令嬢はお友だちを招待する

「学園にそのような方々がいらっしゃるだなんて。思いもしませんでしたね」


「自分たちが何をされたのか。それも分かっておられないのでしょう」


「学園に入る準備として、希望者に教育を受けられるようにしたらどうかしら?」


「お待ちになって。あの方々は伯爵家とそれに属する家の方々でしたのよ?希望されるかしら?」


「全員に強制となってもいいのではないかしら?」


「学園入学後に、一定期間マナーを徹底的に学習出来るようカリキュラムを変更しては?」


「それはいいかもしれませんわね。十分に学んで来た方々にとっては復習するいい機会になりますでしょう?」


「それぞれの領地に離れて暮らしていますもの。マナーの常識も偏っているかもしれませんし」


「共通意識を持つためには必要かもしれませんわね」


「だけどそれで古臭いマナーが固定されてしまってはいけないわよ」


「伝統は大切にしなければなりませんけれど、意味のない古いしきたりに縛られてもいけませんわよね」




 本日は学園がお休みですの。

 ですからこうして昼下がりに、気心の知れた仲の皆様を王都の邸に招き、お茶をしているところですわ。


 彼女たちは学園での偶然の出会いの方々ではございませんことよ。

 幼い頃からお付き合いのあるわたくしの大切な『お友だち』ですわ。


 先日学園で経験した不思議な体験についてお話させていただきましたらね。

 お友だちのお話が大変盛り上がってまいりましたの。


 ふふ。

 今日はとっても紅茶がおいしいわ。



「そのような方々がいると分かっておりましたら、リリーシア様をおひとりにはいたしませんでしたのに」



 わたくしのお友だちは、お優しい人ばかりだから。

 どんなにお話が盛り上がっていても、わたくしを気遣ってくれるのよ。

 嬉しいわね。



「ご心配ありがとう。でもね、わたくしは楽しかっただけよ?面白いお話を沢山聞けましたもの。むしろわたくし一人で楽しんで申し訳なかったと思うわ」


 新緑の季節を迎え、今日は我が家の庭にもいい風が抜けておりますの。

 だからテラスにお茶を用意して貰ったわ。


 正解だったわね。



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