イベントのお知らせ

まえがき


本編の前(一話目の前)にキャラ設定を置きました。

気になる方がいましたらご覧ください。


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「んっ? イベント開催のお知らせ?」


「ついに来たか……」



 あれから数日後、いつものようにSWOにログインした俺とミツキは、運営からのお知らせを見てそう呟いた。


 そこに書いてあったのは、『天上争奪戦の開催について』というもの。ミツキはそれを見て首を傾げているが、俺にとっては飽きるほどに見慣れたものだった。



 初期の頃こそ、実力が拮抗していたから予選から熱い戦いが繰り広げられていたけど、トップ層のインフレが激しい今となっては、予選は作業ゲーとなってしまっている。


 どれだけ連続ログインができるかの勝負なんだよね……さすがに『イザヨイ』でもソロでは予選突破ができなくなって、このイベントはしばらく予選エンジョイ・傍観勢をやってた思い出がある。


 またこの時期が来たかぁ……。



「センコウ、『天上争奪戦』って?」


「あぁ、5人一組で挑むチームイベントで……」



 イベントの期間は四日間。

 最初の二日間は予選として、期間中にのみエンカウントするイベントモンスターを討伐してそのポイントを競う。


 一日のインターバルを挟み、最終日は本戦開始。イベント限定フィールドで予選上位20チーム……100人によるバトルロイヤルが始まるのだ。


 そこで最後まで残ったチームが優勝となり、《天上》を冠する称号を得ることができる───


 そうミツキに説明してやる。



「へぇー……結構難しかったりする?」


「いや、イベントモンスターの難易度はピンキリだし、初心者でも十分参加できるようにはなってるぞ。予選だったらな」


「本戦は?」


「一言で言うなら、『魔境』だな。本戦は考えるだけ無駄だと思う」


「そ、そっか……」



 ミツキには申し訳ないけど、これは事実。

 今や『天上争奪戦』は、心を殺してキリングマシーンにならなければ予選突破は不可能だろう。


 ……エルキューラさんには迷惑かけるな。



「じゃあ、あと3人集めないとね! センコウも参加するんでしょ」


「もちろん、ミツキが言わなかったら俺から誘ってたし」


「やった! セーラとルリアも誘ってみようかな~」



 ウキウキとした様子でイベントの作戦を考え始めるミツキ。俺も最初はそうだったなぁ……と懐かしい気持ちになれたのだった。



 そんな俺とミツキは今、冒険者ギルドへと向かっていた。


 冒険者ギルドとは、様々なクエストを受けられたり、素材を売ったりなど、プレイヤーがゲームを進める上で必要なサポートを一括で対応してくれる施設である。



 俺がギルドに向かっているのは、何もクエストを受けるのではない。『鍛冶』に必要な施設を借りるのだ。


 ギルドには、鍛冶や調薬など、生産職がアイテムなどを生産するのに必要な施設も用意されている。


 上位クランは自分達の拠点を構えて、そこで済ませてしまうのだが、初心者は自分で用意できるはずもない。そういった初心者に向けた救済処置である。



 今回『天上争奪戦』への参加を見据えて、ついにミツキの全身装備を作ることにしたのだ。


 イザヨイからセンコウへと送った様々な素材をベースに、ギルドの施設を使って作成すれば、なかなかの装備が作れるはずだ。


 さすがにそれだけでは素材の量が足りないと思うから、まずは武器を強化して素材集めに行くつもりなのだ。


 行き先は……ちょっと意地悪だけどミツキには内緒にしておこう。

 どんな反応をするか楽しみだ。



 それから歩くこと数分。

 冒険者ギルドへとやってきた俺とミツキは、受付のNPCと話をして、隣接の鍛冶場へと案内された。


「わっ、暑っ」


「そりゃあ火を焚いてるからなぁ」



 鍛冶場に入った途端、ブワッと強い熱気に包まれる。ドワーフはともかくミツキエルフにはキツいようで、ミツキは服の胸元を引っ張ってパタパタと風を送り込んでいる。


 ……視線が吸い寄せられそうだから止めてほしい。



 中は人が少なく、気兼ねなく設備を使えそうでラッキーだ。



「『空の器』を貸してくれ、まずそれを強化したい」


「はーい」



 ミツキがインベントリから取り出した『空の器』を受け取り、俺は俺でインベントリから素材を見繕う。


 【初級鍛冶】で扱えるのは、ベースとなる武器のコストのせいぜい50%……コスト500の『空の器』ならコストの合計が250程度になるように素材を選んで鍛冶をする必要がある。


『ジェネラル・オーガ』の素材を中心に、素材を決定して……



「よし、じゃあやりますか!」



 【初級鍛冶】発動!

 『空の器』を火に入れ、熱されたら素材と共に槌で叩く。


 ゲームの中だからかそう時間はかからず剣と素材が一体となっていき、形が変わっていく。



「見てて楽しいか?」


「うん、なんか、テレビで見たやつだ~……って」


「まぁ確かに、鍛冶を見ることなんて無いだろうしな」



 それから数分後、出来上がった剣は、『空の器』より一回りシャープになった直剣だった。



「わっ、結構軽いんだね」


「一応ミツキに合わせて作ってみたんだ。軽いけど耐久値はむしろ上がってるから安心しろよ?」



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Name:からの器・剣→星空の器・剣

Cost:500→750


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 今の俺ができる最大限の強化だ。

 『イザヨイ』で慣れてる俺からしたらまだまだ物足りないけど、序盤では十分すぎる強さだろう。



「ついでに【初級錬成】で属性強化もしておこう。次は火属性が必要になって来るしな」


「ありがとうね♪︎」


「いいよ、次に行くエリアではミツキに活躍してもらわないとだしな。俺のSTRだとあんまりダメージ通らないだろうし」


「へー……どんな相手なの?」


「場所は【迷いの深緑】、そこにいる奴らは……まぁ、ミツキが嫌いな相手だよ」


「えっ」

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