第12話.一転
最近見た夢。
自分は一つの物の前に立っている。
宙に浮くそれは、人にも見える。
もしこれが人なら、やけに白い肌、紫色の唇、やせ細った肋骨浮き出た体、死体としか思えない。
自分はそんな物の前に居た。
周りはうす暗く、変なよどんだ空気が肌をくすぐる。
居心地の良い場所とは言えない、どちらかと言えば逃げ出す対象。
そんな居心地をどぶ川に投げ捨てた空間。
『少し探索しよう、もしかしたら出口か何かあるかもだし。』
そう考え、足を動かし周りを歩き回る。
変な臭いが、この空間を詰めている。
臭みをえぐ味で囲って、そしてスパイスを少々かけたみたいな臭い。
埃っぽい床を進んでいくと、目の前に人影が見える。
その陰に近づくと、大きく堅いの良い真っ黒の人影と言う事が分かってきた。
軽めの恐怖心が襲ってくる。
大体、車二つ分くらいの距離まで近づいた時
その人影は、大きな金切り声を上げ、こちらに近づいてくる。
“学校“は基本地下施設だからか、季節感、と言うものがおかしくなる。
天気はずーと晴れ、と言っても空はコンクリで、人口の太陽がポツンとあるだけ。
暑くもなく寒くもない。
多分ここはあんまり、体によい作りではない気がする。
葵は体を大きく伸ばし、あくびを一つ。
病院から退院して早一週間。
葵の姿は、電信堂にあった。
電信堂の店主と、何か話している。
「最近、ギアの開発で難航してて」
そう、葵は店主に話しかける。
「というと?」
店主は、カウンターにもたれ掛かり、葵に返事を返す。
「と言うのも、うまく起動しなくて、」
「どうしてさ、」
「データが上手く、ホストに転送されなくて、」
「じょーちゃんみてえな天才でも、悩むんだなぁ」
「神ではないですし」
「おまぇ、それはムカつく返だぞ?」
「そうですか?」
「あぁ」
「最近、頭を使おうとすると、変な妄想?が浮かんで」
「はぁ、上手くわかんねぇ事やなぁ。どんな感じのだ?」
そう、店主は聞き返す。
「上手く言葉にできないのですが、おどおどしいと言うか、黒いというか、なんと言えば」
「すまない。ゴリゴリの理系の人間に、情景描写を求めた私がバカだった」
店主はそういうと、目頭を軽く揉む。
「前のギアは上手く転送できてんだろ?」
「えぇ、もちろんです」
「なら、データー転送の部位だけ、前のギアのを流用すりゃぁ、ええんじゃねぇか?」
「あ!それ、いい考えですね」
そう言うと、葵は店で必要な部品を買い込み、店主に向かって。
「ありがと!いい考えです」
そう言い残し店をでた。
部屋に戻った葵は、旧型からデータ転送用の基盤と、小型アンテナを取り出す。
基盤とアンテナをいい感じに新型に繋ぎ、新型の動作テストをする。
作業デスク横のPCモニターには、転送スピードを調べるソフトが立ち上がっている。
ギアについている、動作テストモードに切り替えるボタンを押し、転送を開始させる。
「やった!」
そう葵は言う。
成功だ。
葵はこの、適当な配線を整理し、何とか小さなギアの内部に埋め込む。
完成だ。
あとは、実戦での使用許可を取り付けるだけだ。
葵は小夏のいる指令室へ向かおうと腰を上げた時だった。
「汚染区域発生、第一種警戒態勢、戦闘要員は直ちに出動してください」
招集が掛かった。
葵は待機室に向かう。
待機室には、イロ、桜、そして小夏がいた。
「葵、お前は待機だ」
そう小夏は言った。
理由は理解できる。
信頼性が低い新型を使わせるわけにはいかないのだろう。
「代わりに、サポートしてやれ、管制システムを一時的にお前の部屋から、アクセスできるようにした」
そう小夏は言うと、葵の肩を軽くたたき、部屋を出ていく。
「葵、たのんだよ?」
そう桜は葵に言う。
「わかった」
桜、イロはヘリに乗り込み、汚染区域へ行く。
「あ~~聞こえる?」
通信機越しに葵の声がする。
「聞こえるよ」
そう桜は返す。
「あなたって、後方支援ですよね」
そうイロはボソッと言った。
そうこうしていると、汚染区域に着く。
だが、バグは見えない。
「あれ?バグは?」
そう、桜が言う。
「こちらのレーダーには映っています」
そう管制官が言う。
「でもいないよ?」
イロはヘリから軽く身を乗り出し、あたりを見回す。
だが何もいない。
「レーダーには映っているんですよね?」
そうイロが聞く。
「えぇ確かに」
その時だった。
轟音を上げ、地面が大きく盛り上がり、土砂が飛びあがる。
イロの目にバグが映った。
巨大で魚のような見た目。
「まずい!!!」
そうイロは言うと、ヘリのパイロットと、桜を掴み、ヘリを飛び降りる。
のこりギリギリのところで避ける。
ヘリは色とりどりの鳥と共に、バグの口の中へ。
桜、イロはギアを起動し、イロはパイロットを守りながら着地した。
「なんですかあれ!」
そう、イロが叫ぶ。
「地中にバグが潜るとは」
管制官が言う。
「イロ君、取り合えず、今のうちバグに発信機を、レーダーより正確に位置がわかる」
そう葵がイロに言う。
イロはポケットから、ボタンサイズの発信機を投げ、バグに付ける。
「つけたよ!」
そうイロが言う。
「待って、HUDに簡略化した情報表示させるから」
そう、葵は言うと、キーボードを叩く。
その間にバグは地下に戻ってゆく。
「よし!」
そういう葵の声と共に、赤いマーカーが動き回るマップが桜、イロの視界に現れる。
「変な気分」
そう桜は呟く。
マーカーは動き回り、マップ外へ。
桜達はそれを追いかける。
「このバグ、なんで地下に潜るんでしょうか?」
そうイロがつぶやく。
「あんま、生体とか気にしない方が」
そう桜が言う。
少し歩き、木々が生い茂る森に着く。
バーン
轟音と共にバグが目の前に出てくる。
素早く、正確に、イロはバグの目に当たる部分にナイフを投げる。
バグが鳴き声を上げる。
そのすきに、桜がバグを真っ二つに切る。
バグはそのまま倒れる。
「あっけないですね」
そうイロが言い。
「ですね、」
そう桜が返す
「だって、わざとだもん」
そう後ろから声がする。
桜達が振り返る。
そこには一人の少女がいた。
「雫」
イロが言う。
「お久しぶりだね、メイドの人、プランカルキュールは?
そう雫はイロに聞く。
「残念ながら彼女は今いません」
「ざんねんだなぁ、」
そう言うと雫は腕を前に出す。
すると地中からバグが次々と出てくる。
バグはゆっくりと桜たちに近づく。
イロは大斧を振り回しバグを倒してゆく。
一体一体は弱いのだが、いかんせん量が多い。
少しずつ着実に、バグはこちらに近づいてくる
「一気に周りを消し炭にできるもの、無いの?」
「うなものあったら、苦労もクソもしません」
そう、イロが言い、ナイフを投げる。
ナイフはバグの脳天を貫き2体減る。
そして、三体新たに出現される。
「葵、なんかない?」
桜は、”学校”に居る葵に聞く。
「う~ん。多分ただバグを殲滅するだけじゃぁダメかと。元の雫を殺すか、バグの出現理由を潰すしか」
そう、葵は言う。
桜は刀を地面に叩きつけ、空高く飛び上がる。
体をひねり、一直線に雫の元へ飛びかかる。
だが、その瞬間、この場に居たすべてのバグが、桜の元へ飛んできて、行く手を妨げる。
「クソ」
桜はバグの半数を切り刻み、イロの元へ退避。
「どうすんの?これ、」
雫の元へは近づけない。
その上、こっちは消耗しきっている。
「小夏さん、」
「なんだ?葵」
「私、出てもいいですか?」
「ダメだ」
「でも、このままでも、勝ち目はないですよ?」
「だが」
「安心できるか分かりませんが、完成してます」
「だが」
そう小夏が言ったとき、小夏の肩を志桜里が叩き、
「まぁ、いいんじゃない?」
「だがなぁ」
「どちらにしろ、負けますよ?」
「はぁ、どうなってもしらんぞ?。葵、出撃を許可する」
そう小夏は、少し無理やり言う。
葵は、PC98を操作し、QCを起動。
葵はギアのスイッチを起動する。
「う、」
気分はあんまよろしくない。
漠然と、ただただ頭に変なイメージが流れ込む。
葵はそれを押しのける。
腕を前に突き出し、三つの球の中で一番大きな真ん中の球を撫でる。
すると、光の線が出てきて、体を包む。
光が消えると共に、ギアを体に纏った、あおいが出てくる。
イロは、どんどん襲ってくるバグを、ギリギリで倒す。
「クソが、」
流石に口が悪くなる。
バグは一体全体いつまで、どこまで増えて行くのか。
そもそも、制限はあるのか?。
など考えている。
桜は、イロの背中を守る。
そんな時だった。
拳が、バグにぶつかる。
その拳は、色々な配管がついていて、メカメカしい。
その拳は、そのまま、他のバグを背中に背負ったライフルをバグに向け、引き金を引く。
大音量な轟音が響く。
そのライフルを持った拳の主、葵だ。
葵はバグを一掃、だがバグは増え続ける。
「あ、プランカルキュールいた〜」
そう、雫が言う。
雫は、葵の方を指さす。
すると、たくさんの小さなバグが葵を包み込む。
「何これ!」
葵はバグを払おうとする。
だが、バグは退かない。
「君!」
イロがナイフを持って近づく。
ナイフでバグを切ろうとした時だった。
別のバグがイロを跳ね飛ばす。
「うわ!」
イロは遠くの木にぶつかる。
その衝撃か、イロは、足が変な方向に曲がる
「痛」
周りのバグは、雫が葵に集中してるからか動いていない。
雫の意識をどうにかして、奪えれば。
そう、桜は考える
桜はイロ跳ね飛ばしたバグに、持っていた刀をぶつける。
「イロ!、データなんたら爆弾ないの!」
「え!あ、TXTファイルのなら!」
そう言うと、イロは、葵目掛けて投げる。
バン
大きな爆発音と共に紙吹雪がまう。
その隙に、桜は葵のバグを取り払う。
「ありがと、」
そう言うと、葵は雫に飛びかかる。
「君から来てるれるんですね、」
そう雫がいう。
「あいにくさま、私があなたに近づくのはあなたを倒すためです。」
そう言うと、雫の目の前で、閃光弾を爆破させる。
紙吹雪が止み、周りを見る。
動かない大量のバグ。
その中心には、雫に馬乗りになる葵の姿があった。
桜達の方を向き、
「バグ少女確保〜〜〜」
そう言うと、ギアを解除する。
桜は、イロの元へ行く。
「大丈夫?」
「えぇ、何とかです」
桜は、イロに肩を貸す。
足を引き摺りながら、桜とともに葵に近寄る。
「葵、大丈夫?」
そう桜は葵に聞く。
葵は、うつむいて、反応しない。
「君?」
イロも呼びかける。
「う、」
「ちょ、葵、大丈夫!」
葵は、嘔吐する。
「ハァハァ」
葵の息が荒く、胸を押さえている。
葵は体が震えている。
顔色が悪く見える。
「葵、」
桜は、葵の背中に手を置く。
「キャー、ごめんなさい、ごめんなさい」
葵は発狂し、何か謝り始める。
頭を押さえ、床に、まるまる。
その顔は恐怖一色。
イロはそれを見ると、目を、大きく開いた後、斜め下を見るように、顔を俯く。
「ごめんなさい、働きます、今します、だからあれは、ごめんなさい」
「葵、落ち着いて私だよ?」
桜は、葵に言う。
だが声が聞こえていない。
なにかに取り憑かれたように、ただ謝る葵。
少しして、イロが足を引き摺りながらこちらに近寄る。
「イロ?」
そう、桜が言うと
「ごめんなさい、君、私が不甲斐ないばかりに」
そう言い、葵に何かを刺す。
すると、葵は静かになった。
気絶したのだ。
「イロ、何をしたの?」
そう、桜は聞く。
イロは手に持った物を、桜に見せる。
注射器のようだ。
「抗不安薬と鎮静剤の混合物。非常時はって雄一様に渡されていた物です」
「なんで?」
「こうなった時用」
イロは目を合わせず、顔色が暗い。
声色にも元気がなく、暗い。
「説明して」
〜〜〜続く〜〜〜
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