第16話.焼肉は時に人の心を洗い流す。
葵は病室で、慣れない左手を使い、ご飯を食べている。
あれから三日が経とうとしている。
イロがいない、それは葵にとって今だに信じられていない。
まだ、生きていて、驚かせようとしているのではないか、そう思うくらいだ。
葵は目をつぶり、ため息を一つ。
「あはよう、葵」
そういい、桜が入ってきた。
「熱は下がった?」
葵はそう桜に聴く。
「完全に平熱、」
「あの、速度ってオーバークロックだったんだ」
そう、葵が言う。
「私も、火事場のバカ力ってやつかな?自分自身でびっくりしたよ。」
そう桜はいう。
「右腕、どうかな、まだ痛むの?」
桜は葵の腕を見ながら言う。
「うん、痛い、それにギアの部品が体の中に残ってるらしくて、また手術をするんだって」
葵はそう言うと顔を俯き気味になる
葵はしずかに、暗い声色で、泣きそうな声で
「私、思うんだ。全部、これまでは、夢だとか、ゲームだとか、そう言う感じのものだったらよかったのにって、イロは私の隣で私の持っているCDの曲を聴きながら、本を読んでてさ、おじーちゃんは私の相談聞いてくれて、お父さんとお母さんはバグに殺されてなくて、私は木乃葉に勉強教えながら、生活してるのかな、桜の下で、AI作る仕事とかでお金稼いだりしてさ、」
そう、葵は言うと、ご飯を食べるのに使っていた、フォークを首に刺そうとする。
それを見た桜はフォークを急いで取り上げ
「ねぇ葵、焼肉行かない?」
そう葵に聞く。
葵は外にいる。
久しぶりの外。
太陽が眩しい。
「葵ちゃーん」
そう言い、手を葵に向けて振るのは、染鞠だ。
染鞠の後ろには車がある。
葵はトボトボと染鞠の方に行く。
「おはよう」
そう、ニコニコ笑顔を向ける染鞠。
「おはよう、です」
そう、元気のなく呟く葵。
屋内だと気づかなかったが、太陽の強い光に照らされた葵の顔は目の下にクマをびっしりつけている。
「寝れてない?」
そう、染鞠は優しい声で聞く。
「まぁ、はい」
そう葵が言うと、
すでに車の中に乗っていた桜が
「葵ー元気ないんじゃない?」
そう葵に言う。
「とりあえず乗って、ここから焼肉店まで結構距離あるから」
「まぁ、山奥ですからね、ここ」
そう葵は言うと車に乗る。
車の揺れを感じながら、葵はぼーと風景を見ている。
木、木、木
「森だな」
そう葵はつぶやいた。
肉の焼ける良い匂いが、腹を空かせ、食欲を掻き立てる。
ダクトの煙だけでご飯3杯いける。
「ちなみに、みんなはどれだけ食べられる?」
そう、染鞠はみんなに聞く。
「私は結構入るね!」
桜は元気に応える。
葵は、
「あんまり、良いかな油きついし」
そう年寄りみたいなことを言う。
店内は盛況で、家族連れもちらほら。
一番奥の窓側の席に案内された、葵達は席に座る。
早速、桜は注文用のタッチパネルで、食べ放題を選択。
全てのメニューを注文できる一番大きなグレードを、
「ねーさんまずなに頼む?」
そう、桜は染鞠に聞く。
「なんでも、好きに頼んじゃって!」
そう染鞠は言い、それを聞いた桜は、
タンにカルビにホルモンに鶏ももに、人数分の米と、自分用のわかめスープを頼んだ。
「最近さー食堂に面白い注文する人がいてね、」
そう染鞠は話を始める。
「味噌汁、1Lできるだけ塩辛いのって」
「え〜なにそれ?」
そう桜は疑いながら聞く。
「本当なのよ?いきなり、カウンターにお金を叩きつけて『味噌汁、1L』ってさ」
「え〜誰なのさそれ」
「志桜里さん」
そう染鞠が言うと、桜は驚いて目を丸くする。
少したわいもない話をしていると、米と肉が来た。
早速肉を焼き始める。
ジュ、という良い音を立てて、肉は焼けてくる。
煙がダクトに吸われ、良い匂いがしたから上へと動き始める。
「お腹減ったー」
そう、桜が言い、
少し生焼けの肉をタレにダバダバつけて口に運ぶ。
「うーんやっぱこれよねー美味しい!!」
そう桜はいい、米を食べる。
「お腹減ってたの?」
そう染鞠は桜に聞く。
「めっちゃ、昨日の夜からなにも食べてない!」
気合いのの入りようを宣言し、どんどん肉を食べる。
「ほら、葵も」
そう、染鞠が言い、肉を一枚、葵の皿の上におく。
タンだ。
葵はレモンダレに肉をつけ、口の中に運ぶ。
口いっぱいに、レモンの風味と、タンの肉としての旨さが広がる。
あまりのおいしさに。
「美味しい」
そう葵は呟く。
その顔は少し笑顔で、前までの元気な葵の顔だ。
それを聞いた染鞠はニヤリと笑い
「ホイホイどんどん食べて!」
そう染鞠は言うと、焼いていた肉を全て皿に置く。
「ちょっと、ねーさん私が育ててたのまで!」
そう桜は言うとほっぺたを膨らませ、
そっと葵の皿から数枚肉を取った。
気づくと葵は結構食べていた。
もう、ラストオーダーの時間だ。
「どうする?デザート」
そう桜がいう。
「私は杏仁豆腐!」
そう染鞠は言い、タッチパネルでカートに入れる。
「私は、チョコケーキにしようかな」
そう桜は言う。
「葵はどうする?」
桜がそう聞き、葵は首をかしげ悩む。
いちごの乗ったショートケーキや、りんごタルト、ソフトクリームにミルクレープ。
悩む物だらけだ。
予想よりも食べてしまった葵は悩んだ末にミルクレープを選択した。
「ミルクレープにしたんだ、良いじゃーん」
そう葵の方を向いた桜はそういった。
少し待つとスイーツが到着。
おいしそうだ。
葵はフォークをミルクレープに刺し、小さく切った。
それを口に運ぶ。
肉で塩っぱくなった口に、甘さが染みる。
「美味しいね、葵」
そう桜がいう。
葵は静かに頷き、続きを口に運ぶ。
会計を済ませ、車に戻る。
「どうだった、焼肉は?」
そう染鞠が葵に聞く。
葵は
「美味しかった」
そういった。
葵は自分の部屋に戻る。
とても散らかっている。
生臭く、鉄臭さが染みたベットに座る。
そこで無を眺めていると、染鞠が来る
「こんなところにずっと居たら気分が病んじゃうよ?着いて来て」
そう、染鞠は言い、葵は染鞠について行く。
結構歩いて着いたのは、染鞠の住んでいる寮の部屋に着いた。
ドアを開け中に入るとそこには桜が、
「ここで、前みたいに一緒に暮らそう」
そう染鞠が言う。
葵は頷き、部屋の中へ入っていた。
暖かな部屋へ
〜〜〜続く〜〜〜
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