第12話 さあ、行こう
ケイディ、ものすごく仕事ができる人なんだと思う。
私たちが拉致されて4日目、学校に手紙が届いた。
職員室は、すべてがひっくり返ったような大騒ぎになっていた。だってさ、ケイディの国の白い家から学校長に手紙が来たんだよ。これで大騒ぎにならなかったらオカシイ。
ハクトウワシが木の枝と矢を持っている紋章の透かしが入っている封筒と便箋、私、初めて見た。
校長先生と教頭先生が相談した結果、大使館にこの手紙が本物かどうか、電話を掛けたらしい。で、大使に本物だと保証されて、ウチは県立高校だから知事までが手紙を見にやってきた。地元の新聞社も。
でも、手紙の本文に、「生徒の日常を奪うような大騒ぎは謹んで欲しい。そうでないとこの話はなかったことに……」、って書いてあったので、全国紙やテレビまでは載らなくて済んだ。
まぁ、私たちの親も喜んでくれて、出発にはなんの支障もない。
ちなみに私たちは、ケイディの国に貢献していて、その御礼で招待されたことになっている。私たちがネットに上げた動画が、なにやら新しい発見の礎になったとかなんとか。私たちが下手なダンスを踊っている動画がそれだってことなんだけど、コレ、AIででっち上げたものだよね。
この動画、一度見たけど二度とは見たくないほど、私たちは不気味に身体をくねらせていたよ。
で、私たち、なにを聞かれてもよくわからないってことにするしかなかった。
まぁ、物理の先生は、具体的なことが知りたいってがんばったけど、大使館から英語の長文の論文が送りつけられてきてあっけなく諦めていた。「カラビ・ヤウ多様体だの、そのふるまいの謎の答えが五月女のダンスにあっただなんて英語の論文、いきなり読みこなせるわけないだろ」って。専門用語が多すぎて、自動翻訳もできなかったらしい。
さらにこの手紙には、私たちの健康維持のために、引率には保険の先生を付けろって書いてあった。
これで私たちの旅のメンバーは決定した。上将ドラゴン『終端のツェツィーリア』はお留守番だ。私たちにとって魔界でなにかあったときの保険は必要だったし、ケイディは上将ドラゴンに気がついていなさそうだったから、そのまま私たちは彼女を隠し玉にしたんだ。
で、行ったあとは、表向きは航空宇宙局とか工科大学を訪問することになっていたけど、まぁ、実際にもちょびっとは行くんだけど、当然のように実際は違った。
実際の日程もケイディから送られてきていたけど、私たちが行くより航空宇宙局とか工科大学の人たちが私たちのところに来る方が多い。私たちはほとんど軍の施設で軟禁状態だから。ケイディたちで、あちこちの機関の手も借りながら、聖剣タップファーカイトの謎を丸裸にするんだってさ。
でも、JKに対して使う言葉じゃないよね、丸裸って。
1週間後、出発の日が来た。
さぁ、行こう。
驚いたことに、私たち、羽田や成田から行くんじゃないんだ。東京のケイディの国の空軍基地から専用機で行く。
基地はもう日本じゃないから、その前に美味しいものたくさん食べとかなきゃ。誰に聞いても、行った先では美味しいものがないっていうんだもの。
あとがき
「さぁ、行こう」のイラストを頂いています。近況ノートに載せさせていただきますね。
花月夜れん@kagetuya_ren さまからです。
感謝なのです。
https://kakuyomu.jp/users/komirin/news/16818023213015571380
そして、節分のイラストも加えていただきました。こちらは近況ノートで報告済みです。
やったーーーっ!!!
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