第16話 武器庫


 ケイディに促されて、トランク引きずりながら歩き出した私たちは、倉庫のような建物に入り……。

 って倉庫じゃないね、ここ。

 建物の中に広い空間なんてなかった。

 そこに入ると、いきなり狭いプラスチックとアルミでできた空間で、強い風で全身を撫で回された。髪の毛なんか、逆立ってぽわぽわ舞った。


 結城先生が「久しぶりだわー」とか言っていて、私は好奇心が抑えられなくなった。

「これ、なんですか?」

「エア・シャワーよ。身体についたホコリを吹き飛ばしたの。この奥は、清浄空間ということかもしれないわね。カビの胞子なんかも存在を許されないところ」

 うーーん、よくはわからないけどすごいな。


 そのエリアを過ぎると、大きな扉があって、その大きな扉の奥の部屋はまんまエレベータだった。

 ケイディが壁のボタンを押すと、一瞬の無重力感があって、私たちは地下に降りているって思った。


 エレベータはすぐに止まり、私たちはそんなに深いところまでは行かなかったのだと思う。

「まずは、ここが宿泊できるようになっているから、荷物を降ろせ。扉ごとにホテルのシングルの部屋があると思っていい。自分の荷物を置いた部屋を忘れるな。そしたらすぐにここに集合」

「はーい」

 私たちはそう返事をして、それぞれに居室を定めた。


 なんか疲れているんだけど、フライト中は寝通していたせいか眠くはない。おなかは減っていないけど、心が飢えてる。なんか美味しいものなら、切実に食べたい。でも、ケイディが渡してくれるものならいらない。

 なんか身体の重心が定まっていない感じで、身体がまだ輸送機のリズムで揺れているような気がする。これもまぁ、こういうものなんだろうな。


 で、廊下で待っているケイディの元に集まったら、そのまま歩きだして、一番奥の部屋に案内された。

 ああ、こういうの、映画で見たことがある。

 鉄砲の練習する部屋だ。で、その手前にも広い空間がある。でもって、テーブルには物騒なものが山積み。


「ここはどんな武器でも用意できるし、とりあえずのものは運び込んである。出発前に、装備を整えろ」

「えっ、怖い」

 思わずそう返事をした私を、ケイディは睨みつけた。


「勇者、お前の方が怖い。聖剣タップファーカイトより強い武器などないぞ」

「あ、そっか。言われてみればそのとーりだね」

 ……だからケイディ、いきなり疲れ果てないでよね。



 とりあえず、身体を守る装備はたくさんあったし、それぞれに耐熱性とかいろいろな特徴があった。うん、私たちは恵まれている。「ぬののふく」と「ひのきのぼう」で冒険に出なくて済むのだから。


 で、ここへ来て一つ、橙香の才能っていうか、前世から受け継いだ財産を目の当たりにすることになった。

 武闘家は素手でもその片鱗があったけど、橙香に戦士としての姿は今まで見ることはできなかった。だけどね……。軍用の黒いマチェテを握ったら、なんか別人感があったんだ。


 マチェテって刀みたいなもんで、何本か用意されていたけど、橙香は一番長いものを手に取った。軽く素振りすると、「ぴっ」って音がした。空気を斬る音だ。この娘、怖い。この勢いで振られたら、人間の首なんか簡単に飛ばされそう。


「コレ、加工しないと使い物にならない。そういうのは受けてくれるの?」

 橙香、アンタ、武器を手にしたら、前世の記憶が戻ってきたの?

 言うことが妙にプロっぽいんだけど……。




あとがき

武器、選び放題。

でもなー、問題があるんだよなー。

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