第25話 聖剣タップファーカイトの謎 4
まぁ、いいわ。
考えてみれば、冒険の旅で雷系の魔法を持つ魔物って定番よね。記憶はないけれど、前世の私、雷系の魔法もけっこう受けていたはずだし、で、それでしょっちゅう死んでいたら魔王なんか倒せなかったはず。
だから、きっと大丈夫。
私、ふたたび聖剣タップファーカイト伸ばして、コイルの上を薙ぎ払う。
って、聖剣タップファーカイトが見えた。
今まで私にも見えていなかったのに、見えた。
切っ先の鋭い、両刃の剣。たしかに、形としてはツヴァイヘンダーだ。でも、リカッソの部分は、緑と赤の2つの帯が光っている。
「今の、見えたか?」
ケイディの声が響く。
「もちろん、見えている!」
私もそう叫び返す。
威力があるのはわかっていても、見えないものの実態を想像するのは張り合いがない。だけど、見えたというのはものすごい実感があるな。私は、これを振り回しているんだ。
聖剣タップファーカイトが見えているなら、竹の物差しを許してやってもいいなぁ。
「悪いが、また出したり引っ込めたりしてみてくれ。それから、物差しより長く伸ばしてみてくれ」
「はーい」
私が素直に返事したのは、当然のことだけど、自分が一番聖剣タップファーカイトを見たかったからだ。
特等席は私のもん。
で……。
聖剣タップファーカイトの刃物部分はいいとして、このリカッソの部分の光っている緑と赤の2つの帯。
これが、なんらかの能力付与に関わる仕組みってことは予想がつく。
これを変えられたら、きっと私の人格も変わる。
だってさ、前世で魔王と戦って、そのままってことだよね。つまり、戦闘特化型になっているってことで、「退かぬ!媚びぬ!省みぬ!」が付いていたりしたら、それはもう、ねぇ……。
だって、本当の私は、内気消極的人見知り、純情可憐で、退くわ媚びるわ省みるわって人のはずだもん。
で、この能力付与機能、あるかもなーって思っていたけど、見えなかったからどうしようもなかった。でも今は見えるから、外したり付け替えたりできるかもしれない。問題は、「どうやって」ってのがまったくわからないんだけど。
私、リカッソの部分は刃がないらしいから、まずは赤い帯の部分を握ってみた。ほら、「退かぬ!媚びぬ!省みぬ!」を色で表したら、緑ってこたないよね。やっぱり赤だと思うんだ。
だから、その赤が外せるかどうかと思って握ってみたんだ。
したら……。
触覚上は、竹の物差しなんだけど、握ると光っている赤い帯が動くんだよ。緑の部分と同時に。これ、握り込んでずらすように動かすと、いろいろな色の光の帯がでてきて、合わせていろいろな能力付与がされるんじゃないかなあ?
「ちょっと待て、勇者!」
いきなりスピーカーからでかい声出さないで欲しいわ、ケイディ。
私、驚いて、びくってしちゃったじゃない。
「今の勇者の動き、こちらでも見えている。だが、その光の帯を動かすと、聖剣タップファーカイト自体がどう変わるか想像もつかない。とりあえずは、現状維持しておいた方が良いのではないか?
でないと、旅にすら出でられなくなるおそれがある」
あ、なるほど。
そういう考え方もあるか……。こういうアイテムは、ときどきヤバいくらい微妙だもんね。
あとがき
つまり、マテリア「退かぬ!媚びぬ!省みぬ!」ww
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