第21話 魔王の装備
「だが、ツヴァイヘンダーほど長大な剣となると、ここで焼入れまでできるかな?
それに、記憶の戻っていない勇者が担いで歩けるものなのか?
日本刀の倍は重さがあるぞ」
ケイディがそう聞くから、私、びしっと答えてやった。
「あんなもん、軽い。1度だって重いと思ったことはない」
「……勇者の記憶、戻っていないよな?」
「戻っていないけど大丈夫っ」
ふんっ。言い放ってやったわ。竹の物差しなんか担いで、冒険の旅になんか出られないもんね。
「ちょっと待っていろ」
なによっ!?
なにを待つっていうの?
ケイディが目配せしたら、部下の男がなんか部屋のあちこちを物色してライフル銃を持ってきた。ってか、こういうの、ライフル銃ってやつでいいんだよね?
うんと長いし、あちこちに木の部品がついている。そして、ぐにゃんと曲がった箱が飛び出ている。
ケイディはその箱を引っこ抜いて、なんか部品をずらして中を確認して、それから私にそれを渡した。
「これが、ツヴァイヘンダーとほぼ同じ重さだ。振り回してみろ。ただ、床には叩きつけるなよ」
「こんなの、軽い軽い」
私、そう言ってそのライフル銃を頭の上まで振り上げて、視界の隅でケイディが無茶苦茶焦った顔になったのを無視してぶんって振り下ろした。
がっちゃん!!
凄い音がして、ライフル銃の部品が飛び散った。
あ、床に当たっちゃった。
だって、重いんだもん。止めようとしても止まらなかった。女の子の私に、こんな重いものを振らせようとするだなんて、ケイディったらヒドい。
ほら、床のコンクリに穴が開いちゃったじゃないっ。
「床には当てるなと言っただろうっ!」
ケイディの目が三角形になった。
なによ、そんなに怒らなくてもいいじゃない。
「止まると思ったけど、止まらなかったのよ」
「横に振れば良かっただろうっ!」
「先に言ってよ。あと出しで人を非難するなんて酷いっ!」
「言う暇もなかっただろうっ!」
やぁねぇ。かりかりしている男は。
「勇者、お前の武器は物差しに柄をつけたものに決定だ。もう、このライフルを破壊したんだから、お前の分の予算はもうない」
「ちょっと待ってよ。じゃあ、ツヴァイヘンダーはなしなの!?」
「逆に聞くが、ここまでしでかしておいて、なんであると思ったんだ?」
「質問に質問で返さないでよねっ!」
「物差しだと、敵も斬れるが長さも測れるれぞ?
もう決定事項だ。お前の武器は竹の物差しだ。それで聖剣タップファーカイトを使え」
それはない。
それはなさすぎるよ、ケイディ。
「……泣くぞ。マジで泣いてやるからな」
「ああ、好きほど泣けばいい。決定は変わらん」
「……くそぅ」
私、がっかりして、また涙が出てきた。なのに、ここにいる全員が私の涙を無視するってなに!?
女の子が泣いているのよ。ヒドくない?
「とりあえず、コレはもういい。ところで魔王、君も武器を持つか?」
……コレってもしかして私のこと?
どういうこと?
コレじゃないからね、私っ!
「魔界に行けば、魔法が使い放題だ。武器などいらぬ。だが、勇者の持っていたツヴァイヘンダーとやらが持っていけるなら面白い。剣を媒介して魔素を使ってみたいものだ。おそらくは魔素の放射効率が上がり、魔法の威力が上がるだろう」
「わかった。用意しよう」
なんですって?
「なんで相手が魔王だと、二つ返事で引き受けるのよっ?」
「信頼しているからな」
……ひどい。ひどすぎる。
連呼するほどひどいわっ!
なんで、私を信頼しないのっ?
あとがき
ああひどい(どっちが?w)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます