12
そして〈
彼ら〈
この少女──
「……そう。まあ、今朝方ちょっと行き合っただけで俺のこと
俺は
「
そして彗翅が続けた台詞に、果朶は目を見開いた。
◇
雨はやはり通り雨に過ぎなかった。
「遅かったじゃないか、
とたん、あたりが嘘のように静まり返った。
むろん、それは正確ではない。耳をすましさえすれば、詰所の篝火が爆ぜる音や、
けれども、遥か彼方にこんもりと生い茂る湿地林〈
背後に続く
「僕たちは気になるのだ。あの客人と
「ちょっとくらい教えてくれてもいいのだ。このままでは気になり過ぎて、夜もおちおち眠れないのだ」
「夜もおちおち眠れないのだ」
そもそも
「悪いけど、俺から言えることはなにもないよ。て言うか足元に集中しないと、今夜限りの命になるよ?」
それは決して、話を逸らしたいがための脅しではない。
綺羅晶掘りという職業は、いつだって死の危険と隣り合わせだ。
果朶たちの足元も、
一歩足を進めると、踵のあたりがやんわり沈む。いつ底なしの
「確かにそれもそうなのだ。喋っていては、注意が疎かになりかねないのだ」
「注意が疎かになりかねないのだ。斎湖で生き埋めになるのはごめんなのだ」
二人は大人しく口を閉ざした。
初夏の夜風が吹き抜けて、瑞々しさと青っぽさが
果朶は、
『微々たる量で構いません。あなた方の組合〈
さらさらと。静けさの中に、葉擦れの音が混ざり始める。
果朶は角灯を高く掲げた。
そこには斎湖が広がっていた。鬱蒼と
果朶たちよりも先に入った綺羅晶掘りが、角灯の明かりを頼りに、地面を探っているのだ。
綺羅樹は、見上げるほどの高さを持つ。
すんなりとした細い幹は
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