君のような勘のいい女子は嫌いだよ……!

「やっほー、おまたせ」


「また頼ってくれて嬉しいよ、センコウお兄ちゃん!」



 翌日、世羅せら瑠璃亜るりあの二人に約束を取り付けた俺と燈瑠あかるは、SWO内で二人と合流することができた。


 二人に協力を求めたのはもちろん、燈瑠あかる……ミツキが【迷いの深緑】を克服するためだ。


 モンスターを前にガクブルしてしがみついてくるミツキを守りつつ、俺だけでソロ討伐するのは至難の業。


 俺だけで【迷いの深緑】に来て素材を集めてもいいんだけど、次の街に行くのに結局ミツキ自身も【迷いの深緑】を踏破する必要があるため、結局ミツキが克服するしかないのだ。



 そこで、仲の良い二人に協力をお願いしたのだ。

 ミツキが俺にしがみついて来ても二人がモンスターを討伐してくれるだろうし、女子だから後からミツキのフォローもしっかりしてくれそうだ。


 これで二人も虫が苦手だったら冗談じゃないけど……まぁ二人はもっと先の街まで言っていそうだから大丈夫だろう。



「という訳で二人とも、ミツキが【迷いの深緑】を攻略するのを手伝ってくれるか?」


「あ~……ミツキちゃん、虫苦手って言ってたもんね……手伝うのはもちろんいいよ!」


「お兄ちゃんの頼みだもんね~」


「二人は平気なのか?」


「私も苦手な方だけど、ゲームの中って分かってるしね」


「ミツキちゃんもそんな風に割り切れるといいんだけど……」


「ぅっ……分かってるんだけど、見るとどうしても……」


「まぁまぁ、無理しなくていいよ。そのために私たちが来たんだしね!」


「うちのミツキが世話になります……」


「いいお兄ちゃんだね、センコウくん……」


「妹のお世話をしっかりできててすごいと思うよ」


「ちょっと!」



 俺たちの会話を聞いていたミツキが、妹扱いに異議を申し立てる。むぅっ……頬を膨らませるミツキには悪いけど、まったく怖くないどころか、可愛い。


 まぁ、あんまり揶揄うと拗ねるので、この辺りにしておこう。



「あ、そうだ二人とも。次の『天上争奪戦』には参加するだろ? もうメンバー決まってるか?」


「『天上争奪戦』ね、私達はやるつもりだよ」


「ちょうど今日学校でセーラとその話してたんだよね! ミツキちゃんとセンコウお兄ちゃんも参加?」


「そりゃもちろん。ミツキにとっては初のイベントになるしな、できるだけ楽しんでほしいし」


「ってことは、サブキャラで参加ってことだよね。メイン放っておいてもいいの?」


「まぁ、そっちはそっちで何とかするさ」


「……ミツキちゃん、やっぱりセンコウの方がお兄ちゃんだよ。ガチでやってるメインを放っておいて協力してくれるゲーマーなんて普通いないんだから」


「むぅ……センコウの優しさは私も分かってるし、お世話になってる自覚もあるもん……」


「でも妹は嫌なんだ?」


「私は『兄と妹』みたいな上下間系じゃなくて、対等な立場で隣に立っていたいの!」



((それってもうプロポーズなんじゃ……))



 ミツキは自分で言った言葉に隠れた深い意味に気付いてないみたいだし、センコウはセンコウで真っ赤になってて使い物にならない。


 そんな二人の様子を見たセーラとルリアの台詞は、奇跡的にも一致した。



「「お前らもう付きあっちまえよ!」」



        ♢♢♢♢



 なんやかんやあって、俺とミツキ、セーラ、ルリアでとりあえず『天上争奪戦』のチームを結成した。あと一人は、セーラとルリアで見つけてくれるらしい。


 できれば中~遠距離アタッカーが欲しい……というのはセーラも一緒だったようで、安心してメンバー集めを任せられそうだ。



「じゃあそろそろ、今日狙いにいくモンスター教えてくれない?」


「誰のせいで遅くなったと……」


「センコウとミツキちゃんがラブコメ披露してたから?」


「ぅ…………も、もう忘れて……」


「むぅ~~…………」


「自分で焚き付けておいて、なんでルリアもそこまでムクれてるんだよ」


「二人を見てたら、なんかこう……む~~ってなって……」



(ルリア、『ラブじゃなくてライクの方』って言ってたのに、これはもうアレじゃん……モテモテじゃん、センコウ)



「そ、それでなっ! とりあえず『ブルーム・マンティス』の素材が纏まった量欲しいな。協力してくれたお礼に二人の装備も作るよ」


「えっ、本当に?」


「素材集めるだけでオーダーメイドしてくれるの!? それはめっちゃ助かる!」



 生産職プレイヤーの多くがサブキャラのため、メインの方と繋がりのあるクランのお抱えになっていることが多く、プレイヤーメイドの装備を手に入れるには相応の対価が必要となる。


 プレイヤーメイドの装備は総じて性能が高くなりやすいため、生産職の希少性も相まって『数ヶ月待ち』ぐらいに予約がいっぱいのプレイヤーもいるぐらいなのだ。


 セーラとルリアからしても、オリジナル装備は願ったり叶ったりだ。



「デザインの希望があれば教えてくれよ?」


「デザインはセンコウお兄ちゃんにお任せするね!」


「わ、私も、センコウが作ってくれるなら何でも……」


「だって、センコウのセンスが問われるわね?」


「ぅっ……まぁそこは頑張らせていただきます」



 正直、女性の服には全然詳しくないけど……あくまでここはファンタジーの世界だし。


 俺のゲームの知識から、映えそうな華やかな装備を作ればいいだろう。


 ……この三人なら、何を着ても似合うだろうしな。あんまり攻めた衣装だと怒るかもだけど、まぁ多少なら……



「……楽しみだね、ミツキのコスプレ姿」


「っ!?」


「自分でデザインするんだもんね、露出が多めのでも───」


「さ、さっさと行こうぜ!」



 ば、バレてやがるぜっ……!

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