第11話 信用と友達像
その理由は、グループ全員のことを信じているから。
だからメンバーを放置しておくことが最善の策だと考えている。
それを信用というのか、それとも冷淡というのか。
スタンスとそれに準じた行動。それが、こんなにも真逆な見え方がする人間なんて初めて会った。
けれど、どうだろう。
……私だったら、信用できる友達ができたとき、果たして放置したままでいられるだろうか。
信用しているから、放置しておいても何ら問題はない。
論理として言葉としては、何も矛盾はないと思う。
けれど、それを実際に行動に移したところで周囲の人間に共感されるだろうか。
他人から過剰な信用を与えられたとき、人はその重荷に潰れそうになる。
ある程度は疑われなくては、ある程度はマイナスな感情を向けられなくては、人はバランス感覚を失ってしまうのではないか。……それは、「友達」という関係においても。
いつもクールな顔つきが困惑と緊張に歪ませ、ぐっと握りこぶしをつくっている。
――俺は正直に全部吐いたけど、そっちも全部正直に吐いてくれるんだよね?
ぐらり、と
それは、彼女が自身の感情にすべてを委ねた合図だった。
「――言う必要ないよ、唯花。うん、言う必要なんかない」
「
「うん」
「だけどあなたと違って、私たちは問題解決のために何か動けることはないかと考えている。時間が経つのを待って、だなんて悠長なことはしてられないと思ってる」
「悠長」と言われて、
けれど、依然として落ち着いた調子を保っている。
「『信用』って
信用してるからって、友達をいつもでも放置しておくことはできない。……友達には、ずっと近くにいてほしいって思っちゃうし、好きになった人とはずっとずっと近い距離でいたいから。
私は、『自分』をちゃんと自分の心の中に捕まえておきたい。『信用』って言葉で誤魔化して、他人に、自分の意志を任せっきりにはしたくない」
「私が思う『友達』。それは、好きも嫌いも嫉妬も慈しみも、全部の感情をぶつけ合える関係にあって、ぶつけ合っても壊れない関係にあるもの。
『信用』っていうものは、きっと、感情をぶつけ合っても関係が壊れないってところからようやく生まれてくるものだと思う。だから、とっかかりから『信用』を相手に求めたら、相手はびっくりして距離を取りたがちゃうと思う。
論点をずらすようで悪いけど、でも私にもあなたが思うような友達像っていうものがあるから、全部をオープンに開示し合う必要はないと思う」
先ほどより屈託のない笑顔が印象的だった。
「でも俺は、『信用』から入っても友達つくれるよ?」
「いやそれは
「え、なに急に。
「ち、違います違います! そういうことが言いたんじゃなくて、あのあの……」
茹でダコのように顔を真っ赤にして言う
へなへなと崩れ落ちると、そこで
そんな急激なキャラ変に、大爆笑して、
「いや、
「え?」
「それが本当の友達なんだろうけどさ、でも現実はそれほど甘くないよ。人間関係なんて些細な問題ですぐに壊れるし、相手に飽きられればすぐに会話なんてしなくなる。そんなことは俺だってわかってるさ」
でも、それって常に友達に「信用」を置く人間の言い分じゃない。
とっかかりから「信用」を相手に置く人間というのは、打算があっていけないはずだ。破綻している。
そう問い詰めようとして、
「俺は、
……もちろん、君が言う『友達』に、本当のところで憧れている自分がいるのも間違いじゃない」
最後にそう呟くと、
「
「え、あ、はい……」
そして彼は、いたずらをする小学生のような笑顔を浮かべて。
「俺もできることがあったら手伝うからさ。
最後に
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