第26話 戦士の戦闘力


 あとから聞いた話しよ。

 私がようやく聖剣タップファーカイトの姿を確認して喜んでいた頃、橙香は長巻を振り回していたらしい。


 マチェーテにチタンの柄をつけた長い武器で、その形状から薙刀というより長巻だってことになったらしいけど、私にはその違いがよくわからない。ただ、あとで写真で見せてもらってだけど、それを見る限りでは槍の柄に刀が付いているのが薙刀っぽい。で、刀の柄をうんと伸ばしたのが長巻っぽい。

 でさ、橙香の武器のチタンの柄は長くてどこも持てるようになっていて、やっぱり棒じゃなくて柄なんだよ。だから、その感じからすると薙刀のイメージはないな。

 

 で……。

 橙香の前世の記憶、かなりまだらに戻ってきているみたい。あとで顔を合わして話を聞いたときに、「まだらボケかな?」って口に出したら無茶苦茶怒られたけど。

 ともかく、身体が覚えている記憶ってのもあるみたいで、チタンの柄といえども女の子には重そうな武器を平気でぶんぶん振り回して見せたって。


 ケイディは私の聖剣タップファーカイトの分析のために私のところにいたんだけど、当然のように部下を通じて橙香の状況も把握していた。で、軍の徒手格闘の教官と戦わせたと。


 バトルものの「血湧き肉躍る戦闘」っての、私も期待したわよ。

 だけど、結果はあまりに簡単に出てしまって、軍隊が戦いに使う主役の武器はやっぱり銃なんだってことになったらしい。そのくらい、橙香は圧倒的だった、と。


 決して軍の徒手格闘の教官が弱いわけがない。でもね、まずは持っている武器にあまりに差があった、と。その軍の徒手格闘の教官は、最初は銃剣の付いた小銃で、次はナイフで、最後はマチェーテで橙香と戦おうとした。

 でも、どれも橙香の長巻の半分しか長さがない。つまり、間合いが違いすぎて、近寄ることもできなかったそうな。


 まず銃剣の付いた小銃は、そもそもの武器の長さの違いと、さらにその使い方でどうにもならなかったらしい。銃剣の付いた小銃って、ろくに振り回せないらしいんだ。なぜなら、昔と違って小銃自体が鉄以外のところがプラスチックだから。

 強度がどうにも足らないらしくて、橙香の長大な長巻なんて、受け止めただけでばらばらになっちゃう。


 それでも、一気に間を詰めて近いところに入り込めればって、今度は逆に短いナイフを持ったらしいんだけど、これはもっとダメだったって。

 ほら、橙香、「強度が高く、しなやかな革を。持ち歩くための装備は自作するから」とか言っていたじゃん。その装備とやらが、おそろしくタチが悪かったらしい。

 革の肩紐で背に掛けていたその長巻が、柄ではなくてその革紐で振り回されたりもしたって。そうなると結果として橙香を中心とした半径5mの円ができて、さすがに距離がありすぎて、いわゆるナイフの小回りさを活かして懐に入るってのがまったくできなかったらしいんだ。


 最後はマチェーテだけど、これはもう消化試合。

 銃剣の付いた小銃よりは強度があるけど、まっちょな軍の徒手格闘の教官でも橙香の持つ長巻の威力にはどうにも敵わない。振り下ろされるならまだしも、膝より下に向けて振られると、持っているマチェーテで受け止めることすらできなかったんだって。

 あとで「これは斬馬刀でもあるからね」って笑う橙香が怖かったわ。聞いたこともないわ、そんな武器。




あとがき

やっぱり強いな、戦士。

武闘家はどうなんだろ……

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