第22話 聖剣タップファーカイトの謎 1


 ケイディ、魔王にまで装備の心配してやって、「一仕事終えた」みたいな安堵の顔になった。

「防具系に関しては、我が軍の制式装備を支給する。編上靴は2日後の出発までに履き慣らしておけ。

 そして、出発までの間、君たちの能力について記録、分析調査させてもらう」

「私、物差しじゃ聖剣タップファーカイトを出せないかもしれないなー」

「記録、分析調査チームは2つだ。なので、交代で記録、分析調査されない方の2人は、基礎的なサバイバルの知識と技術を身に付けてもらう。火も起こせないようでは、すぐに死ぬからな」

「あー、聖剣タップファーカイトが泣いている。物差しじゃ嫌だって、泣いているなー」

「それらの基本のサバイバル用品についても、やはり我が軍の制式装備を支給する。君たちの生命維持に直結するので、使い方には習熟しておくように」

「炎系の魔物が出たら、物差し燃えちゃうしなー。燃えちゃうようなのを武器にするって、どうなのかなー」

「なお、講義は英語で行われるが、通訳がつくので疑問点はきちんと解決しておくこと。ただし、非常時はこちらも全員の同時通訳はできないかもしれないので、専門用語については英語で覚えておいた方が君ら自身のためだ。

 まぁ、魔界とこちらで通信手段の確立ができるかどうかは別の話だが」

 ったく、とことん私を無視する気ね、ケイディ。憶えてなさいよ。絶対に仕返ししてやるんだから。



「それで、だが……。

 魔界への通路の確保には、聖剣タップファーカイトが必要となる。余剰次元へのアクセスを可能にするのは、現時点では聖剣タップファーカイトを使用するしかない」

「竹の物差しじゃ、そのなんとか次元とか……」

「それについては、なんらかのエビデンスが取れるような事象があったの?」

 け、賢者、アンタまで私を無視するの?

 なんなのよ、アンタら?


「前に話したが、我が軍の軍事偵察衛星が聖剣タップファーカイトにより破壊されている。軍事偵察衛星はセンサー類の塊だ。そのすべてのセンサーが機能停止する瞬間まで送り続けてきたデータ、特に破壊前の100分の1秒のデータは特異なものだった。明らかに通常の破壊ではなかった」

「熱でも発生していたの?」

 そう聞く賢者の顔は、真剣なものだった。


「いいや、熱はほぼない。空間の歪みに巻き込まれたというしかない。いきなり重力が発生し、半分がそこに吸い込まれたようになった。つまり、突然、ブラックホールが通り過ぎたようなものだ。なのに、吸い込まれなかった方にはなんの損傷も認められない。軌道すら、大きな影響がなかった。本当に重力による破壊ならば、そんなことはありえない。つまり、空間自体になんらかの干渉があったと考えるのが一番の近道ということだ」

「オッカムの剃刀ね」

「そういうことだ」

 そう言って、ケイディと賢者は頷きあった。


 ……ふん、相変わらず仲がよろしいこと。

 そのオッカムのカミソリとかで空間が切れるってわかっているなら、聖剣タップファーカイトじゃなくてもいいじゃん。なんで私を呼んだのよ。



あとがき

もちろん、「オッカムの剃刀」とは「ある事柄を説明するためには、必要以上に多くを仮定するべきでない」ということでして、勇者ちゃん、完全に誤解してますww

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