第17話 戦士の武器
「加工しろと言われても、どれほどのものかで回答は変わる」
ケイディが橙香に答える。
「刃の形状を変えるとなると、ベルトサンダーで削ることになるが、熱で焼きが戻ってしまうぞ。ここは軍事基地だから最低限の工具は揃っているが、刃物の焼入れまでは……」
さらにそうケイディが言いつのるのに、橙香はあっさりと答えた。
「変えたいのは柄。刃の方も言いたいことはたくさんあるけど、我慢するから」
「……具体的にはどうしたいんだ?」
ケイディの問いに、橙香はすらすらと答える。
ってか、橙香、アンタ、いつの間に、誰?
「これでも刀身が短い。私たちは人間と戦うわけじゃない。それなりに大きく ぶ厚く、重く、長くないと。これは、そのすべてが足らない。刀身には加護も欲しいけど、でもそれはもう仕方ないから、長く頑丈でそれなりに重い柄が欲しい。せめて私の身長くらいは」
「……君のその身体で持てそうなものを用意したのだ。武器とは戦う時間よりも持って歩く時間の方が長い。君はそれを持ち歩けるのか?」
うん、そうだよね。
私は身体の中から聖剣タップファーカイトが現れるだけだから重くないけど、橙香は武器を持ち歩かないといけないんだ。
「ケイディ。
私は戦士よ。少なくともこの手の武器な関して、私にモノを言うのは烏滸がましいわ。重ければ重いように持つ。それだけのこと」
「では、アルミの棒で……」
「チタン合金にして」
「……チタンか!?」
ケイディの声が裏返った。
「チタンってそんなにすごいの?」
私が我慢できずに横から口を出したら、賢者の結城先生が極めて短く説明してくれた。
「重さはアルミの2倍、鉄の3分の2。衝撃強度に優れ、引っ張り強度は鉄の3倍。熱と魔素を通さず、価格は20倍」
「20倍!?」
私の声も10倍ぐらいには大きくなった。びっくりして。
「勇者、アンタ、驚くのは
「……いや、別に」
ごにょごにょ。
私は口の中で反論を飲み込んだ。だって、すごく私がケチみたいだし、でも反論したらきっともっと馬鹿にされる気がしたんだ。
「滑らないように、全面に綾目のローレット加工して。刀身の付け根には小さくても重い鍔を。これがないと、突いたときに魔王の血で濡れた柄が滑って、刀身を握っちゃうから。反対側には、鋼鉄のキャップを。こちらでも戦うから」
「……そこまでするなら、刀身も長いものを取り寄せようか?
もう10cmほど長いのもあるはずだ。あと、マチェテは内反りのものもあるが……」
「長さはそれにして。だけど内反りのものはダメ。刀身を振り抜けないと連撃ができない。魔王は、絶対に一太刀では死なない」
「あ、おおう」
ケイディが、なんか完全に呑まれている。橙香、強い。さすがは私の友だち。
「あとは、強度が高く、しなやかな革を。持ち歩くための装備は自作するから」
「わかった。革以外の材料も指示してくれ。用意する」
おやおや。ケイディ、アンタ橙香に完全降伏ですか?
うん、こうなったら、私も要求を出すぞ。
「ケイディ、私にも美味しい親子丼を用意しなさい」
「Shut up!!!」
……なんでよ?
あとがき
次は武闘家だ……。
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