Intermission.会話
葵と志桜里:
葵は病室で目を覚ます。
照明の光が強く、葵の鼻先を熱く照らす。
目に強めの光が飛び込んできた葵は、また目を閉ざす。
葵は体を起こし、再度目を開け周囲を見渡す。
少し、葵には大きめのベット。
その横にある小さな机の上には、小さな花瓶がありその中に『我ここにあり』と言わんばかりに、飾られた花が刺さっている。
花の原色に近い色が目に刺さる。
寝起きの目には、少々厳しい色だ。
葵は、やけに頭が重い、と言うよりグラグラする感覚に陥る。
何かあった、それしか記憶にはなく、なぜここに居るのかすら覚えていない。
おそらくココは“学校”内部の医療区画だろう、それは理解できる。
だが肝心のここに居る理由、それが虫食い見たくポツンと穴が空いている。
記憶を辿るがやはり思い出せない。
葵はベット横の机に、自分のスマホとMP3プレイヤーがある事に気づく。
葵はその中のMP3プレイヤーを手に取り、有線イヤホンを耳に挿す。
適当な曲を選択し、再生ボタンを押す。
そのまま葵はベットに寝っ転がり、机の上にあった花を見ようと、顔を動かす。
「あれ?」
葵は驚く。
花瓶の中にあったはずの花が机の下に落ちていた。
花瓶は何事もなかったかのように、水を中に貯め込み、花を待っている。
花だけが机の下で寝ている。
どういう状況か理解が追い付かない葵は、取り合えず目をパチパチさせていた。
少しして、志桜里が病室のドアを開けてこちらに来る。
手には何やら書類を持っており、志桜里はメガネをかけている。
葵が寝ているベットの前、足先に志桜里がいる。
志桜里は葵にただ一つ、疑問を投げた。
「お前、いつからギアを使っている」
そう葵にぶつける。
「え〜と、確か3月ごろかと」
そう葵はいった。
志桜里はそれを聞いて、少し困った顔をした。
「それは、おかしい」
そう志桜里は葵に言う。
そんなこと言われても、葵が初めてギアを起動したのは桜達が襲われたあの時だ。
「おかしいと、言いますと?」
「君の精密検査で、ギアを少なくとも10歳頃までには起動したことになっている。」
「はい?」
葵が10歳の頃ちょうど桜達の家に来た頃だ。
と言うことはそれよりも昔、祖父、雄一と暮らしていた頃になる。
ギアの中心的システムである、データの超圧縮と遠方高速通信の技術、そして世界との接続方式,それと、ギアのデータ保管場所を作ったのが雄一その人だった。
雄一が葵にギアを使用した?
「その顔は心当たりがあるようだな」
そう志桜里は葵に言う。
葵の図星を志桜里は確実につく。
「まぁ、一応?」
「聞かせてくれ」
葵は雄一の事を話した。
「ほう、君の祖父が、そんなに凄い人だったとは。君の才能の理由を理解した気がするよ」
そう志桜里が言う。
「あはは」
葵は苦笑いをした。
「ところで、その雄一さんがお前にギアを使うと思うか?」
「少なくとも肯定はしてると思います。」
「理由は」
「私のギアに使われる部品を作ってくれた」
「どのパーツだ?」
「今は使っていませんが、脳波を読み取る機械です」
「ほう、わかった、取り合えずお前は休め、ウチの研究所の技術部が確認してみよう」
そう言うと志桜里は何かをメモり部屋の外へ繋がるドアに手を掛け、葵の方を向いて一言
「おやすみ」
そう言った。
桜と染鞠:
厨房は大忙しだ。
次から次へと舞い込む注文を5人体制では対処仕切れない。
染鞠はそんな、”学校”の厨房の中心で騒がしくフライパンを叩く。
染鞠は今ここで料理長として働いている。
料理長の座を賭けた争いが、あったりなかったりして、染鞠はここで、しっかり給料を貰い働いていた。
昼時の社食は相当な賑わいを見せる。
人口太陽の光を浴び、ずっとモニターと睨めっこする、ここの職員の人たちの、癒し、娯楽が飯だ。
一番賑わっている時には、人が一点に集中して濁流のような感じになる。
たまに、空調の空気清浄のスピードが負け、CO2過多でサイレンがなるレベル。
ここに来た葵は、『人のエグ味を1000倍濃縮したみたいなので空間』と絶賛していた。
賑わいという波が過ぎ去った、午後3時。
桜は人の気配がなくなった静かな食堂、社食に付いた。
厨房要員の人たちは、今になってやっとご飯のようで、自分たちの分を作っている。
厨房前のオーダーカウンターに桜は足を運んだ。
カウンターの前には黄金に輝く、招き猫が憎たらしい笑みを浮かべ、こちらを見ている。
桜はイチオシ、と書かれている唐揚げ定食Aを注文。
AとBの違いはあまり無く、唐揚げに使われている衣が、1度揚げか2度揚げくらいだ。
席に着いて待っていると。
唐揚げ定食Aと、和風南蛮定食を持った染鞠が来る。
「ほいさ、お待たせ〜」
そう染鞠が言い、定食を桜の前へ置く。
「和風南蛮って何が和風なの?」
「う~ん、みりん多いとこ?、甘いとこ?わかんないは」
「よく、そんな物食べれるね」
そう、桜の問いを聞いて、染鞠は『そうかな?』と首を斜めにした。
桜が唐揚げの衣をかじっていると、染鞠がふとこんな事を口にした。
「もし、自分が食材になったらどうする?」
と、
「それって、今の自分が?それとも豚とかに転生?」
そう桜が聞く。
「今の自分が、かな〜」
「う〜ん、意外に抵抗とか無理そうじゃない?」
そう、箸を咥えた桜が言う。
「その心は?」
「自分が食材って、よっぽど強い力が前にあるじゃん?」
「うん、そうかも?」
「なら、抵抗するだけ無駄じゃない?」
そう箸を遊ばせながら桜が言った。
「すごい話してますね」
そう、社食を通りかかった、イロが言った。
「イロくんこんにちは」
そう、染鞠が言う。
イロは桜の横の席に座り話に混ざる。
手には和食定食Cを持っている。
味噌汁、漬物、コメ、焼き鮭、皆が考える、『和』を詰め込んだ定食だ。
「イロくんならどうする?」
そう、染鞠がイロに投げかける。
「私、ぱっと見、人ですが中身はただのデータですよ?可食部ないですよ、多分」
イロはそう言う。
「もしもの話だから、」
そう桜が言う
「そうですねぇ、私が食べられそうになったらですか、腕を折ってやるかと」
「なかなか物騒ね」
そう染鞠が言う。
イロは『そうかな』と言いたげに首を傾げた。
〜〜〜続く〜〜〜
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