第4話.暖かいプールに身を流し

晴れた日のことだ、極寒の日本であるが、いや極寒であるからこそ、太陽の日というものは暖かく感じる。

日が照りつけるベランダに、洗濯物を干す染鞠がこう言った

「桜、葵ちゃん、プール行こう」

「は?」

日本が極寒の地と化したのはここ最近のことではない。そのため、プールの需要は地の底にまで落ちていた。なのに、染鞠はプールに行こう!、などと言っている。そのため、葵、桜の頭の中では、大きなハテナが浮かんでいる。

少しの硬直の後、葵の脳は高速で動き出した、記憶をたどり、答えを導き出す。

「近所にできた温水プール?」

そう染鞠に聞く

「そう!あのプール、温泉らしくてね〜なんと効能が美肌!行くしかないでしょ?」

そう染鞠は水を得た魚の如くウッキウッキで話している。

その光景に葵は、子ウサギみたい、と思っていた。

「良いですね、温泉行きましょう!」

そう洗濯機の前にいたイロが言う。

「そうだね、温泉なら暖かいし。」

桜も乗り気のようだった、だが葵には一つ不安があり、乗り気ではなかった。

「葵はどう?」

そう染鞠が言う。少しの間のあと、葵はゆっくり口を開く。

「いや、水着、あるの?」

その一言で、まるで魔法にでもかけられたかのように一瞬で場が凍った。


「これとかどうかな?」

そう桜が葵に聞く。

手には、桜を思わせるピンク色のビキニが、フリフリで結構子供むき、桜は手を動かし、ビキニを葵に当てる。

「似合うと思うよ!」

着るのは桜ではなく、葵のようだ。葵はゴキブリを見るような軽蔑した目で桜を見る。

桜は気いてかいるのか気づかずかは分からないが、少しだけ、テンションが下がった。

「イロ君て、何カップ?」

そう、染鞠がイロに聞く。

「知りません!」

イロは邪気っけのない満面の笑みで答えた。


それから2日後


ウォータースライダーや流れるプール、楽しそうが詰まった施設に着いた。

水の音に耳を傾け、温水に浸かる少女、葵の姿はそこにあった。

葵のプールの楽しみ方は、泳ぐ、ではなくノンビリ、日々の疲れを癒すかのように、波に揺れるそれが好きなのだ。

そのリラックスの時間を見出す放送が流れる。

「1番プールに波が発生しま〜す」

「ファ?」

葵の居るプール、1番。

葵は後ろを振り向く。

デカい波がこちらに近づいてくる。

他の利用者を薙ぎ倒し、こちらに近づく水の壁。

葵は急いで逃げる、だが運動不足の泳ぐスピードはたかが知れている。

努力虚しく、葵は流された。

プールサイドに打ち上げられた少女、葵の姿がそこにはあった。

葵は顔をあげ周りを見る。

少し向こうにある、流れるプールで桜とイロ、染鞠はながされている。

温水といっても結構ぬるい水を体にかけ、葵は流れるプールへ向かう

流れるプールに葵は足をつける。

ぬるま湯に慣れた葵の足には少し熱いお湯、だがすぐになれ全身をつける。

流れるプールとは言え結構流れはゆっくりで、リラックスできる。

流れる必要性は不明。

身も心も温水の暖かさに浸っているとイロが葵に話しかけてきた。

「君ーゆっくりしすぎじゃない?」

「うるさいな〜」

「ここのお湯は温泉らしいですよ?」

「温泉をわざわざレジャー施設にする勇気に乾杯だね」

「なんですかそれ?」

「てか、イロ、水大丈夫なんだ」

「いや、ギアで具現化したものは本物と変わらないのですよ?」

「そうか」

「ここのお湯、効能が美肌と疲労回復、腰痛、肩こりに効くとか」

「お年寄りが好きそう」

イロと葵が話していると、桜が話かけてくる。

桜は結局、葵に勧めた桜色の水着を着ている。

水着は、まだどこか幼い桜の顔とマッチしてとても似合っていた。

「今から、私と、ねーさんでご飯食べたいって話してたんだけど、葵たちはどうする?」

そう、問いかけてきた。

ここの施設はフードコートが隣接しており、水着のまま、入ることが出来るのだ。

「食べようかな」

そう葵が言う。

「私も」

イロもそういった。

葵たちはプールから上がり、フードコートへ足を運んだ。


ラーメン、バーガー、たこ焼き、焼きそばありとあらゆる、飯が並んでいた。

とりあえず、窓際の席に腰をかける。

「じゃぁみんな!選んでおいで!!!」

そう染鞠がいう。

染鞠はみんなに二千円も渡す太っ腹プリを見せていた。

周りを見ると他の利用客も多く、子供連れのカレー率の高さに葵は少し驚いていた。

フードコートの出店を見ているとちょくちょく不思議な店がある、ビーフストロガノフ専門店などなど、葵は結局みそラーメンを選んだ。

椅子に座ると、水着が濡れている事もあり結構違和感がある、フードコートは温室のようなじめっとした暖かさがあった。

別に寒さではないので葵は気にしなかった。

少し待っていると、みんなも各々ご飯を持って席まで戻ってきた。

桜はカレーうどん、染鞠はパスタ、イロは焼きそば。

みんな麺類だ。

葵のラーメンは味噌、味噌の香りが鼻にくる。

とても良い香りだ。

麺を箸で掴む、葵は細麺が好きだ、でも今回はあえて太麺を選んだ、理由はない。

麺を啜ってみる、スープととても絡み口いっぱいに味噌の味が広がってとてもおしい。

葵は横を見ると桜がカメラををこちらに向けていた。

「なんですか?いきなり?」

そう葵が言う。

「思い出を残そうかなって」

「はぁ」

桜はシャッターを切り葵に写真を見せる。

葵は自分の写真を見るのが好きではない、気持ち悪いからだなので、少しチラ見した後写真から目を逸らした。

その行動が不満なのか、桜はほっぺたを膨らましていた。

「みにゃ」

そんな変な叫び声を出す者がいた、イロだ。

「どうしたの?イロくん」

そう染鞠が言う。

「イエ、足に何かが巻き付いた感覚があって、」

そうイロが言うと、染鞠は体をまげ、イロの足を見る。

特に何もない、綺麗な足だ。

「問題なさそうだよ?」

そう染鞠がいう、イロは首を傾げ、焼きそばの具であるにんじんを口に運んだ。

葵もイロの足を見てみる、染鞠の言った通り特に変なところはない。

その時だった

ウ〜〜〜〜

甲高いサイレン音、それとほぼ同時に館内放送が流れる。

「館内1番プールに汚染区域が発生しました、職員の指示に従い、避難してください。」

そう放送があった瞬間、周りの人は、急いで出口へ向かい始める。

あたりまえだ、死の恐怖は人をおかしくする。

逃げ惑う人に肩がぶつかる。

「葵逃げよ?」

そう桜が言う

「なんで?」

「なんでって、危ないでしょ?戦うって言ったて、ギア?ってやつはないわけだし、」

葵の顔が少し引き攣る、図星だった。

今ギアは更衣室にある、理由はシンプルで、ギアは水にめっぽう弱い。

そのため、更衣室に置いていたのだ。

更衣室へは、フードコートを出て右に少し行くと階段が見える、それを登って右手側に見えてくる扉を潜れば、女子更衣室だ。

そこまでの距離は結構あり、葵の足では時間がかかる。

「それなら、染鞠が走ってそのままギアを使うとか!」

そう、桜が言う

「それは無理かな」

葵が答える。

「ギアは、オーダーメイド、使用者のありとあらゆる情報が入っててそれを元に戦闘用の体を作るんだ」

「でもなんとかならない?」

「いや、例え起動できても、多分動けないよ」

「どうして?」

「私のギア、設計のための形式的システムプランカルキュールは起動した後全ての動きをコードで指定しないといけないの。」

そう葵が言うと桜は少し後ろに下がった。

桜はPCこそ扱う事ができるが、コード、プログラムという面には少し拒否反応を見せる。

「イロ、前に渡したやつで足止め、できそう?」

そう葵はイロにきく。

イロは少し悩んだ後首肯く。

イロは何処からか棒のようなものを取り出す。

棒には自転車のブレーキハンドルのようなものと、ON/OFFと書かれた小さなスイッチがあった。

イロはスイッチを動かす。

すると棒はカッチ、カッチという音を立てて起動を始めた。

少しして、白い光に包まれると、黒色をベースに、蛍光色の緑をあしらった、斧が出現した。

RPGの戦士が使いそうな大きな斧、斧にはスラスターのような物も付いていて、いかにもメカの大斧って感じを醸し出していた。

イロの来ているものも気づくとメイド服になっていた。

イロは何も喋らないまま、フードコートを出て、1番プールへ足を運んだ。

「よし、ちょっくら、行ってくる」

そう葵は言うと、走ってフードコートから出る。

火事場の馬鹿力だろうか、結構早い速度で葵は走る。

横を見るとイロが居た、イロはグリップを握り、スラスターの電源を入れる、轟音と共に大斧はバグにむかって突進していく。

バグは3階建ビルくらいの大きさ、そのバグの頭に斧の刃が鈍い音を立てて打つかる、だがバグは余り効いていないように見える。

イロはスカートを軽くめくり足に付いていているホルダーからナイフを取り出しバグに向かって投げる。

バグの目?のような器官にあたりバグは傷口を抑える、効いているようだ。

その中を葵は駆け抜ける。

葵は息を切らしながらも更衣室の前に着く。

中に入りロッカーへ向かう。

ロッカー室には大量のロッカーがある。

焦っているせいか、もしくは単にこう言うのが苦手なのかは分からないが中々自分の使っているロッカーが見つからない。

15番。

それを見つけ出し、中を開ける。

「あった」

基板が丸出しの腕輪、コネクトギアを見つけ出す。

葵は腕の水分を軽く拭い、腕輪をはめる。

腕輪には、ボタンがついている、ボタンを押すと、横の小さな液晶にスタンバイの文字表示される、腕を前に伸ばす。

すると手の中に銃のグリップのようなものが現れる。

「program,start」

葵がそう呟き引き金を引く。

するとギアが爆発を起こし、部品が空を舞う。

故障?と思う人もいるかも知れないが正常な動作。

部品は形を変え、分裂し大量のパーツになる。

葵の足にパーツが纏わり付くとメカめかしい足に変わる。

腰には楕円形の立方体を半分に切t多様なものが腰につく。

残ったパーツは腕につき、メカの腕、見たくなる。

最後に顔に、正確に言うと耳にヘドホンのようなものが付く。


NO.01 N2model Plan Calculus:起動


「さて、デバッグしていきますか。」

そう呟くと葵は更衣室から飛び出る。

外に出ると、イロが絶賛交戦中である。

イロはバグの目?と思われる場所をひたすら狙っていた。

葵は素早くバグの後ろへ回る

運動不足でも、ギアを纏っていると運動神経は格段に上昇する。

葵は腰についた機械から銃を取り出す。

銃には弾が入っていない。

銃を空に投げ、銃弾の入ったカートリッチを取り出し、腕を前にする。

銃はカートリッチに向かって真っ直ぐ落ち、然るべき場所に入る。

葵はもう一度銃を投げ上の方から掴む。

スライドをうまく腕を使い素早く引く。

そしてそのまま素早くグリップに手をやる。

コレを同時に両手で行った

そのまま流れるようにバグの目を狙い銃弾を発射し続ける、

弾が切れたら素早く先程の方法で銃弾を装填し撃ち続ける

ずっと狙われ続けたバグの目には大穴が空いていた。

バグはその傷口をかばいながら動き回る。

片手で傷口を押さえてもう片手を振り回す。

プールの水がジャバジャバと飛び交う

「イロ」

葵がイロを呼ぶ。

「なんですか?」

「あの腕どかせる?」

そう言い葵は目をかばっている腕を指差す。

「頑張ってみます」

イロは大ジャンプをして大斧を振りかぶってグリップを握りスラスターを点火する。

轟音を轟かせてバグの腕を切断する

「電池切れで斧はもう使えませんよ?」

そうイロが葵に注告した。

「問題ないかな」

葵は露わとなった目の傷口に丸いものを投げ込む。

少しするとバグは膨らみ始める

「え?なんですか?」

イロはそう言いながらバグから離れる

その行動のすぐにバグは風船のように爆発した。

宙に紙が舞っている。

「マジでなんなんですか?」

そうイロが言う

Decompression bombデータ展開爆弾

「なんですかそれ?」

「簡単に言うと、1億枚のA4用紙を手のひらサイズの玉っころにして傷口になげこんだ」

「えーとすなわち?」

「逃げないと紙に押しつぶされる」

そう葵が言うとイロは走ってフードコートへ行く。

「あの〜イロさん?」

少しすると桜染を抱えて戻ってきた。

プールでは今だに紙が出続けている、すでに1番プールは紙で埋まっていた。

イロは葵を急かせ更衣室へ急ぐ。

桜、染、葵の服などを持って急いで出入り口へ行こうとする、

「イロ〜落ち着け」

そう葵が言う、

「なんでですか!1億枚ですよ?」

「嫌ね?展開は止められるのよ。」

葵は少し呆れた様子で続きを言う

「PCとかでも圧縮ファイルの展開って止めれるでしょ?」

「あぁなんか納得」

イロには少し頬を赤た。

担がれた二人は、ポカンとしている。

「とりあえず服着よ?」

〜〜〜続く〜〜〜


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