法を戻したらその場で私が殺されちゃうからさ、だから、仕方なかったんだよね。ほら、あっちは今の私たちの世界だったから、元魔王に破壊されるわけにはいかなかったし……」
ぎろ。
やめてよ、『謀略のアウレール』さん。そんな眼で私を睨まないでよ。
あとがき
さてさて、因果は巡るwwwwww
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます