第2話 転生
「ん……」
目を開けるとたくさんの木々に囲まれていた。
とても木が高く見える。
さわさわと心地の良い風がふく。
異世界感の無い緑に囲まれてなんだか安心した。
なんだこの匂い。
うっすらとだが、良い匂いが風に乗って鼻腔をくすぐる。
ぐぅぅぅぅ
異世界に来て早々だが腹が減った。
匂いに釣られてしばらく歩いていると、ポツンと一軒家が現れた。
異世界といってもこんなに立派な家があるもんなのか。
特に何も考えず、自分の背丈の3、4倍程ある大きなドアをノックする。
コンコンコン
ドタドタ…
ガチャ
「…おや、どうした少年、迷子か?」
中から出てきたのは真っ白のローブを身に纏った美しい女性だった。
「いや、迷子じゃ…」
言いかけてあまりの違和感に止まる。
明らかに自分の声が高い。
まさかと思い、体を確認すると手も足も小さい。
小さい体に半袖半ズボン姿だ。
子供になっている。
ぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ
それから、厄介なことにこの体は欲望に忠実のようだ。
「なんだ腹が減っているのか!ちょうど昼飯を作っていた所なんだ。食べていくかい?」
「…いいの?」
「子供が遠慮するな。ほら、適当なイスに腰掛けて待っていてくれ」
家の中に入るとさらに美味しそうな匂いに涎が止まらない。
高めの椅子に座り、足をパタパタさせ待つ。
まるで心までもが子供になったようだ。
「お待ちどうさん。ミルク煮だ」
「わぁ…!」
久しぶりの温かいご飯。
人の手料理。
「はふっ、はふっ…」
「おいおい、そんなに慌てなくても逃げないぞ」
「はぁ〜美味しかったぁ」
「ふふ、お口にあったようで何よりだ」
あっという間に空になった皿を見つめ余韻に浸る。
お腹が満たされたところでふと我にかえる。
あれ、もしかしなくても俺結構まずいことしてるのでは?
いくら異世界だからといっても、普通、急に家に訪ねてきた奴に飯なんてくれるか?
まさか飯代としてこの後奴隷のように働かされたり…。
いろいろな考えが頭を巡っていたその時。
「はは、そんなに不安そうな顔をしなくても良い。この森は迷いやすいから少年みたいな奴は珍しく無いんだ。あたしはネオ。少年は?」
どうやらこの体は感情も表に出やすいらしい。
何もかも前世の俺とは正反対だ。
「…
「カケルか!良い名だ。それで、どこから来たんだ?」
「えっと…よくわからない。気づいたら森にいた」
「記憶喪失か?…でもなんだって君みたいな子供がこの森に一人で…」
「あ…俺に家族はいない、と思う」
「あぁ、なるほど…訳ありか」
つぶやいた後、ネオはあごに手を当て俺をまじまじと見てきた。
短い沈黙。
「少年、いや、カケル。あたしの弟子にならないか?」
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