第38話 4日目の昼3
私、爆発が起きたかと思った。
高々と水しぶきが上がり、水面が深々とえぐられて、一瞬10mほど下の水の底が見えた。その水底の泥も深く割れていた。
次の瞬間、その水は再び合わさり、見えていた底は覆い隠された。そして、大波が起きて、3mはあったはずの高低差を越えて私の足を濡らした。
私、震え上がった。
自分がやったことなんだけど、怖すぎ。こんなん、どうしていいかわからない。
ってか、この威力を持ってしても、魔王の首は一撃では落ちなかったんだよね?
魔王の首が鋼鉄製だったとしても簡単に斬れちゃいそうなのに、それに耐えるだなんて、どんな首だったんだ?
次は私、なにも持たずに人差し指を伸ばして振ってみた。
だけどなにも起きない。
自分の人差し指が刃物だと一生懸命思い込もうとして、それで振ってもなにも起きない。
やっぱり、聖剣タップファーカイトは、画鋲程度であっても媒介するものがないと現出しないんだ。
私、さっきの木の枝をもう一度拾い上げて、堤防から山の方にダム湖を回り込んだ。そして、雑木林の中の細めの木を選んで、木の枝をとてもゆっくりと振ってみた。
そうしたら、木の枝が斬ろうとしている木の幹に触れる寸前から、その木の幹に切れ込みが入っていった。
聖剣タップファーカイトは、木の枝に重なって、少々はみ出す形で存在しているみたいだ。だから、弱々な棒でもいいんだな。そして、太い棒でも切れるってことだ。
そして、一定の空間が生じて切れていくことから、切れるというより薄く空間転移させているみたい。
ゆっくりと木の枝を振り切ると、どさんって音とともに木の幹が両断された。切り口はとてもなめらかで、触るとすべすべしていた。
焦げたりはしていなかったら、熱で焼き切っているってことじゃないんだろうね。
結局それ以上のことはわからなくて、私、握っていた木の枝をその場に放ると自転車に向けて歩き出した。少なくとも聖剣タップファーカイトの威力はわかった。これにどんなステータス付与とかアビリティがついているにせよ、私は前世の知り合いがいるとイケイケドンドンになってしまう。
それでも、橙香の自己犠牲の申し出と上将ドラゴン「終端のツェツィーリア」の出現が、私に私を取り戻させた。もう少し独りできちんと考えてからでないと、また舞い上がってしまう。
さあ、帰ろう。
この世界が滅びに面しているのであれば、そして私が戦わねばならないのであれば、そしてそしてそのために私の体内に聖剣タップファーカイトがあるのだとすれば、私は逃げるわけには行かない。
もっといろいろと考えなければ、なんだ。
私がそう考えながら自転車までたどり着き、ゆっくりと歩き出した次の瞬間、視界が真っ暗になった。悲鳴を上げる間もなく、私の両腕は後ろでひとまとめに掴まれ、きゅっという結束バンドが締まる音とともに自由を奪われた。
しかも、私の手はなんかつるつるした袋に入っていて、聖剣タップファーカイトを現出させようと棒かなにかを求めても得られるものはなかった。
大きい車のエンジン音が聞こえ、そこへ放り込まれた。横でがちゃんって音を立てて積み込まれたのは、私の自転車だろう。
私は誘拐されたんだよね!?
なんで?
だれに?
どうして?
あとがき
急展開来ました……。
これ以降第二部ですね……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます