第37話 4日目の昼2


 そんなことを考えているうちに、私、聖剣タップファーカイトについてきちんと調べておかないとって気になった。

 問題はその方法なんだけどね。

 持っている棒でも画鋲でもそこに宿らせることはできるけど、その本体を見ることはできていないんだよね。


 それに、そもそもなんだけど、肉眼で見えるものなのかな?

 実体がないとしたらどうやっても見えないし、魔力がない私には感じることもできない。ただ使えるだけで、それがどういうものかなんて全然わからないままだ。でも、それじゃいけないよね。


 ……そうだ、学校の裏山で、急斜面のところで聖剣タップファーカイトを振ってみたらどうだろう?

 まさか、山の向こう側までトンネルができちゃうことはないと思うし、でも、威力はわかるかもしれない。

 いや、ちょっと大変だけど、学校の裏山の上まで登って、ダム湖の水面に向かって振った方がいいかも。どこまで威力が届くかは、水の方がわかるもんね。相手が土だと、ある程度以上の深さはもうわからないもん。


 で、画鋲の場合とそこで拾った長い枝とかの木切れで、宿らせたものの違いで強さが違うかの確認ができる。それから、それから、えーっと……。画鋲も手放して、私の人差し指でも聖剣タップファーカイトが出てくるか確認しなきゃだし、雑木林の木を1本切れば、その切り口から聖剣タップファーカイトがどういう刃物かもわかる。カーテンじゃ布1枚でわからなかったけど、木なら切り口がなめらかなのか焦げているかで、切れ方がわかるよね。

 それに、とてもゆっくり切ることができれば、切れている姿から聖剣タップファーカイトそのものも見えてくるかもしれない。


 そんなことを考えていたら、私もう、午後の授業を受ける気なんかなくなってしまった。それに、お昼休みにまた橙香や辺見くんと話したら、私、また強気になってしまって、いろいろなことがどうでも良くなってしまうかもしれない。

 だから私、お昼休みのチャイムが鳴ると同時に、「おなかが痛いから、午後は休みっ!」って叫んで、画鋲を1つ握って教室から駆け出した。


 あとから考えたら、トイレに駆け込んでいくんだって思われただろうって乙女心が傷ついたけど、もう仕方ないよ。

 自転車でうんうんいいながら山を登って、ダム湖の堤防から周りを見渡した。ここは農業用用水とかのための溜池みたいなもんだから、レジャー施設があるわけでもないし普段から人影は少ない。まして、平日の昼間だしね。さすがに、たくさんの人がいたらこんな実験できない。


 私、周囲の地面を見渡して、1mほどの木の枝を拾い上げた。

 画鋲はもう1回使っているから、その威力はわかっている。なので、木の枝の方をまずは振ってみることにした。

 3mほど下のダム湖の水面に向かって、ぶんって振り下ろす。

 なにも起きない。


 私、深呼吸して、聖剣タップファーカイトの使用方法を思い浮かべた。

 そうだよ、これは木の枝じゃない。剣なんだ。しっかりと斬るつもりで振らないと聖剣タップファーカイトは現出しないんだ。

 私はもう一度深呼吸して、振り上げた木の枝を振り下ろした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る