第3話 荷解き
「魔王がそう言うなら、そうなのだろう。
今は材料が少なすぎて、結論を出すには至りようがない。それより今は、輸送用ロボットを開梱し、この場を離れよう」
ケイディの提案はもっともなものだったので、全員で頷いた。
ま、言外に「魔王の言っていることは信用できない」って言っているのとおんなじだったけど。
さっきの落石が攻撃されたのだとしたら、ここに来た直後だったのだから、私たちは魔族の警戒の網にかかったことになる。つまり、再び襲われる可能性は極めて高い。しかも、そのときには大軍勢で襲ってくるかもしれない。
魔王城の至近だけあって、さすがの体制だよね。
ケイディと賢者が相談し、役割分担を決める。相談と言っても、1分もかからなかった。
私と魔王が警戒役。理由は簡単で、再び落石があった場合、現時点では聖剣タップファーカイト以外に対応手段がないから。それから、魔族が襲ってきた場合、やはり魔王が対応するのがよろかろうということだ。もしかしたら、話し合いだけで問題が解決できるかもしれないからね。
ケイディの指示で、戦士と武闘家は防磁ケースから物資を取り出す。
旅の必需品はともかく、私以外のみんなの武器と防具の鉄パーツだから、急がないとなんだよ。ケイディの銃だって、ここに来てすぐに専用ケースから取り出されたけど、替えの弾倉とかは防磁ケースの中なんだ。
それに、取り出した荷物は犬型ロボットの背に乗せないとだしね。
賢者は周囲の観察。これは、私と魔王が警戒のために周りを見るのとは違う。これからどちらの方向に向けて歩きだすのか、前世の記憶と照らし合わせて決めなければならない。でもって、これは魔王城のかつての主、魔王には任せられない。
だって、私たちは前世の魔王の警戒を出し抜いて魔王城に忍び込んだんだ。そうでなければ、たかだか4人のパーティーで城塞の中の魔王に挑んで勝てるはずがない。城ってのは、軍勢を率いて落とすもんなんだから。
だから、魔王の防御の裏をかく方法を魔王本人に聞いても意味がないんだよ。
それに、持ってきた物資には限りがある。食料は食いつながなければならないし、水も汲まなくてはならない。となると、ルート選定は前世の記憶がある賢者に一任するしかないんだ。
で、みんながそれぞれの仕事に取り掛かったので、私も四方八方と上空をきょろきょろしながら、魔王の辺見くんに質問する。
「魔族って、ヴィーガンなの?」
「違うが、なぜだ?」
「下級魔族でも言葉を話すとか言っていたじゃん。それに、組織の捨て石にすることはあっても食わないって」
「そのとおりだが、だからなんでヴィーガンという言葉が出てくるのだ?」
なんか、もどかしいな。
周囲の見張りをしながら話すと、辺見くんの顔を見ずに話すことになる。背中合わせでの話って、なんか難しいね。
「だからさ、アルミラージもスライムも食べないんでしょ?
としたら、食べる肉がないじゃん。結果的にヴィーガンなんでしょ?」
え、なに?
背中越しに聞こえる、この盛大なため息は………。いつものように、いやな顔している?
「ここの世界には魔族ではい生き物もいるし、それを狩って食うこともある。当たり前ではないか」
「えっ、魔界にいる生き物はすべて魔族じゃないの?」
「……ここにいたら、プランクトンまで魔族か?」
質問に質問で返されて、私はあわあわした。
あとがき
思い込みって怖いw
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