第28話 3日目の放課後、保健室3
まずは私が、結城先生にツッコんだ。
「まずね、子供ができたら互いに裏切らないとか言うけど、私も辺見くんもまだ高校入学3日目の15歳だよっ。いきなり政略結婚みたいな提案ってどういうことよ?
私だってね、人生設計ってもんがあるのよ。白馬に乗った王子様が迎えに来てくれて、気ままに暮らすの。それを邪魔しないで。
それに、子供ができるにしたって、最短で1年後でしょっ。日々深奥の魔界は口を開いているって話なのに、そんなのんびりした手じゃダメでしょっ!」
私の叫びに、結城先生はにやりと笑った。
うん、間違っても今の笑顔、にこりじゃなかった!
腹の黒い賢者って最低だっ!!
きっとこういうヤツが、聞いたことしかないけどスンシャク詐欺とかインサイダー取引とかに手を染めるに違いない。よく知らんけど。
「まあまあ、五月女さん。
魔王と王子はほとんど同じよ。共に王の字が入っているじゃない。社会的にもハイソなのは間違いなし」
「まぁ、魔王にも王子がいてもおかしくないだろうしな……」
「そうよね。考えてみれば、魔王のプライベートだって、舞踏会にお茶会があって、悪魔の執事だっているに違いないわ。いい生活ができるかも……」
結城先生、アンタ、人を丸め込もうとするんじゃないわよっ。
でもって、宇尾くんに橙香、アンタたちまでなにを言っているのよっ。
「そもそもさ、社会的にハイソックスって、どういうこと?
意味わかんないんだけど……」
「ちっ、これだから現役のJKは……」
なんなんだ、今の賢者の舌打ちはっ!
「じゃあ、五月女さん、あとは王家に嫁ぐ夢をこの世界で叶えるとしたら、台湾の王さんと結婚するしかないわよ」
そう言われた私の脳裏には、せっせと小籠包を包む勇者たる私自身の姿が思い浮かんだ。
それは絶対に違うわっ!
勇者と小籠包は、隣り合ってはいけないのよっ。
聖剣タップファーカイトだって、小籠包の具を刻むための道具じゃないし、野球のバットの替わりにしちゃいけないっ!
賢者は続ける。
「続きを話そうじゃないの、魔王。
アンタ、そもそも魔法を取り返せたとして、深奥の魔界とどう戦うつもりだったの?」
「決まっている。ここでは戦えぬ。魔素がないからな。
だから、まずはなんとしてでも1度は我が魔界に戻らねばならぬ。ここで戦うにしても、魔界から魔素を送り込むためのなんらかの手を打っておくことが必要だ。そのためにも魔法は取り返さねば……」
「そうだと思った。
つまり……、五月女さんは、思い出せてい……、ないんだったよね……」
ええい、ため息をつくなっ。
私だって、思い出せるなら思い出したいんだよっ。その、前世ってヤツをなっ!
「宇尾くんは、もう思い出しているでしょう?
魔界とここでは時間の進み方が違う。前回この魔王の首を斬ったとき、私たちが魔界で苦労していた長い時間の間、人間の世界では時がほとんど流れていなかった。700日もの魔界での戦いは、人間界ではたった25日のこと。時間の流れ方に30倍近い差があったのよ。
それが、私たち人間界が絶滅寸前まで追い込まれた大きな理由。こっち主観で言えば、あまりに攻撃は立て続けだったからね。
つまり……」
「余が、お前たちを魔界に連れていき、そこで共に戦うということか?」
辺見くんの問いに、結城先生はうんうんと頷いた。
あとがき
勇者がからむと、とたんに話が進まないww
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