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大抵の女性は、けんもほろろに突き放せば、怯えるか悪態を吐くかのどちらかだ。
けれども彼女に限っては、一切
まるで
──まともに相手をするだけ無駄だ。
「あんた、うるさい。ちょっと黙って。いいから一旦屈んでくれる?」
「えっ?」
唐突な要求に、少女は虚を突かれた顔をした。それでも素直に身を屈めて、軽くお辞儀をしてみせる。
そこにずいと顔を寄せ、果朶は大きく息を吸った。
「ああ、……やっぱり」
ぶつかり合って転んだ時にも感じたが、こうしてみるとしかと分かる。青々として清涼な、しかし甘さを秘めた匂い。
「
生花とは贅沢品だ。
食料にならない娯楽の品にもかかわらず、
その中でも、
根の部分が薬になり、食料にもなる白百合は、活けることで空間が華やぐと同時に、豊かな収穫によって国が富んでいることの
「ついでに言うなら、人差し指と薬指の関節に
一等かどうかは知らないけれど、書記官ってのは、あながち嘘じゃあないんじゃない? と。結論付けた果朶に対し、感心し切った表情の厭朱が頷く。
「流石ですなぁ、
首の匂いを嗅がれた少女は、恥ずかしさと解せなさが入り混じった表情だ。
「白百合の香りだなんて、よく、すぐに分かりましたね? ここら辺は、花が咲くこともないでしょう」
「俺の親父は、
飄々と答えてみたが、果朶は、親の職業どころか顔すら知らない。
清々しいまでの嘘八百に、少女はうっとり目を細めた。
「まあ、素敵! 親孝行でいらっしゃるんですね。感動です。あらためまして、私、錘宮で一等書記官を務めております。
年齢にまつわる質問は飽きるほどされていると見える少女の名乗りに、果朶は僅かに目を眇めた。
最年少で及第した俊英という事実もさることながら、彼女が名乗った姓もまた、興味深いものだった。
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