第29話 3日目の放課後、保健室4


 結城先生は続ける。

「そう。これからの戦いはね、こちらは土日しか対応できないのよ。高校生に学校休んで戦えとは言えないでしょう?

 高校生の本分は勉強なんだからね。特に五月女さん、わかってる?」

「えっ、あ、……はい」

 ……なんでいきなり私に振るのよっ!

 いきなりそんな、先生ぶって。って、まぁ、先生なんだけど。


 それに私、そんなに成績悪くないんだから……。悪いはずなんかないんだから……、まぁ、良いとも言えないかも……。ってか、そもそもまだ高校入学3日目で、実力テストとかだってまだ1度もしていないじゃん!?

 今のは完全に濡れ衣よ、濡れ衣!!


「だからさ、こっち換算で12日戦えば実質16歳、36日戦えば実質18歳で問題ないでしょ。こっち換算で10日もあれば、妊娠から出産だってイケる。前回の戦いからして、魔界で600日は軽く掛かるでしょうし。

 あ、そうそう、進学を考えているなら魔界で勉強しておくといいわ。ただ、あまりに頑張りすぎると、妙に老けた現役生ができあがっちゃうけどね」

「『そうそう』、じゃないっ!

 あのね、私の気持ちとか、そういうものへの配慮はないのっ!?」

 私の叫び、すごーく真っ当なものだったと思うんだけど……。


「五月女さん、勇者でしょ?

 我が身を投げ出して、世を救うんでしょ?

 そう考えたら、命の危険がないだけ辺見くんとくっつくなんて、そりぁあもう軽い軽い」

「あ、そっか……、って、そんなわけないでしょうがっ!」

 私がそう叫んでも、結城先生はぜんぜん揺るがなかった。


「そーかなー。

 宇尾くんはもう思い出しているよね?

 勇者と戦士が魔王と戦って血みどろになって、アイテムも私の治癒魔法も使い切って、絶望したまま全滅した日を」

「すまない。憶えていない」

「……そっか、宇尾くんは真っ先に死ぬ役だったもんねー。

 死んでちゃ、憶えるもなにも、経験してなかったね」

 あ、身も蓋もない一言、来ましたー。


「せめて武闘家と言ってくれないか。

 宇尾くんって呼ばれてそれを言われると、転生後のこの世界でもバカだから真っ先に死ぬって言われているような気がする……」

「ふーん、宇尾くんでもそれはわかるんだ……」

 私の相槌に、宇尾くんの眉毛が逆立った。やだな、怒らないでよ。私、ちょっと正直なだけじゃないっ。


「……言っておくけどな、勇者。

 最初の全滅がお前のせいだってのは憶えているぞ。魔王城でまだまだ経験値が足らないのを痛感して、魔王の玉座の間の前で引き返そうって話になったのに、魔王の顔だけは見ていきたいって扉を開けたのは勇者、お前だったもんな」

 ……思い出さなくていいことまで思い出したようね、宇尾くん。いいのよ、私の失敗は思い出さなくても。


「ああ、そうだ。

 魔素も使い果たしていたようだし、これで帰るかと思っていたのにいきなり扉が開いたので余は驚いたのだぞ。そして、あまりにあっさり余に踏み潰されたので、なにをしに来たのかと思ったし、その後も二度三度と懲りずに来るとは思わなかった」

 辺見くんさぁ、なんでそういうところだけは宇尾くんと連携がいいのかな?

 さっきは宇尾くんをぶっ飛ばしてたじゃん。もっと仲悪くなっていてもいいじゃん。

 なんで、勇者の私を責めるときは仲良くなるのさ?

 マジ、わかんないっ。



 あとがき

 やはり勇者は最強ですなー。

 パーティーが揃って、魔王と連携して、ようやく勇者をやり込めることができるようになりました……(いいんか、ソレで? そういう戦いか、コレw)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る