第17話.実のところ。
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アラームの音がうるさくなる。
葵はイヤホンをしていると言うのにしっかり聞こえる。
「ね〜さんアラーム」
桜が寝起きの掠れた声でそういう。
「ん〜〜〜」
染鞠はそう唸ると、アラームを止め体を大きく伸ばす。
「ねーさん何時だと思ってるの〜考えてよ〜」
そう桜がいう。
「料理人の朝は早いの!」
そう染鞠は言うと、寝室をでる。
かれこれ、葵たちが一緒の部屋で生活して三日。
これまで寝室別々だったのが一緒になり、生活リズムが全員バラバラな事を改めて思い知らされる。
葵は夜行性で夜中にスマホやPCをあたっているのに対し、
染鞠は早めに寝る。
それは良いのだが、染鞠が異次元級に早起きなのだ。
現在時刻午前4時。
これで遅いと言うのに驚かされる。
「どうする?二度寝する?」
そう桜は葵に聞く。
少し待っても返事が返ってこない。
「葵?」
そう言い桜は葵の寝ている方を見る。
そこにはイヤホンを付け直し、布団にくるまって寝ている葵がいた。
「もう寝てるし、」
そう言い桜は二度寝する。
それから3〜4時間くらい寝て、今度は桜が起きる。
「葵ー、起きろー今日は、志桜里さんのところ行く日だよー」
そう、桜は言いながら葵の体を右に左に揺らす。
葵は目を覚まし、大きなあくびをする。
「眠い?」
そう桜は聞く。
葵はまだしっかり空いていない目を擦り、頷く。
「今日ってなんで、志桜里さんのところ行くんだけ?」
そう葵は聞く。
「それが、わからないのよね」
「えぇ、わかった」
そう言うと、葵は立ち上がり、寝室をでる。
リビングには、染鞠が作ったであろう、朝ごはんのサンドイッチがあった。
ラップがしてあり、その上から付箋で、これを食べて元気だそう!。
そう書かれている。
葵は桜に
「朝ごはんってもうたべました?」
そう聞いた。
「サンドイッチでしょ?食べた食べた。」
そう桜は言うと、パジャマを脱ぎ、服を着替え始めた。
葵は寝室の戸を閉め、サンドイッチにしてあるラップをとり、口にする。
「美味しい」
葵と桜は、志桜里のところへ向かう
「おはよう、お二人さん。」
そう、志桜里は言う。
「今日は少々相談をしたくてね、」
そう志桜里さんは言うと、換気扇の電源をつけ、
タバコに火をつける。
「葵くんは今、作業部屋がないよね」
「えぇ。前までのは、、、」
そう葵はいい、俯く。
「そこでだ、君の研究室を用意しようと言う話になってね。いかんせん家の研究者は入れ替わりが激しい、設立メンバーで残っているのは私くらいだ。」
「そうなんですね」
そう桜が返す。
志桜里は桜の方を向き頷く。
「でも、いいんですか?」
そう葵は聞く。
「あぁ、これまで通り、あの量子コンピューターや、資金は惜しみなく使っていい。
君ほどのエンジニアをこのままってのは少なくとも私の尺に触れる」
志桜里はタバコの火を消し
「処方してもらった薬のおかげか、元気です。前ほどではないですけど、」
そう葵はいう。
それを聞いた志桜里は
「ならよかった、それじゃぁ、着いてこい。」
そう言い、葵を案内する。
着いた先にはホコリの被った機材が沢山置いてある部屋。
「ここが?」
そう桜が聞く。
「あぁ、昔ここで世界の解析をしてくれてた人がいたんだが、あまりの重労働でバックれしやがって、クソが」
最後の方声が小さくて聞こえなかった葵は首を傾げる。
「まぁ、少し古いが基本的な機材はある。好き勝手使ってくれ」
そう言うと志桜里は自分の研究室に戻って行った。
葵はPCの電源を入れ、QC、量子コンピューターに接続する。
「葵、ここで研究するの?」
そう桜は聞く。
「うん、イロの記憶の断片が残ってるらしいからイロを復活させたいし、何より、今戦えるのが桜一人なのは悲しいじゃん」
そう葵言い、にっこり笑う。
桜は、少しは葵元気になったのかな?そう思い、嬉しくなった。
「それじゃぁ、私はキツイトレーニングがあるので」
そう桜はいい、部屋をさる。
葵はイヤホンをつけ、机に頭を乗せる。
「疲れたな、」
そう言い、葵は少し寝る。
「居眠りとは言い込みぶんだ」
そう聞こえ、葵は目を覚ます。
声の主は志桜里。
志桜里は少し間を置いて、
「葵、飯行かないか?」
そう志桜里さんが誘ってきた。
葵は少し悩んだ後、
「いいですよ」
そういった。
食堂では無く、志桜里の研究室でご飯を食べることになった。
食堂で買ってきた弁当を二人分すでに用意していたようだ。
しっかり、葵用にフォークやスプーンも用意している徹底ぶり。
「でも、珍しい気がする。志桜里さんが私をご飯に誘うなんて」
そう葵は言う。
「あぁ、少々聞きたいことがあってな。」
「聞きたいこと?」
そう葵は言う。
「お前、無理してるだろ?」
そう、志桜里は単刀直入に聞く。
「無理って?」
葵はそう聞き返す。
「いや、お前実際は今にも泣きたくて、ゲロ吐きそうなのを堪えて、元気になった風を装ってる気がしてな。実際薬を飲んだらそうかもしれない。だが私が処方箋を見る限り、そこまで元気になるはずが無いってな。」
葵はそれを聞いた瞬間。顔が暗くなる。
「私は、人に深く踏み入る気はない。だが、私は葵をほっておくって事はしたくない。家族にそう言う面を見せたくないなら、私に相談してほしい。少なくとも、お前みたいな子供よか、前世経験豊富だからな。」
そう志桜里が言う。
「考えたんです。もう心配させたくないなって、無理して周りが笑顔振りまいているのがキツくて、前、焼肉行ったんです。それで私のために無理してるな、そう思って。でも嘘つくのもキツくて、自分を押し潰してる気がして、」
そう、葵はいう。
葵は泣いていた。
そんな葵に志桜里は静かに、背中を撫でていた。
〜〜〜続く〜〜〜
#girl’s program 菓子月 李由香 @Yomumo
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