第27話 武闘家の戦闘力


 これも、あとから聞いた話よ。

 宇尾くんは宇尾くんで、その力をケイディに見せつけていたらしい。


 グロッグの17って言われても良くはわからないけど……、そういや、前にケイディが私に渡そうとしたのがグロッグの42ってヤツだった。

 こういうのって、勘弁して欲しい。マニアじゃなきゃ、数字だけで特徴を覚えるなんてできないよね。なんでさ、「弾いっぱい入る」とか、「細身で軽い」とかにしないんだろ?

 そうなら、JKの私だってどういうものかわかるのに。

 もしかしたら、わかりやすい商品系列にしたら負けだと思っているのかな?


 で、宇尾くんはその17に、いろいろとオプションつけて、さらにいろいろと他の武器も持って重武装にしたらしいんだけど、あまり重くしたら素早さが落ちるからって、なんか防具的なプロテクターとかの方はかなり外しちゃったらしい。

 大丈夫なのかな?

 私、痛いのキライなんだけど、武闘家とかになると、痛いの好きなのかな?


 まぁ、武闘家は記憶が戻っているらしいんで、「状況に合わせた適切な判断」って奴らしいけど、よくはわからない。

 でもさ、防具がないと周囲に見せびらかせるよね、筋肉。

 武闘家のことだから、絶対そのあたりの不純な動機があるに違いない。

 

 で、当然ケイディは、宇尾くんを軍の潜入戦とか後方撹乱の教官と戦わせた。結果、かなりえげつないことになったらしい。

 つまりさ、宇尾くんの全身はハリネズミだった、と。


 まずは、対面で「始め」ってことになったらしいんだけど、宇尾くんは開始早々にその教官の直前までいきなり走り寄って、模擬戦用のゴム製の小さなナイフを同時に数本投げた、と。

 なるほど、汚い。

 これでいいなら、私だって最強になれたのに……。

 で、徒手格闘を最初っから全然やる気ない武闘家って、いいんだろうか?


 で、これには教官も怒ったと。

 そりゃそうだ。

 宇尾くんは武闘家で、その強さの確認のために呼ばれたわけで、格闘のために呼ばれたと思っているもんね。


「もう、どんな手も食わないぞ。覚悟しろ」

 と、言い切ったらしい。そもそもケイディが呼んだのが単なる徒手格闘の教官ではなく、潜入戦とか後方撹乱の教官だったのは武闘家がそういうもので、それに対抗できるだけのスキルがあると見做していたかららしい。

 だから、こうなっちゃうと、武闘家の勝ち目はないはずだった。


 なのに……。

 第二戦、宇尾くんはいきなり戦う相手の教官に背を向けて逃げた。

 反射的に追おうとしたところに、手榴弾2つを極細ワイヤーで結んだものを投げた。こういうの、ボーラっていうらしい。それは教官の足にくるくると巻き付き……。ピンは抜いていないから爆発しなかったけど、勝利判定は宇尾くんに。


 第三戦はルール変更して、ようやく宇尾くんもまともに戦うことになった。

「なぜ脱ぐ?」

「なぜ、ショーを始める!?」

 そんな疑問で頭の中がいっぱいになった教官は、それでも構わず冷徹な攻撃を仕掛け、宇尾くんの胸筋の前に敗れ去った。


 もう記憶の戻っていない私、話を聞かされながらもワケがわからなくて、頭の中、「?」でいっぱいになっていた。



あとがき

記憶の戻っていない勇者の説明はしどろもどろw

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