……なんかシレっとハーレムできてない?

Supremacyスプレマシー Unitユニット: “黄金こんじきの王冠”——メアディス との戦闘が終了!』


『プレイヤー名: セーラ、ミツキ、ルリア、センコウ が称号 《至高たる金色の観測者》 を獲得しました』



メアディスがその場を去り、バトル終了のアナウンスが流れる。

それを気いた俺は、ふぅ……っと大きく息を吐いてその場に座り込んだ。


たった10分……俺が戦ったのはもっと少ないけど、これほど疲れるとはね。『イザヨイ』で戦ったらもっと簡単に行けたんだけどな……。



さて、今のアナウンスはミツキ達にも届いているから、しばらく待ってればここに来るだろう。その間にちょっと確認しておくか。


ステータスウインドウを開き、称号欄を確認する。



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称号 《至高たる金色の観測者》

『“黄金こんじきの王冠”——メアディス』との戦闘において、10分間生き残った者に与えられる称号。彼の者が歩む道は黄金に輝き、見る者全てがひれ伏すだろう。


————————————————————


この称号自体に、何か特別な効果があるわけではない。ただ、持っているだけでNPCには一目置かれる存在となり、将来的に『Supremacyスプレマシー Unitユニット』由来のスキルを習得することができる場合もあるのだ。


まぁ、称号自体はもっているプレイヤーは多くても、スキル習得までこぎつけたのはかなり少ないんだけどね。


一応、『イザヨイ』はスキルを幾つか・・・持っている。

取り回しが悪くてクールタイムも長いから、あんまり使わないんだけどね。



そんな風にステータスを確認していると、遠くから聞こえてくる足音。

ミツキ達が戻ってきたかな?



「センコウっ!!」


「おぅミツキ、よく生きてた———」


「ありがとぉ~~~~っ!!」


「んぐッフ!?」


「ホント助かったよ! お兄ちゃんありがとう!」


「ぐぇっ!?」



走ってくる勢いのまま飛び込んできたミツキが激突し、座っていた俺は仰向けに押し倒された。その上からさらにルリアが飛び込んできて、二人が俺に乗っかっている状態となった。


女性に言うのは失礼だけど……重っ……!



「私、本当に怖かったんだからっ」


「耐久出来るなんて思ってなかったよ!」


「お前ら……分かったから一旦退いて……」



胸が圧迫されて喋りにくいうえ、顔が近いんだよお前ら……しかも色々当たってるって!


しばらくしてミツキもルリアも満足したのか、ようやく俺は解放されて深く息を吸うことができた。ちょっと窒息状態になりかけてたな……。



「でもセンコウ、どうやってここまで来たの?」


「『緊急転移ポータル』を使って……って、ミツキはそのつもりで救援出したんじゃないのか?」


「え、何それ」


「えっ」


「えっ」



どうやらミツキは、『緊急転移ポータル』の効果を知らなかったらしい。俺に救援を送ったのはただ助けてほしい一心だっただけで、間に合うとは思っていなかったようだ。


恥ずかしそうに頬を赤らめて俯くミツキを、セーラとルリアはほほえましそうに眺めていた。



「いやでも、よくメアディス相手にあそこまで戦えたね? 飛び入り参加で耐久成功とかやるじゃん」


「まぁ、メアディスは『Supremacyスプレマシー Unitユニット』の中でも格段に耐久しやすいからな」



メアディスは『自然を傷つけない』という特性を持っている故、樹々に隠れたりして時間を稼げばそれだけでかなり成功確率が上がるのだ。


それに、角にさえ触れなければ近接戦闘があまり得意ではないメアディスだからこそ、俺は立ち向かって時間を稼ぐことを選んだのだ。



「これが『シュライク』だとか『カルム』だったら、俺も10分どころか10秒も持つか怪しいところだったけどな」


「へー、センコウって詳しいのね。そのアバターもサブキャラだっけ」


「ミツキに聞いたのか? まぁ、ミツキをサポートするためにな……メインアバターは絶対に見せないぞ?」


「……それを今から言おうと思ってたのになぁ」


「まぁいいじゃん。千紘ちひろお兄ちゃんが歩いてる姿って、なんだか新鮮で笑顔になるよね♪」



俺のメインアバターを見ることが叶いそうもなく、ちょっとむくれるセーラとは対照的に、ルリアはずっと嬉しそうな表情だ。



「つーかルリア、前から気になってたんだけど、なんで俺のことを『お兄ちゃん』って呼んでるんだよ」


「えー……だって千紘ちひろって、『お兄ちゃん』って感じじゃない。だから私のお兄ちゃんなんだよ」


「すまん、分からん」


「たぶんルリア自身もあんまり考えてないと思うよ」



そんな風に駄弁りながら過ごしていると、『緊急転移ポータル』の効果の時間制限が近づいてきた。



「ミツキ達は『ジェネラル・オーガ』を倒しに来たんだろ? それは何とかなったのか?」


「……あっ!」



セーラは慌ててステータスウインドウを確認する。

が……



「あーっ! 倒したことになってない!」


「メアディスが倒しちゃったからねぇ……」


「それはドンマイ……なんだったら、おれも協力しようか?」


「本当!? ありがとうセンコウ!」


「エリアボスは倒してから一時間でリポップするから、まだまだ時間はあるな。俺が『緊急転移ポータル』の効果で元の場所に戻された後、この辺で待っててくれればまた合流しに来るよ」


「オッケー! じゃ、適当にモンスター倒しながら待ってるね!」



ミツキ達と打ち合わせを終えたところで、『緊急転移ポータル』の時間制限が来たのか俺の姿がつま先から徐々に消えていく。


道中は一人になるけど、まぁ第2と第3エリアの間だから問題ないだろう。












それから数十分。

ただでさえミツキ、セーラ、ルリアの3人でも十分に勝てるぐらいだったのだ。そこに俺が入ったら、余裕も余裕。


俺とルリアでヘイトをパスし合いつつ、ミツキとセーラをメイン火力としてあっという間に『ジェネラル・オーガ』を撃破したのだった。

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