ごめん、マジでごめん!
「いやぁぁぁぁぁっ!」
「ちょっ、くっつき過ぎだ、ミツキ!」
「ムリムリムリムリ無理無理ッ!!」
絶叫を上げながら俺を後ろから力いっぱい抱きしめるミツキと、襲い掛かる
ちょっ、マジでパリィ失敗するから離れて!
というか、おっ……胸をそんなに押し付けるな! 気が散るっ!
「うぇぇぇぇぇぇぇぇぇんっ! 助けて
「っ~~~~! 一旦撤退ぃっ!」
虫が苦手なミツキには、人間と同じぐらいの大きさの昆虫系モンスターは無理だったか……。
ちょっと意地悪が過ぎたな。
一旦【リトリム】に戻って作戦会議をしようか……。
俺は一旦モンスターの討伐を諦め、ミツキを抱えて街まで戻ることにした。
♢♢♢♢
「センコウの意地悪! 先に教えてくれたっていいじゃん!」
「ご、ごめんて。そんなになるとは思ってなかったんだよ……」
「謝罪に気持ちが籠ってない!」
【リトリム】の街中にあるカフェにて、俺とミツキは作戦会議をすることにした。
というか、ミツキがひたすら荒ぶっていた。
いや、まぁ俺が事前情報なしで連れて行ったのが悪いし、謝るしかないな。
ミツキが『虫が苦手』というのは昔から知っていたけど、これほど泣き叫ぶほどじゃなかったと思うんだけどなぁ。
全身装備を作るのに硬くて軽い昆虫系の素材は必須だし、【リトリム】から次の街へ行くのに、昆虫系モンスターが住まう森、【迷いの深緑】を抜ける必要がある。
……ミツキにはどうしてもあの森を突破してもらわなければいけないんだよね。と言いたいんだけど……
「だってぇ……ひぐっ、うぅぅぅぅ……」
周囲の視線が俺に突き刺さる。
美少女が泣きながらカフェに入ってきた時点で周囲の……特に男性プレイヤーが注目していたけど、『意地悪!』と声を上げる少女と、それに平謝りする男。
端から見れば、可愛い少女に意地悪してガチ泣きさせたクソ野郎みたいに……というか実際そうなんだけどさ……。
「いや、本当にごめん。この埋め合わせは必ずするから———」
「チョコレートパフェ」
「———え?」
「最近できた
目尻に涙を溜めながらも、精いっぱい俺を睨みつけるミツキは……彼女には悪いけどとても可愛い。涙とか赤く染まった頬とか、SWOの再現性はとてつもなく高いようだ。
「……分かった、週末一緒に行こうぜ? 好きなだけ奢るよ」
「ん……それで許したげる……」
袖で目を擦りながらか細い声でそう言うミツキ。
とりあえず何とか許してくれそうで、俺もホッと胸を撫で下ろす。
周囲からは舌打ちと一緒に、『ケッ……リア充がよ……』とか『シレッとデートの約束してんじゃねぇよ』とか聞こえてくるけど、そんなもん知ったことか。
ミツキの機嫌を直すことが最優先に決まってるだろ。
……まぁ、他のプレイヤーも、見てるだけで変に突っかかってこないだけマシか。割って入られても拗れるだけだしね。
「センコウ……あそこって行かないとダメなの……?」
「ぅ、うーん……次の街に行くには【迷いの深緑】を通ってエリアボスを倒すしかないんだよね」
「ホントに……? ぅ~~……」
頭を抱えて唸るミツキ。
それほど虫が嫌なのだろう。
「パーティ組んで、センコウが一人で倒してもダメ……?」
「無理だなぁ、エリアボス戦には参加していないと次の街が解放されないし」
「う……じゃあ、一回攻撃入れるから……」
「ワンパン行為はNG。他のプレイヤーから嫌われるし、悪質だとBAN対象になるぞ」
「うっ、じゃあダメだね! うーん、あっ……見なければ大丈夫かもしれないから、私が目隠しして———」
「……なんかだんだん迷走してない?」
「だ、だってどうすればいいのか分からないもん!」
ミツキに目隠しして、俺が手を引いて連れてってくれってか?
……なんかそれ、変なプレイにならないか?
下手に他のプレイヤーに見られたら噂になりそう……。
「……またセーラとルリアに手伝ってもらうか……。ミツキも慣れるように努力してくれよ?」
「わ、分かった……どうすればいい……?」
「ひとまず【迷いの深緑】に入れるようになろうか。戦うとかは後回しにして、『昆虫系モンスターがいる』という状況に慣れることから目指そう」
「戦わなくていいのね? そ、それなら大丈夫……なのかな……?」
「それで行こう。一応、セーラとルリアに連絡とってみてくれ」
とりあえずミツキも納得してくれたようだ。
とはいえエリアに慣れるところからだと、全身装備を作るだけの素材を集めるのにどれだけ時間がかかることか……。
セーラとルリアが上手くミツキを乗せてくれるとありがたいけど……最悪また『イザヨイ』を動かすことになるかもなぁ。
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