令嬢は精進することを誓う
わざわざ貴族らしい言葉を口にされなくてもよろしくてよ?
わたくし、カース様にそう伝えたこともありましたの。
それも何度もよ?
でもね、これはカース様のご趣味なんですって。
趣味だからやめたくないとカース様は仰るのよ。
趣味って人それぞれなものなのだわ。
「うふふ。カース様も今日も素敵でしてよ」
「ありがとう。リリーに言われると最高に嬉しいよ。あぁ、でも良かったな。本当に良かった」
カース様がしみじみと感じ入るように言うのです。
それはとても貴族らしくないお姿でしたわ。
「どうされまして?」
「どこかの誰かとの約束は果たしたからさ。これで堂々と君の側にいられるだろう?そろそろ学園での人脈作りもひと段落していい頃合いだよね?」
それはどうかしら?
わたくしは首を捻りましたの。
多くの貴族の子女たちと交流するために、学園ではあえて一人で行動してきたでしょう?
お友だちだけでなく、カース様とも距離を置いて過ごしてきたわ。
ですからね。
あの彼女たちから見たわたくしたちが、仲睦まじい様子に見えていたというのが理解出来ないのよ。
カース様とまったくお会いしなかったわけではありませんわよ?
それでもカース様と協力して、とても貴族らしく振る舞っていたと思いましたのに。
もしかすると、わたくしたちは貴族として美しく振舞えていないのではないかしら?
「外での振舞いの練習も兼ねて、学園でも二人で過ごすことにしよう。ね、リリー?」
わたくしの考えなどすべてお見通しというように、カース様は仰います。
そうね、もっと練習しないといけないよう。
わたくし、頑張りますわね。
でも皆様とのお付き合いはどうなるかしら?
カース様とご一緒していたら、偶然を装っても皆様とお話ししにくくなるのではないかしら?
殿方がいたら遠慮されますもの。
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