2
陽が昇ってから間もない頃で、空はすっきり晴れていた。
前を向けば、途方もなく高い岩壁が聳えていた。そこに、木造建築が連綿と、
岩壁は高い地点で土壁に変わり、天を衝く緑豊かな山脈へと続くのだが、まばゆい朝陽に目がくらんだ
少年たちの会話は続く。
「
「美味しそうなのだ、
「うむ、食べたいのだ。夜通し
「ぺこぺこなのだ。のう、果朶。あの蟹を取って来て欲しいのだ。頼んだのだ」
つんつんと
「ああ、もう。あんたたちるっさいな。ここいらの蟹なんか食べないに越したことはないってば。
感情にまかせた八つ当たりではない。
──
斎湖に埋まる貴重な資源、〈綺羅晶〉を掘り出して、鑑定と買い取りを引き受ける〈組合〉に納めることを生業とする。
綺羅晶掘りたちは日没から少し経つと、斎湖に降りる。昼間に飛散する綺羅樹の花粉は、人体にとって有害だからだ。そして、夜通し採掘に勤しむと、日の出と共に組合に戻る。共用のつるはしを返却し、綺羅晶の鑑定を受け、ねぐらに戻って午後まで眠る。
果朶たちもまた、〈
「ほら、もう
果朶はくいと顎をしゃくった。
岩壁と荒野が接するところに、格子状の木柵が左右に長く延びている。高さは果朶の背丈の三倍ほど。斎湖との緩衝地帯である荒野を取り囲む区分線、〈
湖柵には、綺羅晶掘りたちのための関所〈湖門〉が、三里おきに置かれていた。
斎湖から掘り出した綺羅晶は、ひとつ残らず組合に納めるのが取り決めだ。そのため、湖門に勤める
湖門の詰所で、三人は長袍の内や履物などを検められた。綺羅晶を詰めた袋の口も、麻紐で封じた後に蝋を垂らされ、小さな印章を捺される。これで、組合に着く前に開けようものなら、すぐにそうと分かってしまう。
御年七十歳にもかかわらずぴんしゃんしている門守の
「相変わらず大漁さね、
果朶はふんと鼻を鳴らした。
「そんな可愛げのある性格じゃないよ、あの
「果朶は特別な存在なのだ。斎湖で方向感覚を失わず、底なしの
「果朶は口が悪いのだ。お姫様みたいに綺麗な顔をしているくせに詐欺なのだ」
「詐欺なのだ」
果朶は盛大に
喜婆は、愉快そうに目元を緩めて、けたけたと笑っていた。
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